「何をしたいか」よりも「どうありたいか」を考える。
ここ最近、キャリア論に関して、“doing(またはto do)”と“being”の観点で解説される記事や論調をよく目にするようになりました。(目につくようになった、が正しい表現かもしれません。)
先日読んだ、有冬典子さんの『リーダーシップに出会う瞬間』には、リーダーシップのあり方を解説するくだりとして、以下の記述がありました。
「何をするかではなく、どうあるか、ということかしら。リーダーシップとは、Doingではなく、Being、ただそこに居るだけで発してしまう、その人の存在感とか、その人に宿る雰囲気というか、つまり、在り方なのだと私は思っています。」 (p29)
また、北野唯我さんの『転職の思考法』では、人のタイプを“to do型”と“being型”との表現に分類がなされています。
"to do(コト)に重きをおく人間・・・何をするのか、で物事を考える。明確な夢や目標を持っている"
"being(状態)に重きをおく人間・・・どんな人でありたいか、どんな状態でありたいかを重視する" (p216)
正直なところ、これらの本をそれぞれ読んだ時にはさほど気に止める事もなく、さらっと読み流していました。
しかしあることがきっかけとなり、最近になりこの論調に俄然興味が湧くようになりました。
それは、転職斡旋サイトに登録をしてみたこと。
これらのサイトでは、名前や生年月日、職位、職歴などの基本情報を登録すると同時に、希望する業界や職種を選ぶように促されます。
これはそのサイトの性質上、至極当然のことではありますが、今の私の場合こんなことができたら良いなという漠然とした「ありたい姿」のイメージがまずあり、それを達成できる業界や職種を選びたいという状態なので、そんな場合には必ず選択肢を選ばされるというスタイルは適しません。
その為、今の自分は“being”があるものの、“to do”が明確にイメージできていない状態なんだなと自覚することに繋がりました。
でも、こんな状態の人は私だけではなく世の中には多く溢れている気がします。実際、『転職の思考法』でも、being型の人が殆ど(99%)だと解説されています。
私はまだ明確に転職しようと積極的に行動を開始した訳でもないため、どうしても「ありたい姿(being)」がまず先にある状態です。なので無理矢理に具体的な業界や職種を選ぶよりも、まずは「ありたい姿」をベースにしてそこから具体化を進めていくやり方の方が、特にセカンドキャリアを考える上では良いのではないかという感触があります。
なぜなら、20年以上に渡って同じ会社、同じ職種で勤めてきているため、どうしてもその延長線上で考えてしまいがちになるからです。でもそれでは選択の幅がどうしても広がりません。どうしても年収とか勤務地とか業界とか、目に見える項目の範囲で考えてしまいます。
ここは腰を据えて、何をやりたいか、ではなく、「どうありたいか」を、自身の過去の経験と照らし合わせながら、じっくりと考え抜きたいと思っています。
思えば、キャリア論ではなく経営論になりますが、『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者である坂本光司さんも、昨年の講演で以下のことをおっしゃっていました。
「経営のやり方ではなく、企業の「あり方」を正しく理解認識をしていない人は経営者になってはならない。」(2018.3.17 坂本光司教授 最終講義より)
企業においても、その「あり方」が大切だと説かれています。
私の場合、「人と組織に関わる問題解決に貢献したい」という漠然とした思いがベースにあります。だからといって人事で人材開発や組織開発をやるのがその答えかというと、それは違う気がしています。
この思いをベースとして、何をやるべきかを問い続けていった先に、きっとその答えが見つかるのではと思います。それはひょっとしたら全く違う世界の業界や職種かもしれませんし、やはり今の延長線上にあるのかもしれません。
かのドラッカーも以下のように言っていますし、このスタンスを続けていくことにします。きっと私ならではの「なされるべきこと」が見つかると信じて。
なされるべきことを考えることが成功の秘訣である。
何をしたいかではないことに留意してほしい。
これを考えないならば、いかに有能であろうと成果をあげることはできない。 (P.Fドラッカー「経営者の条件」より)