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日本企業はどこへ向かおうとしているのか。(アメリカの「脱・株主第一主義」宣言から考える)

8月20日の日経新聞夕刊に掲載された、米経済界が「株主第一主義」を見直すという記事を見た時は驚きました。これは企業経営のあり方・考え方を変える動きに繋がる大きなきっかけになるでしょう。また、以下の記事にもあるように、日本経済へのプラスの影響も期待できます。

私がアメリカ経済界の風向きの変化を少し感じたのは、昨年、投資家のウォーレン・バフェット氏 が、企業の四半期決算を否定するコメントを出した時です。

短期的な利益追求が企業経営の舵取りに悪影響を与えることになると警鐘を鳴らすコメントです。結果を第一に追求するアメリカにおいてもこのような動きが出てきているのかと、価値観の変化の兆しを感じました。

今回の宣言が実践されるかどうかは今後の動きを見守るしかありません。ただ、長期的な成長や繁栄を目指し時代の変化に追随していこうという、アメリカ経済界の強い意思表示の現れだと受け止めることができます。

ステークホルダーとどう関係性を築いていくかの議論は多様にありますが、「人を大切にする経営学会」の会長であり、「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズの著者である坂本光司さんは、「会社経営とは『五人に対する使命と責任』を果たすための活動」だとして、具体的に以下の五人であると主張しています。

一人目:社員とその家族
二人目:社外社員とその家族
三人目:現在顧客と未来顧客
四人目:地域社会・地域住民
五人目:株主・出資者

坂本さんは従来から一貫して、株主は五人目に挙げていました。アメリカがそれと同じ観点に立とうとしていることはたいへん興味深いですし、画期的なことであろうと感じます。

ただ、坂本さんが敢えて声高にこの序列を訴えているのは、われわれ日本企業の多くが誤った考え方をしているという指摘からに他なりません。

私の所属する会社も含め、特に高度成長期に発展的拡大を遂げてきた企業の多くは、バブル崩壊後、長期にわたり停滞しています。

成果や成長が望めないあまりに、焦りの気持ちからか、あまりにも短期的な結果を追い求めすぎている嫌いがあります。

経営者の発するメッセージも、顧客でも社員でもなく、誰に向かって発せられているのかと感じる事が多々あります。

はたして、日本企業はいったいどこへ向かおうとしているのか。

今の日本企業は、これまでの米国経済界が自らの意思として「株主第一主義」と敢えて宣言をしてきたものとは異なり、その状況下から株主や出資者の目を気にせざるを得ない状態に陥っているように思います。

そして、成果が出せないことへの焦りから、気持ちの弱い経営者は不正行為に手を染めたり、過大なノルマを与え不当な販売に社員を走らせるなど、それら実態が世の中に晒され結果として余計に追い込まれるという悪循環に陥っています。

企業はどこへ向かうのか。何を成すために存在をしているのか。その存在価値は何か。そして世の中にどんな貢献ができるのか。今まさに根本に立ち返り、企業の「あり方」について考え直すべき時なのだと思います。

   “企業とは何を理解するには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。事実、企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的として有効な定義は一つしかない。すなわち、顧客の創造である。”  (ピーター・ドラッカー)


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