大事なものは何か:無形資産への投資、人的資産への投資、公共資産への投資
2月8日(火)薄曇り
天気としては「晴れ」の範疇に入ると思うのだが、スカーっと晴れてドーン!と放射冷却、と言うほどではない。なんとなく雲が出ていてスカーっという感じがないのはスッキリはしないが、おかげでそんなにすごくは冷えてないんだろうと思う。今朝の最低気温は今のところマイナス4.1度。前夜の予想程は冷えていない。
一部年賀状をようやく入手したので朝起きてから整理していたのだが、思いがけず懐かしい人から来ていたり知らないうちに北海道に引っ越したりしている人がいて色々と感慨深く思ったりした。コロナでなかなか往来もできないが、思いがけない時期に人の息遣いを感じたりして、生きているというのはこういうことかとまた思ったりした。
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「資本主義の新しい形」2-3マクロ経済における資本主義の「非物質化」
今まで読んできたところで経済の非物質化の状況とそれに合わせた新しい経済成長理論とその問題について色々考えたりしたのだけど、この節で検討されているのは資産の非物質化、つまり「無形資産」の形成の問題とそのうち「投資」がどれくらいを占めているかという問題について見ている。
2-3-1資本主義発展における無形資産投資の重要性
ここでちょっとこの本を離れて基本的なことを書くと、資産とか資本とか負債とか投資とかいうのは簿記の初級で複式簿記を少しやったことがある人ならわかると思うのだが、全くやっていないとわかりにくいかもしれない。これは企業の資産状況(ストック)を表す貸借対照表に出てくる項目で、お金の流れ(フロー)を表す損益計算書とともに毎年作られる(それをもとに課税される)会計書類(財務諸表)には必ず出てくるものなので、基本的な経済の流れを追うのに使うことができる。
貸借対照表では左(借方)に資産、右(貸方)に負債と純資産(資本や利益など)を記入する。私は商業高校で教えていたことがあるのだけど、教室の黒板の上には左側に「借方」右側に「貸方」と貼ってあって、おお、商業高校だ、という感じだった。私が簿記をかじったのも生徒たちが一生懸命やっているのに自分が全然知らないのもなあ、という気持ちで日本商工会議所の簿記検定の3級と2級を取ったのがきっかけだったのだが、その後実際に使うことも出てきてやっておいてよかった、という感じがしたのだった。ただ私が検定を取ったのは1999年で、その後2005年にはかなり改訂されているので自分の知識はやや古いところがある。私が勉強した時は「資本の部」と言っていた部分が現在では「純資産の部」になっているなどの変更はある。
つまり貸借対照表は左側に現在の資本状況が一覧で示され、右側にそれがどのようにやって形成されたか、元々の資本金からなのか、負債なのか、利益によるものなのか、が示されているわけだ。
企業活動は基本的には利益を上げることが目的であって資産を増やすことが目的ではないわけだけど、企業活動には資産(設備や土地など)が必要だから資産も当然所有しているわけだけど、ここで問題になるのは設備や土地などの形のある資産ではなく、「形がない資産」であるわけだ。
ということで本題に戻る。無形資産のうち「人的資産」は会計には現れないけれども、それが生み出した無形資産には大きく分けて三つあると考えられるという。(ブレア・オールマン「ブランド価値評価入門」による)
1.所有権が明確で市場で売買可能なもの(特許、著作権、商標、ブランドなど)
2.特定企業に所有されコントロール可能だが企業と分離して売却することが困難なもの(研究開発途上のもの、「評判」や「名声」、独自の業務プロセスなど)
3.企業で働く従業員やサプライヤーとの密接な関係の中で構築され、企業がコントロールすることが困難なもの(人に根ざした知識・スキル、コア競争力(コア・コンピタンス=他の企業が真似できない競争力の源泉)、ネットワーク、組織など)
1はわかりやすいし、2も想像はしやすいと思うが、3は評価が難しい。ただ後ろに行くほどより本質的な競争力の源泉、つまり資産としての重要性が高いけれども、逆に重荷にもなりやすいものだという感じがする。
無形資産は資本主義が「非物質化」する前から重要ではあったわけだけど、経営学の上ではともかく、会計学・経済学上はあまり注目されて来なかったように思う。企業活動のための資産という点では設備などの有形資産に負けず劣らず重要なものばかりだが、それらをどのように評価していけばいいか(つまりどのように金額に換算するか)という問題は結構むずかしいだろうなと思う。
会計上は資産の購入値段(から減価償却費を引いたもの)が簿価になるわけだから、無形資産に関してもそれにどれくらい投資したかが一番わかりやすいだろう。
「投資は、資本主義経済をダイナミックに動かす最も基本的な要因である。資本主義が将来的にどの方向に変化していくかは、現在の投資動向によって決まる。実際、21世紀に入って以降の過去20年間に投資の世界で起きた非常に大きな変化は、無形資産への投資が顕著に増大した点にある。」
というのはなるほどと思った。
この投資に対する実証研究として、コラードらによる無形資産投資によるマクロ経済的なインパクトの推計研究が行われ、この方法が標準的な手法になっているのだという。
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このあたり、知識が足りないなと改めて思うのだけど、投資といっても個人レベルの株式投資や不動産投資というレベルではなく、国家による教育への投資だとかインフラ構築への投資など、公共投資も含めたレベルで考えないと把握しきれない部分なので、また違う勉強が必要になるなと思った。いつまで経っても勉強は終わらないが、(笑)また研鑽を積み重ねていかないといけないなあと思ったのだった。
あといろいろ考えていて思ったのは、「人的資産」という問題なのだけど、例えば大阪で病院だけでなく看護師数が削られていくのは、社会を支える公共財産としての人的資産を削減しているということなのだと思った。看護師数を「資産」として見ずに単に「費用」として見ているからそのようなことになるのであって、それがコロナなどの緊急事態への対応を遅らせる原因になったわけだから、維新型の新自由主義の足りないところがこの辺りにあるなというふうには思った。
また、感染症に関して色々な考え方があるのはいいけれども、それだけでなく基本的に知識の普及ということも、これもある種の社会の持つ「無形資産」だなと思った。またインフラの老朽化などの問題も「公共資産の減価償却」としてとらえられる部分もあると思うし、その辺りの公共経済学的な部分も勉強してみたいなとは思った。