建築士法上の不誠実な設計行為事例
ガスヒートポンプの設置に係わる設計業務に関する(私的)解釈集としてまとめたものです。
まず、建築士法の該当条項がどうなっているか確認します。
上記の記述を踏まえ、ガスヒートポンプに関して建築士法上の設計責任を問えそうな事例について列挙します。
・官庁工事における「建築設備設計基準」不適合
官庁工事において官庁工事仕様書に適合しない建築設備が存在していいはずがありません。
建築士の設計責任(官庁工事の場合)
https://note.com/kousansha/n/n7f570a9c3b36
・その他建築士法上の解釈(不誠実な設計行為事例)
ガスヒートポンプと建築士法は無関係に見えますが、姉歯事件等を参考とすると、法規制上は、設計業務上の不作為、見落としについても責任を問えるのではないかと考えます。
設計事務所が、ガスヒートポンプのレイアウト設計、機種選定、工事設計等に関与している前提となりますが、ガスヒートポンプによる騒音問題を発生させないために基本設計段階で確認義務がいくつか発生しています。
①関係法令等の確認
ガスヒートポンプが騒音規制法の規制の対象になっていないから、他の法律で規制されることはないとする「思い込み」は禁物です。
製造物責任法、国土交通省所管法令の中で、ガスヒートポンプ騒音問題に関して適用可能な条項が存在、所管窓口が要望書等受け付けることを問合せにより確認済です。
法令:建設業法(公衆災害)、建築基準法(既存不適格建築物)、建築士法、製造物責任法(欠陥状態)、ガス事業法(熱源としてガスを採用する場合、保安業務を行う義務)
技術基準等:環境基準、建築設備設計基準(国土交通省)
②当該機器設置場所での環境基準値、選定した機種の運用最大値(実機最大)での騒音値の確認
特に、低層住宅地に設置する場合、基本設計段階での配慮が必要です。実機では「カタログ上の定格値」以上の騒音が発生しているため、騒音計算するうえで、実機騒音最大値についてのメーカー問合せし確認する必要があります。
ガスヒートポンプ騒音公害の遠因?
https://note.com/kousansha/n/nd129bca8f51d
③レイアウト設計上の確認
室外機について、敷地境界での騒音レベルを予測、防音壁追設可能な場所であるか否か確認し、レイアウト設計上、防音壁設置可能なスペースに室外機を設置する必要があります。
東京ガスの技術論文には「GHPの設置に際して,ガスエンジンヒートポンプだからといって特別な注意はいらず,通常の騒音計算により敷地境界での騒音レベルを予測し,環境基準(騒音)以上の場合は室外機設置場所の変更,防音壁の設置,機種選定のやり直しなどで対処すればよく,電気式空調機の設置と同等である。」と書いてあります。
どういう場合、防音壁が必要となるのか
https://note.com/kousansha/n/nb20a79bc8a8e
④室外機基礎コンクリート架台、制振措置等工事設計等に関する確認
当該機種選定に当たり、基本設計段階で、メーカー機種の比較の他、コンクリート架台(共振対策)、室外機筐体内の消音器・制振材・防音材等の出荷時取付、施工時における防振架台採用可否、防振ゴム取付、防音壁・防音チャンバー等の設置に係わる諸検討を行う必要があります。工事会社が(騒音対策ノウハウのない)下請けに丸投げする場合を想定すると、基本設計段階で設計図書にてきちんと上記事項に係わる仕様等明記することは、冒頭で示した建築士法の主旨から技術者として当然と思います。
建築士会の通報窓口があります。建築士の工事監理に係る組織的又は個人的な法令等に違反する行為の通報窓口です