【推しの子】と「にごリリ」で頭が渋滞/日本のマンガの強さはどこにあるか/ロシアの情報戦やサイバー戦の侮れなさ
7月8日(土)雨/曇り
朝からいろいろ整理されてない話がたくさんあって頭の中が渋滞していた。とりあえず仕事を済ませようと朝のうちには入浴後に隣町までガソリンを入れに行き、パンを買って帰った。朝食後は少し買い物をして母の入居している施設に届け、帰りにクリーニングを取って帰ってきた。
【推しの子】123話「悪手」の興奮が冷めやらぬうちに「2.5次元の誘惑(リリサ)」141話「愛色の世界」を読んだら、こちらも大変素晴らしい回で感想がうわっと湧き上がってきているのだが、他にも思っていたこと書きたいことなどがあり大渋滞になったわけだ。
「2.5次元の誘惑(リリサ)」の感想や考えたことはまた改めて落ち着いてから書くことにして、今朝は二つほど書きたいと思う。
どなたかが書いていたが、都会は文化資本が高くて田舎は低い、という議論に対し、実際にはマンガ家についてはほとんどが地方出身者で、東京などの都会の人は少ない、ということを言っておられて、それは文化の中でも「マンガ・アニメ」というものに特有の事情があるからだな、と思った。
つまり都会にはなんでもあるが、田舎にはマンガ以外没頭して楽しめるものがないから多くの子どもがマンガにハマるし、感性が尖った子供は特にマンガに熱中しやすい、ということがあるのだと思う。上京してみればマンガ以外にもこんなに面白いものが色々あるのか!と驚くわけだけど、今のようにマンガやアニメが隆盛していると、マンガ以上に面白いものはなかなかない、と思ってる人は多いだろうと思う。
感性というものが何もないところで生まれるかどうかは別にして、マンガやアニメは日本中どこにでもあるという普遍性を持っているのであり、それがマンガやアニメの裾野の広さを保証しているので、それが日本文化や書籍文化においてマンガが突出している強さを、さらに強化することになるのだと思う。
そういう意味で、洒落臭い文化資本なんかなくても、マンガやアニメは誰にでも開かれてある。地方出身のマンガ家が多いのも都会でしかみられないものを地方の人がやりたくなるきっかけはあまりないわけで、好きなものをやるために東京を目指すということだろう。マンガの中でも、ジャンプがいつまで経っても強いのも同じ理由で、コンビニがない時代から小さな書店にもジャンプ・マガジン・サンデーはあった。
私は子供の頃、村の中心にあったよろず屋みたいな店までチャリで行って80円でサンデーを買い、貴重で貴重で、隅から隅まで毎週読んでいた。小学校の図書館とサンデーが文化資本の8割くらい占めてたのではないかと思う。
今はマンガアニメだけでなくゲームや動画などさまざまなものが地方で手軽にみられ、楽しめるようになっているのでこの状況は変わるかもしれないのだけど、Twitterなどでも絵の達者な人が実に多いのをみていると、マンガの強さは今後も続くだろうと思う。
そういうマンガを含めた才能を、東京は吸い上げて繫栄してきたわけで、でもそのことを都会育ちの官僚や政治家は忘れていることが多い。地方が枯渇すると遠からず東京も日本全体も枯渇するということをもっと考えて、地域が生き残っていける施策を考えていてもらいたいと思う。
「ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか」の第4章「新領域における戦い型の将来像 大澤淳」を読んだ。新領域というのはサイバー空間や宇宙などのことだが、今回はいわゆる「ハイブリッド戦争」に「ならなかった」という評価が当初あったわけだけど、実際にはそうではなかった、というところがなるほどと思った。
ハイブリッド戦争は2014年のクリミア「併合」の時はとてもうまく行ったのだという。ロシアは第一段階の「情報戦・心理戦」の段階でウクライナ形とロシア系の分断を図り、第二段階のサイバー戦で重要インフラを麻痺させ、クリミアの時はこの時点でほぼ勝負がついていて、第三段階の通常戦はほとんど行われなかった、のだという。
しかし今回は情報戦の段階でウクライナ政府やアゾフ連隊がネオナチだとか、ロシアはウクライナに侵攻しないとかいう偽情報を出しまくっていた。この段階で日本でも惑わされた人は多くいただろう、という指摘はその通りだと思った。
しかしウクライナが民主的な政府でありネオナチなどと言われる人たちはごく少数であることなどをウクライナ側から発信し、またアメリカはロシアが「侵攻はない」とする情報を否定するような情報を出し続けていて、これは現在でも継続しているが、クリミアの時に比べればウクライナも西側も対抗する手段を講じていて、一方的にロシアのプロパガンダが支配している状況ではなくなった。
第2段階のサイバー戦についても、ロシアはかなり徹底的にウクライナに侵攻を仕掛けたのだが、アメリカなどが徹底的に協力したため、被害を拡大させずに済んだのだという。この辺りの認識は不足していたなと思うので、サイバー戦というものの恐ろしさを改めて感じた。特に、開戦後にこの分野で一番大きいのはイーロンマスク氏がスターリンクを使えるようにしたことがとても大きいわけだ。
そしてこの段階までの「うまく行っていない」という情報が、プーチンのところまであげられていなかったのではないか、という疑惑があるらしい。とはいえロシア政府は当初10日間でキーウその他を占領して戦争を終わらせるつもりだったらしいから、情報戦やサイバー戦の失敗がいかに大きかったかが感じ取れる。
ウクライナは開戦後もこうした新領域での戦いを上手に進めている。特に情報戦においてはゼレンスキー大統領本人が「自分はキーウにいる。誰も脱出していない」と事実を国民に動画で伝えたり、各国の国会をオンラインで訪問して支持を訴えたり、八面六臂の活躍をしていた。またジャベリンやハイマースなどが有効にロシア軍に打撃を与えられたのはアメリカの偵察衛星からのロシア軍の位置情報が逐一ウクライナ側に伝えられていたからで、宇宙空間の利用という面でもとてもうまく行っているということなわけだ。
ロシアのこうしたハイブリッド戦の戦略の中心になっているのが、先日ワグネルのプリゴジンに槍玉に挙げられていたゲラシモフ上級大将なのだという。各国の持つ、歴史由来のセンシティブな面に焦点を当てた「ナラティブ=物語」を用いて国民の分断を図るのが一つ、これは平時からロシアは西側世界に行っているのだという。トランプ当選やブリグジットの可決なども、ロシアの工作が成功した可能性があるというのは、「弱みにつけ込むのが上手い」ということなのだなと思う。
また先日の名古屋港の港湾システムがランサムウェアに妨害されて稼働できなかったりしたのもロシアのハッカー集団だったわけで、交戦していない国に対しても遠慮なくこういうことはやってくるわけである。この辺は日本では中国がやっているという印象が強かったが、ロシアについても考えなければいけない状況なのだろう。
実際のところ、ゲラシモフのドクトリンはクリミア危機の時は完全に成功したわけで、これは決して侮っていい、軽視していいことでないという指摘は重要だろう。こうした攻撃から守る新たな「国家安全保障」観を持たなければならない、という指摘はその通りで、狙う側を非難しているだけでは済まないのだから、日本も積極的にこれに対処していく必要があるなと思った。