UXライターがビジネスに貢献するために、UXライティングをはじめる前にやると良い取り組み
先日「UXライティングというビジネス」という本を読みました。
この本は、単にUXライティングのテクニックを教えるものではありません。それ以上に、UXライターがビジネスサイドにどう貢献できるか、どのように影響を与えられるかを丁寧に解説しています。
実はこのテーマ、私自身ここ最近ずっと考えていたことでもあり、「これは読まなければ!」と発売を心待ちにしていました。そして実際に読んでみて、期待以上に素晴らしい内容でした。
私はヌーラボのライティングチームで働いています。
ライティングチームは、UXライティングも重要な責務の一つです。日々の業務を通じて感じるのは、UXライターの役割は「文章を書くこと」だけにとどまらないということです。特に、ビジネス観点で他のチームメンバーと会話ができるのかというのが重要だと感じています。
そこで今回は、自分の経験をもとに、ビジネス観点でUXライティング業務に取り組めるように、先にやっておくと良い取り組みをまとめます。ある日突然「きみ、UXライティングをやってくれないか?」と言われた方にとって、少しでも参考になる内容になれば嬉しいです。
会社の目標を知る
まず、会社の目標を知ることはすべてのベースとなります。特に、以下のポイントを確認することが大切です。
短期的に力を入れることは何か?
今期、どのプロダクトや機能に注力しているのかを確認します。中長期的な目標は何か?
会社が目指している方向性やビジョンを把握することが大切です。売上や成長指標の把握
ビジネスの現状を理解することで、施策や行動の優先順位が明確になります。
幸いなことに、ヌーラボでは毎月全体ミーティングが開催され、これらの情報が全社員に共有されています。これにより、会社の目標をもとに自分のチームの目標を自然に組み立てられるようになります。さらに、その目標を起点に日々の課題の優先順位を決めることで、どの課題を優先すべきかがブレなくなります。
例えば、ライティングに関する施策を提案するときも、会社の目標を理解していると説得力が増します。「この施策はやるべきです。なぜなら会社の目標であるXXを達成するために必要で…」と具体的な議論を進められるからです。
逆に、目標とズレた施策については、スパッと「やらない」という判断もできるようになります。会社の目標を知ることは、迷いを減らし、自信を持って行動するために必要です。
ドメイン知識を理解する
自分が関わるサービスのドメインについて深く理解することは、UXライティングの質を高めるために欠かせません。特に、そのサービスが属する業界や関連する専門知識を学ぶことで、よりユーザーに寄り添った、わかりやすい表現が可能になります。学ぶ際には、以下の観点を意識するのがオススメです。
どんな言葉を使っているのか?
業界特有の用語や、ユーザーが当たり前に使う表現を把握します。
たとえば、タスク管理ツールでは「プロジェクト」「ボード」「カンバン」などの言葉が一般的ですが、それがどのように使われるかを理解することで、自社の言葉選びの参考になります。ユーザーの課題は何か?
サービスを利用するユーザーが解決したい課題を知ることが重要です。
たとえば、プロジェクト管理ツールを使う目的は「工数を節約したい」「コミュニケーションを活性化したい」など様々です。課題の理解が深まることで、ユーザーに寄り添った解決策を提案できるようになります。競合サービスの研究
他の類似サービスを実際に使ってみることで、ユーザーが他にどんな体験をしているのかを知り、自社の強みや弱みなど把握できます。
昨年mixi2がリリースされました。個人的に気になっていたのが、サービス内で「マイミク」という独自用語を使うか、一般的な「フォロー・フォロワー」を使うかという点です。どちらを選ぶかで、ユーザーが受け取る印象が大きく変わります。例えば、「マイミク」という言葉はmixi独自の文化を反映していますが、一般的なSNSでは「フォロー・フォロワー」の方が馴染みがあります。
結果的に、mixi2では「フォロー・フォロワー」が採用されました。
この決定は、業界の一般的な言葉を使いつつ、ターゲットユーザーにとって最適な表現を選んだ結果だと考えられます。mixiの文脈を踏まえると「マイミク」を使う選択肢もありましたが、一般的なSNSで広く使われている言葉を選んだことで、より多くのユーザーにとって使いやすく、理解しやすいものになったと思います。
ユーザーを理解する
サービスが成功するためには、ユーザーの課題を正確に理解し、それをどのように解決するかを明確にすることが不可欠です。ユーザー視点で考えることで、提供するサービスが本当に必要なもかどうかが判断できます。
もちろん、ユーザーインタビューを通じて直接ユーザーの声を聞くことが理想的ですが、最初は自分自身の視点から考えることも有効です。「自分だったらこのサービスで何をしたいか?」を深掘りしながら、ユーザーのニーズを理解していくのも一つの方法です。ユーザーを理解する際の観点としては、以下が重要です。
サービス全体で何を解決したいのか
サービス全体の目的を明確にすることで、ユーザーが抱える大きな課題を解決するビジョンを持てます。この場面では何を解決したいのか
サービス全体だけでなく、特定の画面や機能において何を解決するのかを掘り下げることも重要です。たとえば、課題の詳細画面では、「課題を理解すること」が目的なのか、それとも読んだ後に「何かしら行動を起こしてほしい」のかを考えることです。魅力に感じることは何か
ユーザーが「このサービスを使い続けたい」と感じるポイントを探ります。わかりやすいインターフェースなのか、直感的な操作性なのか、メッセージがユーザーを楽しませるような表現が良いのかなど、何に魅力を感じているのかを探ります。
ユーザーを理解することで、サービスの中でユーザーには何をしてもらうべきかを考えられます。例えばInstagramでは、文章を書く欄に「キャプション」という文言を使用しています。
Instagramでは画像や動画がメインであり、文章はあくまで沿えるものだよという開発者側のメッセージを感じます。ユーザーは気楽に文章を書くことができます。ユーザーを理解することで、適切な表現を選ぶことができます。
また、先日Backlog Worldに参加したのですが、登壇者の多くが「スター機能」の魅力を語っていました。スター機能はプロジェクト管理には一見関係なさそうですが、コミュニケーションを取る上ではとても良い機能のようです。実際に私も活用しており、とても良い機能だと思っています。
自社サービスを深く理解する
自社サービスを深く理解するためには、ただ情報を得るだけではなく、実際に使ってみて体験することが大切です。このプロセスを通じて、サービスの強みや改善すべき点が見えてきます。また、ボイス&トーンが理解できます。
自社サービスを深く理解する際に意識すべきポイントは以下です。
サービスの特徴や機能を把握する
サービスが何を提供しているのか、その特徴や機能を具体的に理解しましょう。ブランドのボイス&トーンを確認する
自社サービスのコミュニケーションスタイルが、ユーザーにどのように伝わるかを確認することも重要です。ブランドのボイス&トーンが一貫しているか、「親しみやすい文言」や「信頼性を重視した文言」など、使用する言葉がターゲットとするユーザー層に適切であるかを確認します。他社サービスとの比較を通じて強みを発見する
競合他社のサービスと比較することで、自社の強みや差別化ポイントを見つけることができます。競合の優れている点も学びつつ、自社サービスがどのように独自の価値を提供できるかを考えます。
例えば、Slackはユニークな文言でユーザーに親しみやすさを伝えています。メッセージをすべて確認した後に表示される文言がその一例です。
このようなメッセージを「素敵だ」と感じたとしても、同じ文言をそのまま自社サービスに使うのは違和感が出ることがあります。大切なのは、文言を真似するのではなく、その文言が伝えようとしている感情をどう自社の言葉で表現するかを考えることです。
文言自体を真似るのではなく、文言から受け取った感情を真似ることが重要だと考えます。
まとめと次の動き
「UXライターがビジネスに貢献するために、UXライティングをはじめる前にやると良い取り組み」として、4つのポイントを紹介しました。これらを先にインプットしておくことで、文言の改善に取り組みやすくなると思います。まずは気軽に試してみてください。
実践に役立つ本として、以下の2冊をおすすめします。
ライターがすべてビジネスサイドの視点を持つべきだとは思いませんが、チームに1人くらいはこの視点を持つメンバーがいると心強いと思います。
このnoteを読んで、「ちょっとやってみようかな」と思っていただけたら嬉しいですし、そんな方に「UXライティングというビジネス」は心強い味方だと思います。