「日本の左翼思想」は賞味期限切れではないか(1)
9月6日(金)晴れ
昨日は疲れが出てしまってあまりいろいろできず、基本的にゆっくり過ごしていたのだが、4日になんの気なくした以下のツイートが思ったより反響があり、そのことについて考えていた。(6日0740現在で9825表示82RT127いいね)
「左翼思想がすでに賞味期限切れなのかと思うことはあるが、特に平和主義思想や女性保護にズレすぎの日本製フェミニズム、清貧思想の持ち上げなど、日本における左翼思想の為体が特に酷いのだと最近特に思う。だから左翼には経済も防衛もわからない。それがわからなければ政治も外交も分かるはずがない。」
言いたいことのポイントは、「左翼思想」が時代遅れになりつつあるのか、それとも「日本の左翼思想」が時代遅れになりつつあるのか、ということである。
西側世界を中心にポリコレ旋風が吹き荒れる一方で、労働者の待遇を重視する政策を打ち出す国は多く、そういう意味で左翼思想そのものが賞味期限切れになったとは言い切れない側面はあるだろう。
左翼と言われる思想が政治思想として強い勢力になったのはフランス革命で「自由・平等・人民主権」を主張する革命派が起源だと言えるが、すでにその時点から革命派による強い思想統制、恐怖政治=赤色テロルは現象として起こっていて、またいわゆる反革命=白色テロルもテルミドールの反動という形で起こっているし、「共産主義」という言葉もフランソワ・ノエル・バブーフによって提唱され、土地の私的所有の否定とともに「前衛分子による武装決起」思想や「階級独裁」の観念も彼によって提出されているので、現在における左翼活動の形態や思想、問題点もまたすでに200年以上の歴史があるわけである。バブーフは自らの党派内に放たれていた総裁政府のスパイの密告により決起前日に逮捕され、処刑された。
つまり対象や行動主体は違うが、基本的に五・一五事件や二・二六事件の先駆者でもあるわけである。
バブーフの思想をさらに発展させた社会主義思想や共産主義思想、特にマルクスの思想とそれを受け継いだレーニンやトロツキーの思想がヨーロッパでは中心になっていくし、多かれ少なかれこの系統の思想を受け継いだ党派は多いし日本左翼の中で今でも活動している日本共産党やいわゆる中核派などの新左翼集団の残存思想もまたこの影響は受けているだろう。
左翼運動はもともと貧しい労働者のための運動であったが、1968年ごろを境に経済的な成長を実現した西側諸国において変質していき、「労働者のための運動」というよりも「マイノリティのための運動」に変化していった。特に日本ではいわゆる「華青闘告発」をきっかけにいわゆる新左翼運動が大きくそちらの方向に舵を切った。それによって階級闘争概念など主要部分が大きく変質し、換骨奪胎されて本来の左翼思想とは大きく違うものになった。
一つにはヨーロッパとは違う独自の社会運動の動きがあったアメリカの動静も大きく影響しているだろう。アメリカの左翼運動の動きは一つは公民権運動、もう一つはベトナム反戦運動であったが、公民権運動が黒人の特権存在化など現在につながる一方、反戦運動は一部のカルト的な集団にその命脈を残してはいるがほとんど消滅したし、むしろ兵役拒否などがクリントン・ブッシュJr世代で問題化されることにつながった。フェミニズムや性的少数者の運動も黒人の公民権運動の成功に触発されて大きな動きになった側面はあり、そうした意味で現代に対する影響力は少なくとも表面的にはアメリカの影響の方が強いように見える。
こうした運動を含め、というよりむしろこうした運動を中心に左翼運動の暴走というものが懸念されているからこそ、「左翼思想の賞味期限切れ」という言葉に対する反応があったのかなという気がする。
多くの国において労働問題は今なお重要な問題であるし、アメリカでもそれは「ラストベルト」の問題として政治化している。人々が幸福に生きる上で労働の問題は今なお重要な要素になっているという意味では、世界的に左翼思想が全く無意味化しているということはないだろうとは思う。
ただ、日本という特殊状況下において、その問題はまた違う意味を持っていると思う。それは「日本の民主化」がどのように行われてきたか、ということに起因する問題ではないかと思う。もちろん幕末の尊王攘夷運動や明治初期の自由民権運動以来、西洋の圧力や思想の影響などを受けつつ日本独自で権利を求める運動は展開し、第二次護憲運動で男子普通選挙精度が実現するなど、日本独自の民主化の動きは進んできた。婦人の権利や社会進出という側面においても「虎と翼」のモデルになった婦人弁護士など、戦前にすでに胚胎しているものはあった。
ただそれを塗りつぶすように、大きな影響力を持ったのが配線による連合国支配、GHQによる「五大改革指令」や「マッカーサー三原則」による強制的な民主化が行われたことが日本の現在の左翼思想にも右翼思想・保守思想にも大きな影響を与えていると思う。
時間がなくなったので続きは明日にでもまた書こうと思う。
※続きです。
サポートありがとうございます。記事内容向上のために使わせていただきます。