【短編小説】泣きたいけど泣けなくて
恋人と別れた。
付き合ってはいたが、お互い相手の為に費やす時間も手間も減っていた。だから、「別れよう」と言われて、やはりと思う気持ちの方が強かった。別れ話だって、会うこともせず、SNSのやり取りで済ませた。ただ一言で、それまでの長い付き合いを終わらせることができるんだ。心の中では、納得がいっていなかったとしても、顔を合わせたわけではないから、それをさとられることすらない。
おかげで別れた実感が湧かないのか、少しも涙が出なかった。涙活という言葉があるように、涙を流すと気