小・中・高の英語教育の実施状況調査〜令和3年度〜
2022(令和4)年5月24日に公立の小学校・中学校・高等学校等における英語教育の実施状況についての調査結果が公表されました。
この調査は2013(平成25)年度から毎年実施されている調査です。2020(令和2)年度の調査はコロナの状況もあったため、実施されていませんでしたので2年振りの調査となりました。
2017(平成29)年3月に小学校及び中学校、2018(平成30)年3月に高等学校の新学習指導要領が告示されてから、英語教育がどのように変化したのかについて調査し、今後の国の施策を検討する時に役立てることが調査の目的となっています。
調査項目は以下の通りです。
今回は、主に英語力の計測が行われる中学校・高等学校の調査結果を中心にご紹介していきます。
1.中学生・高校生の英語力の推移と、「話す」「書く」テストの実施について
現在、中学生・高校生の卒業段階で達成したい目標は、以下のように定められています(第3期教育振興基本計画)。
この50%の目標に対しては今回の調査では達成することができませんでした。しかし、過去の調査と比較すると年々その割合は高まっていることが報告されています。
本調査では「話すこと」「書くこと」の両方のパフォーマンステストを実施している割合についても調査しています。
調査の結果、小学校・中学校におけるパフォーマンステスト実施の割合は9割を超えている一方で、高等学校では、「話すこと」「書くこと」の両方のパフォーマンス テストを行っている割合は、4割に満たないという結果となりました。
それでも一昨年度に比べて2.1ポイントの改善につながっているようです。
また、高等学校段階においては自治体によりパフォーマンステストの実施割合に顕著な違いが表れていることがわかります。
2.英語力向上と相関関係のある要因は何か?
本調査では、生徒の英語力向上のための分析として何が要因となっているかの分析結果についても公表しています。
実は、令和3年度の調査では、授業中に「発話をおおむね英語で行っている」または「発話の半分以上を英語で行っている」と回答した英語担当教師の割合は、一昨年度に比べて中学校の全体で3.5ポイント、高等学校の全体で6.4ポイント減少しています。
ただこれは、コロナ禍の影響があったと考えられます。
一方で、英語担当教師の英語力は年々向上しています。
下図からもわかるようにCEFR B2レベル(英検準1級)以上を取得している英語担当教師の割合は、中学校、高等学校ともに増加傾向にあるようです。
3.末松信介文科相の記者会見
本調査に関して末松文科相は、2022(令和4)年5月24日の記者会見で記者からの質問に対してコメント(8:08〜)を残しています。
記者からの「小学校・中学校・高校と学齢が高まるについて英語の言語活動の割合が減少傾向にあるがどう考えるか?高校で言語活動が行われていないのは大学入試があるからで、大学入試改革が頓挫したことも影響があるのではないか」という質問がありました。
これに対して、末松文科相特に高校段階において小学校・中学校に比べると言語活動の割合が減少していることを認めつつも、有識者に見解を伺ったとのことです。その結果、以下が原因なのではないかという見解が返ってきたとのことです。
・コロナ禍で授業時間数が減少し、教科書を終わらせることに重点が置かれた。
・高校段階では、語彙などの難度も高まり、英語で授業を進めることで生徒側が理解することが難しい場面もあるため、日本語での授業になるのではないか。
今後の大学入試においては、大学入試の在り方検討会議にて、「各大学の個別選抜にて4技能を測定することが望ましい」という提言がなされたことを挙げつつも、入試改革をする大学には基盤となる費用の拡充につながるような取り組みを検討していきたいとしました。
また、言語活動の好事例を認定し、情報を提供していきたいとのコメントがありました。
末松文科相は、調査結果に対して自治体によって英語の習得レベルが目標として定めている基準に達していないことや、小学校・中学校と比較して高等学校での言語活動の割合が低いことを「反省」という言葉を使いつつ、改善していきたいとコメントを残していました。
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