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大切なことは、お楽しみの直前に(子どもに責任を持たせた話)

この記事は「ストーリーテリング」のサンプルです。ストーリーを使うとどれくらいメッセージが伝わりやすくなるのか、例として載せてみました。理屈と物語、どちらを語るのが効果的か、ぜひ読んで確かめてみてください。

 先日、アイデア出しをクライアントさんに手伝ってもらっていて、良い質問をいただきました。

「これまでの人生で、じゅくちょうがリーダーらしいことをして実績を残した経験って、何かありますか?」

思い出したのは、大道芸チーム「一亀一遊」(いっきいちゆう)のこと。15年ほど前に京都亀岡で結成し、解散するまで10年ほど活動していました。

(実はこんなこともできます)

 立ち上げの時は大人4人だけでしたが、そのうち塾の中学生・高校生も参加するようになり、最終的には10代メンバー7-8名がチームの主力となりました。そして年間30−40ヶ所ものイベントに出演するほどになりました。

 一亀一遊は結成当初から「地域の若者が地域を盛り上げる」というコンセプトを掲げていました。自分たちがイベントを盛り上げることで、次の世代に刺激と希望を与えたい。そんな想いが活動の根幹にあり、NPOとして活動していました。新しいメンバーが加わる時は、そういう趣旨も理解した上で活動するようにしてもらっていました。

 ただ、10代の子どもが参加する時は、大人と同じようにはいきません。そのまた話すだけでは、理解が追いつかない可能性があります。彼らからすれば主役は「自分」であり、最大の動機は「カッコいい技を披露して目立ちたい」というものでした。

 技の練習をするだけなら自己満足でOKですが、依頼をもらって地域のイベントに出演するならそのままではいけません。お客さんの満足、安全の確保、主催者への礼儀など、理解しておいてもらわないといけないことがたくさんありました。

 大切なことは理解してもらわないといけない。かといって、そのまま伝えても伝わらない。

 最初から全部を理解させようとすると、プレッシャーになって挑戦をやめてしまうかもしれません。僕はどう伝えるのがいいか、あれこれ考えを巡らせました。そしてちょっと作戦を練った結果、まず興味を持てるもの・責任の小さなものから順に経験してもらうことにしました。

大道芸の技を覚える。
道具を貸して自主練を促す。
イベント本番に連れていく。
出演のアシスタントに抜擢する。
本番用の道具を触らせてみる。
主催者への挨拶に同行させる。
脇役としてステージに立たせる。

経験のステップを踏んでいくことで、彼らの「自分も早くステージに立ちたい!」という気持ちは高まりました。そして、いよいよ次の出演こそ……というタイミングで、僕は初めて活動の心得を伝えました。

「俺たちの目的は、目立つことじゃない。地域の人たちを楽しませることだ」

「依頼をくれる主催者、拍手をくれる観客、送迎してくれる親御さん、いろんな人のおかげで君はステージに立てる」

「ステージに立てば、君たちはプロとして見られる。子どもだからという言い訳は通用しない」

……その責任を背負う覚悟があるなら、次のステージは一緒に出演しよう。

 この手順を踏んだことで、彼らは全員活動の趣旨を理解してくれました。そしてプレッシャーに負けることなく、堂々と人前でパフォーマンスを披露してくれました。

 彼らがいたからこそ、僕も自信を持って依頼に応えることができ、毎年数十回にも及ぶ出演を続けることができました。そして最盛期には、亀岡祭の前夜祭やMITSUBISHIの夏祭りにも出演させていただくことができました。

大切なことを伝える時は、順序を大切に。

 僕が人にものを伝える時に心がけていることです。相手のことだけでなく、そこから広がるさまざまな人間関係や地域社会のことまで考えて、想いと知恵を分かち合っていきたいものです。

 人と人が真に理解し合うのは難しいかもしれませんが、だからこそ今から一緒に学び合っていきましょう。長くなりましたが、最後までお読みくださってありがとうございました。


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