キャリアとしての青年海外協力隊の見方
2年は活動期間ということを認識しよう
国際協力業界の中で、恐らく最も知名度があるのが“青年海外協力隊”なのではないだろうか。※現在は事業総称を「JICA海外協力隊」という。
そして、国際協力を志す人の多くもキャリアの入口として青年海外協力隊を選択していると思う。自分も実際にその一人である。青年海外協力隊は国際協力のキャリア形成からするとメリットはたくさんある。
「門戸が他の制度に比べて広い」「語学学習がしっかりしている」「人的ネットワークが築ける」「公的事業なので保障が手厚い」「業界内において実務経験としての評価が得られる」「最前線(=現場)での活動を経験できる」などなど。
この辺の話は別の機会にして、今回は国際協力のキャリア形成を考える時に青年海外協力隊をどう見るべきかを時間を軸に考えていきたい。
青年海外協力隊は、その期間を「2年間」と広報されているので、それを頭にキャリアを考えている人も多い。しかしながら、2年というのはあくまで任国での活動期間のことということをしっかり認識した方が良い。下図の通り応募から帰国後の準備期間なども含めると「3年6カ月程度」が時間経過する。また、あくまで“程度”なので帰国後のキャリア選択によってタイミングが悪ければもう少し長くなることも、またタイミングが良ければ短くなることもある。
自分の場合は、2012年の秋募集に応募する(当時は10月募集)ために夏にTOEICを受けることから始まった。そこから翌2013年の2月に合格。6月から派遣前訓練の開始。2013年9月末に派遣され、2015年の10月に帰国した。帰国直前に派遣国からインターネットを活用して就活しており、帰国後すぐに働きだしたので、応募から協力隊終了し、次のステップまでは約3年の時間経過だった。
ただしこのケースで海外大学院となれば、さらにプラス1年(翌9月入学)はかかるだろうし、大学院の学びの期間も考えないといけない。
ある程度は逆算できる
青年海外協力隊は公式サイトから応募や派遣前のスケジュールについても情報収集できる。また、その後に留学を含めて大学院進学を考えている人は、入試のスケジュールや就学期間なども事前確認できる(※入試時期はそんなに変更されるものではない)はずだ。
なので、折角ならば自身の国際協力のキャリアゴール(何歳までにどうなっていたいのか)を決めて、そこからある程度の逆算をして青年海外協力隊の応募時期も考えた方がいい。
◆応募
春と秋の2回募集で時期は、春が2~3月、秋が8~9月だ。審査は書類(健康面と語学能力も含む)と面接の2回実施。最終的な合格がでるまで4、5カ月の時間を有する。
合格の時に派遣隊次も一緒に通達されるが、早くて5カ月先、遅ければ1年以上あとの場合もある。
◆訓練
派遣前には任国で使用する言語の学習や途上国での生活および国際協力の基礎知識を座学と実習で学ぶ。
これは国内2カ所にある訓練所(長野県駒ケ根、福島県二本松市)に70日間の合宿で基本行う。訓練所の振り分けは派遣国(≒言語)で決まる。
話は少し逸れるが、訓練所で初めて多くの同期と出会うことになる。(同じ職種のメンバーは技術補完研修で初対面したりする)青年海外協力隊には多種多様な人材が集ってくるのも魅力の一つで、訓練中にそれぞれの経験を活かした自主講座も開講されたりする。こうした人的ネットワークはとても貴重だと思う。この辺のことも別の機会に発信したいと思う。
◆任国で活動
訓練に無事に合格するといよいよ任国への派遣。ここの期間が広報でも打ち出されている通り「2年間」なのである。
※申請してJICAが認めれば、最大1年間の延長もある。
◆帰国後の進路開拓
2年間の活動を終えた後のキャリア選択は人によってさまざまであるし、そのタイムラグを短くするために活動中に次の進路を見据えて情報収集や語学試験を受けたりなど準備している隊員もいたりする。今は、多くの国でインターネットがつながるので情報も集めやすく、国によっては語学試験も受けられる。
最近は、起業する人や任国で就職する人、旅をはじめてYouTubeなどで情報発信を生業としている人などキャリアも今まで以上に多様化している。
キャリアゴールを決めて柔軟に進もう
結局のところ言いたいのは、自身のキャリアプラン(何歳までにどうなりたいか)をざっくりでいいので決めて、そこから逆算した動きをした方がいいということ。そして、そのために活用する制度や必要なステップ(進学など)についても良く調べ、早め早めに準備しておけば自分の貴重な時間を浪費せずにすむ。
しかし、自身が思い描いたキャリアは通りにいかないこともある。特に、今回の新型コロナウィルスなどの事態が起こったらなおさらである。青年海外協力隊も2020年は全員帰国し新規派遣も停止中(※2020年末に一部再開)でもある。
だが、こうした未曾有の事態には社会変化が起こる時でもある。そうした時には、今後の社会変化を見据えて自身のキャリアプランも柔軟に変更していくことも大切だと思う。その他にも人との出会いなど、何かしらの体験からキャリアの方向性は変化したりする。