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3回目の海外就活で得た教訓 〜ITエンジニアのための実践ガイド〜

ITエンジニアのこうりんと申します。今年2024年に海外転職活動を行い、同年11月から新しい会社でフルタイムのITエンジニアとして働き始めました。

これまでにも、2つの海外企業でITエンジニアとして働いた経験がありますが、今回の就職活動は過去2回と比べても特に大変でした。そこで、その経験をもとにガイドを作成しました。海外就職/転職に興味のある方にとって、少しでも役立つ情報になれば幸いです。

なお、フルリモートで働いているため、ビザや海外移住に関する情報は記事に含まれておりません。この点、あらかじめご了承ください。

以下がこの記事の目次になります。少々長いですが、気になる項目からお読みいただけると幸いです。


1. はじめに

1.1 自分の新しい会社・仕事について

私は現在、cLabs という会社で働いています。cLabsは、Celo と呼ばれるブロックチェーンの開発を主導する組織です。Celo は2020年にEVM互換のレイヤー1 PoSブロックチェーンとしてスタートしました。単なる汎用的なブロックチェーンではなく、「再生型金融(ReFi)」と呼ばれる分野で、現実世界の問題を解決するプラットフォームを目指しています。

Celoは、米ドルやユーロなどと価値を連動させた独自のステーブルコインを提供し、これらの通貨でブロックチェーンの手数料を支払うことができます。また、スマートフォン向けウォレットアプリ「MiniPay」を通じて、簡単かつ即時の金融取引を実現しています。このアプリは現在アフリカの4カ国で運用され、2024年には400万人以上のユーザーを獲得しています。さらに、日本のQRコード決済システムに似たインターフェースを備え、個人間の国際送金手段の一つとして利用が拡大中です。

私は現在、cLabs で ブロックチェーンコアエンジニア として働いており、ブロックチェーンそのものの実装に携わっています。開発チームの拠点は ドイツ ですが、私は東京から フルリモート で勤務しています。また、アメリカやポルトガル、アルゼンチンなど、世界各国からリモートで参加しているメンバーもいます。

1.2 なぜ海外企業で働きたいのか

私はこれまでにも海外企業で働いた経験があります。大学卒業後、シンガポールのスタートアップでWebフロントエンドエンジニアとして働き、その後、セルビアの企業で現在の仕事と類似するブロックチェーンの開発に携わりました。また、フリーランスとしても複数の海外企業の開発プロジェクトにエンジニアとして参加していました。

最初は単純に 海外で生活したい働いてみたい という興味から海外就職を目指しました。しかしキャリアを積む中で、グローバルに展開する技術やサービスに直接携わることへの魅力とやりがいを感じるようになりました。特にブロックチェーン業界では、ローンチされると同時にユーザーが世界中に広がるケースがほとんどです。そのため、特定の国の市場に限定される企業では、自分が興味を持つ業界や技術に十分に貢献することが難しいと考えるようになりました。

もちろん、日本にもブロックチェーンに関わる企業は数多く存在します。しかし、その多くはブロックチェーンを活用したアプリケーションやサービスの開発に注力しています。一方、私はこれらのアプリケーションを支える基盤となる インフラ部分の開発 への貢献に関心を持っています。そのため、海外企業で引き続きキャリアを積むことを決意しました。日本発のインフラ系プロジェクトも存在しますが、多くの場合、その拠点が海外にあり、実質的にグローバル企業として活動しているケースが多いと感じています。

1.3 応募した数・内定までにかかった期間

2024年3月半ばから本格的に転職活動を始めました。LinkedIn の Easy Apply を含め 約300社 に応募し、その中で 3社 からオファーをいただきました。その中でも、理念や分野、仕事内容、条件が自分に最も合致していた cLabs で働くことに決めました。

具体的な応募数と各選考フローの通過数は、以下のとおりです

  • 応募数:320社

  • 面接に進んだ会社数:27社

  • 技術面接に進んだ会社数:10社

  • オファーを獲得した会社数:3社

オファーを頂いた3社では、応募してからオファーをいただくまでに平均して 3~4ヶ月 かかりました。日本企業での転職活動経験がないため直接的な比較はできませんが、沢山応募する必要があったり、選考期間が長いという印象です。

過去で働いていた海外企業に入る際は、直接コンタクトを取るなどして運良くオファーを得ることができました。しかし、今回は過去2回と比べて苦戦しました。キャリアを積むにつれて、特定の経験や専門知識がより重視されるようになり、それが就職活動を難しくしているのだと思いました。

2. 転職準備

ここから実体験を元に海外転職活動の流れについて説明していきます。

2.1 条件を決める

まず、さまざまな観点から新しい仕事の条件を明確にします。たとえば、ITエンジニアが海外就職を目指す場合、以下のような観点が挙げられると思います。これらの多くは、各企業の Job Description(職務説明書) に記載されており、応募先を選定する際に役立ちます。

  • 業界

  • 分野

  • 会社規模

  • ポジション

  • 使用している技術

  • 給与

  • ビザサポートの有無(移住を検討している場合)

  • 雇用形態 (フルタイム/パートタイム)

  • オフィス勤務かフルリモートか

私はブロックチェーン業界での就職を希望しており、特にインフラレイヤに関わる企業を志望していました。また、これまでスタートアップでの経験が中心だったため、ある程度プロジェクトが進んでおり、 中規模 程度のチームや企業で働くことに興味がありました。技術面では、過去に Go言語 を使用していた経験があったことから、Go言語を使用しているプロジェクト、または関心のあった Rust を採用している企業を志望していました。給与については、自分の現在のスキルセットや経歴に見合ったポジションの平均給与以上であれば十分だと考えていました。

2.2 自分のプロフィールをまとめる

次に、自分の現状のプロフィールを整理します。

職歴
過去の職務経歴 
をまとめます。具体的には、企業名、ポジション名、開始月・終了月、仕事内容などを記載します。特に仕事内容に関しては、抽象的な説明を避け、自分が具体的に関与し、成果を上げた事例を記載することが重要です。数値や事実 を根拠として示すと、より効果的です。

学歴
職歴と同様に、学歴も簡潔にまとめます。すべての学歴を記載する必要はなく、大学や専門学校 など、職務に関連する 専門教育 を受けた学校を記載します。学んだ内容や研究テーマ、関わったプロジェクト/サークルがあればこれもまとめます。

出版物
自分が執筆した 論文技術記事 などをまとめます。これらは自分の専門的な経験や知識をアピールするのに重要です。タイトル、公開日、参照リンク、簡単な概要を記載します。

資格・認定
過去に取得した 資格 や、認定を受けた講座をまとめます (例: AWS資格など)

受賞歴
過去に受賞した ハッカソンコンペ の実績をまとめます。

スキル
自身が使える スキル をまとめます。海外の履歴書やプロフィールではスキルを沢山載せる傾向があるため、仕事で実際に使ったスキルだけでなく、ある程度学習したスキルも含めます。

ポートフォリオ
実際に公開している開発済みのアプリケーションがあれば、それをまとめておきます。また、自分が書いた公開可能なコードは、GitHub などのパブリックレポジトリで公開しておきます。

2.3 RésuméとCover Letterを作成する

海外の企業に応募する際、多くの場合、RésuméCover Letter の2つの文書が求められます。Résumé はA4サイズ1~2ページの英語版履歴書であり、 Cover Letter は応募時に添付する手紙のようなものです。Résumé には自身の経歴やスキル全般を記載し、Cover Letter では応募する企業に特化した経歴のハイライトや志望動機を述べます。

以下は、今回使用した私の Résumé です。実際には2ページ構成ですが、ここでは1ページ目のみを掲載します。Résumé には、基本情報(名前、居住地、連絡先、SNSのリンク)、プロフィールの概要、経歴のハイライト、スキル、職歴、学歴、資格、受賞歴などを記載します。

使用したRésumé (1ページ目)

日本の履歴書とは異なり、各項目の詳細などを2ページ以内に収める必要があるため、すべての経歴を網羅する必要はありません。特にアピールしたい経歴や成果に絞って記載することが重要です。また、具体的に何を行い、それが企業にどのように貢献したかを明確に書くことで、より効果的な印象を与えられます。

Résumé では、特に1ページ目の前半部分が最も重要です。企業の採用担当者が1つの資料を見る時間は限られているため、最初に目に留まる部分で自分のプロフィールの概要を効果的に伝えることが求められます。
また、後述しますが、応募する企業に合ったキーワードや情報が含まれていない場合、書類がそもそも目に留まらない可能性があります。そのため、企業に合わせたスキルや経歴を含めることが非常に重要です。


続いて Cover Letter を載せます。Cover Letter では、各企業ごとに情報をある程度絞り込んで記載します。具体的には、基本情報(名前、居住地、連絡先、SNSのリンク)、応募日、応募ポジション名、プロフィールのハイライト、志望動機などを含めます。

特にプロフィールのハイライトや志望動機については、求人情報に記載されている要件や企業文化、理念を読み込み、それらに合致する内容にカスタマイズすることが重要です。Résumé は通常、企業ごとに内容を変えませんが、その分、Cover Letter では各企業に合わせた情報を盛り込み、自分がそのポジションにどれほど適しているかを効果的にアピールします。

CoverLetterの例

Résumé と Cover Letter の作成ですが、専門のライターに依頼することをオススメします。依頼することで得られる主なメリットは以下の2つです。

(1) 効果的な資料を英語ネイティブが作成
専門のライターは海外企業の就職活動や業界に精通しており、採用担当者に効果的にアピールできる資料を作成するノウハウを持っています。また、英語ネイティブであるため、より自然で流暢な表現を用いて文章を仕上げてもらえます。

採用担当者が1つの資料を見るのは 平均6~10秒程度 と言われています。そのため、魅力に欠ける内容や不自然な表現が含まれていると、採用担当者の目に留まる可能性が低くなります。プロのライターは短時間で目に留まる資料を作成します。

(2) ATS (Applicant Tracking System) 対策
ATS
とは、採用管理システムのことで、応募書類をスキャンして職務内容に一致する特定のキーワードやスキルが含まれているかをチェックします。適切な用語が欠けていたり、システムが抽出できないフォーマットを使用していた場合、書類は除外される可能性があります。結果として、採用担当者の目に触れることさえなくなります。

専門のライターはATSに精通しており、システムを通過しやすい資料を作成することができます。


ライターの方を検索・依頼する際、私は Fiverr というサイトを利用しました。Fiverr はクラウドソーシングプラットフォームで、日本でいうところの「ココナラ」や「クラウドワークス」に似たサービスです。

Fiverrのトップページ

私は Résumé と Cover Letter、さらに LinkedIn のプロフィール作成を依頼し、345ユーロ(約5万8千円)を支払いました。一見、履歴書作成としては少し高額に感じるかもしれませんが、転職によって給与が上がる可能性を考えると、すぐに元が取れる投資だと判断しました。

ライターを探すコツですが、自分の職種をキーワードで検索し、評価が高く、多くの利用者がいるライターに依頼するのが良いと思います。ただし、このような人気の高いライターは納期が長くなる傾向があるため、余裕を持って依頼することをオススメします。

2.4 LinkedInのプロフィールを書く

LinkedIn は、世界最大級のビジネスSNSです。プロフェッショナルなネットワークの構築、記事の投稿、求人検索、スキルや経歴のアピールなど、多目的に活用されています。

LinkedIn のプロフィールは、オンラインの履歴書として機能し、職歴、学歴、スキル、プロジェクトなどを記載でき、Résumé に含められなかった情報を補足します。また、同僚や上司からの評価を追加できる点も特徴です。

LinkedIn を利用すれば、世界中の 採用担当者 リクルーター とつながることができます。特に海外就職を目指す場合、LinkedIn は求職活動に欠かせないツールです。多くの企業が採用活動に LinkedIn を活用しており、候補者のプロフィールを直接確認したり、スカウトを送ったりしています。

また、LinkedIn には求人検索機能があり、地域、職種、企業規模、スキルなど、さまざまな条件で求人を絞り込むことが可能です。さらに、Easy Apply 機能を使えば、数クリックで簡単に応募できる点も大きなメリットです。

私自身、LinkedIn を活用して仕事に応募したり、リクルーターとメッセージのやり取りを通じて企業との仲介をしてもらったりしました。また、採用プロセスの中で、採用担当者が私のプロフィールを確認している場面もありました。


海外就職や転職活動を行う上で、LinkedIn は必須のツールと言えます。アカウントをまだ持っていない場合は、応募を始める前に必ず作成しましょう。プロフィールには、概要、職歴、学歴、スキル、資格、投稿物、受賞歴などを詳しく記載します。また、Open to Work を有効にすることで、リクルーターや採用担当者に仕事を探していることをアピールできます。

LinkedInのプロフィール例

定期的に My Network を確認し、つながりリクエストをチェックして、気軽にコネクションを確立しましょう。また、検索機能を活用してリクルーターや企業の採用担当者を探し、自分からリクエストを送るのもオススメです。リクルーターが扱っている案件とプロフィールがマッチしている場合、メッセージが送られてくることがあります。その際、興味があれば、その旨を返信すればリクルーターが取り次いでくれます。

リクルータからのメッセージ例

2.5 GitHubのプロフィールを書く

ITエンジニアの場合、GitHub のプロフィールを充実させることも重要です。応募時にGitHubアカウントを記載するケースが少なくなく、企業のエンジニアが確認する可能性があるためです。また、GitHubのプロフィールを見た企業から、メールなどで直接連絡が来ることもあります。

プロフィールにスキルや統計情報を掲載する際には、プロフィールジェネレーターを活用するのがおすすめです。「GitHub profile generator」などで検索すると、便利なツールをいくつか見つけることができると思います。

さらに、個人プロジェクト や貢献している オープンソース のリポジトリがある場合は、それらをプロフィールページにピン留めして目立たせるのを忘れないようにしましょう。

GitHubのプロフィールの例

以上が応募前に行うステップです。次から実際に求人探しと応募が始まります。

3. 応募

ここでは求人探しと応募方法について説明します。

3.1 求人の探し方

求人の探し方は、大きく分けて以下の3つがあります。

  • 求人掲載サイトを使用する

  • LinkedIn を使用する

  • 企業サイトから直接応募する

求人掲載サイトでは、IndeedGlassdoor が有名です。さらに、特定の分野に特化した求人サイトもあるため、「<ポジション名> jobs」などで検索するといくつかのサイトを見つけられると思います。

Indeedの求人の例

LinkedIn にも求人検索機能があり、キーワード、地域、経験レベル、投稿日、リモートワークの可否などでフィルタリングできます。また、Easy Apply と記載されている場合は、LinkedIn 上で直接応募できます。必要な情報(連絡先など)と Résumé を添付するだけで簡単に応募が可能です。ただし、手軽に応募できる分、競争率が高く、数日で100件以上の応募が集まることもあります。

LinkedIn で求人を探す際には、地域を指定してタイムゾーンが近い複数の国をまとめて検索することができます。以下がよく利用される地域の例です

  • NAMER: 北アメリカ

  • EMEA: ヨーロッパ、中東、アフリカ

  • APAC: アジア太平洋

LinkedInの求人の例

企業の公式サイトから直接応募することも可能です。公式サイト内に CareersJobs といった項目があれば、現在募集中のポジションを確認できます。

企業の求人ページ例 (https://www.flashbots.net/jobs)

3.2 応募方法

求人ページは、企業ごとに独自のUIになっていることは稀で、多くの場合は、いくつかの応募システムのどれかを利用しており、応募フォームが似ています。

求人情報には、企業情報、企業文化、仕事内容、必須要件、歓迎要件、給与レンジ、福利厚生などが記載されています。

企業の求人例 (https://jobs.ashbyhq.com/flashbots.net/b0fd7aaa-b86c-46b3-bb36-aa260d69d3a9)

応募するには、基本情報、連絡先、SNSアカウントを記載し、Résumé と Cover Letter を添付します。また、いくつかの質問に回答する必要がある場合もあります。Cover Letter は求人情報をよく読み、企業が求める人物像に合うようにキャリアのハイライトや熱意をカスタマイズして提出することを忘れないようにしましょう。

応募フォーム例 (https://jobs.ashbyhq.com/flashbots.net/b0fd7aaa-b86c-46b3-bb36-aa260d69d3a9)

ちなみに、メールアドレスは Gmail を使用することをおすすめします。その理由は、多くのオンライン面接が Google Meet で行われるからです。Gmail アドレスを使えば、面接スケジュールが入ると、自動的にGoogle カレンダーに予定が反映されます。これにより、スケジュール管理がスムーズになります。

応募した仕事の求人情報は、URLを記録しておくことをオススメします。求人情報は、面接時に自分をアピールする際に役立つためです。また、企業が選考フローの途中で募集を停止し、ページが見られなくなる可能性もあるため、PDFやスクリーンショットで保存しておくとさらに良いと思います。

4. 面接

応募後は、企業の採用担当者からの連絡を待つことになります。しかし、応募時点で不採用となった場合、企業から連絡が来ないことも少なくありません。体感では、半数以上 の企業からは連絡が一切なく、さらに連絡が来ても 2~3割 は書類審査で不合格となることが多いです。海外就職では、この最初のステップを通過するのが非常に難しいと感じます。そのため、少しでも気になった仕事には積極的に応募し、数をこなすことをオススメします。

採用担当者から面接の連絡が来た場合、選考プロセスが正式に始まります。私の今回の経験では、選考フローは以下のようなステップで進みました。

  • 採用担当との面接(1~2回)

  • オフライン技術課題(実施しない場合もあり)

  • 技術面接(1~2回)

  • 上級管理職との面接(1~2回)

各面接の結果通知までには 1~2週間 かかることがあり、さらに次の面接の日程調整に1週間ほど要する場合も少なくありません。そのため、選考フロー全体が 数ヶ月 に及ぶことが多いです。また、担当者が休暇中であったり、エンジニアがイベントに参加していたりする場合、その間は面接が進まないこともあります。そのため、選考プロセスはある程度長期戦になると考えておくのが良いと思います。

4.1 面接準備

現地にいない場合、面接は基本的に リモート で行われます。面接で良い印象を与えるために、事前にいくつかの準備をしておくことをオススメします。

(1) 機材の準備
リモート面接で良い印象を与えるためには、視覚的・聴覚的な第一印象に大きく影響を与える カメラの画質マイクの音質 が非常に重要です。鮮明な画質とクリアな音声は、表情や話し方を正確に伝え、信頼感のある印象を与えます。一方で、画質が荒かったり音声が途切れたりすると、面接官が話に集中できず、スムーズなコミュニケーションが難しくなる可能性があります。

ノートPCの内蔵カメラを使用している場合でも、画質が悪い場合は外付けカメラ を別途購入して使用することをオススメします。また、マイクについては、ポップガード付きの スタンドマイク を使用することで、余計なノイズが入りにくくなり、マイクの高さを口元に合わせることで自然な声量で話すことができます。

参考までに、以下に私が使用した機材を紹介しますが、評判の良い他の機材を選んでも問題ありません。

部屋が暗かったり、机の位置によって顔が暗く映ってしまうことがあります。その場合、以下のような ライト を使用すると顔が明るく見え、良い印象を与えることができます。白いライトは顔が白くなり不自然に見えるため、肌色のパターンが多いライトをオススメします。

ノートPCを使用している場合、カメラの位置が低く、下から撮影したようなアングルになってしまうことがあります。これを防ぐために、PCスタンド を使用してノートPCとカメラの位置を高くし、目線が平行になるようにすることをオススメします。

最後に、通信環境 に問題がないか事前に確認しておきましょう。通信環境が不安定だと、お互いに聞き取れない箇所が発生し、スムーズなやり取りが難しくなる可能性があります。

(2) 服装の準備
海外企業で勤務する際は、一部の業種を除き、服装は自由であることがほとんどです。しかし、面接時には フォーマルな服装 を選ぶのが良いと思います。私は、Yシャツ、ネクタイ、ジャケットを着用し、すべての面接に臨みました。

(3) 原稿の準備
この記事をご覧の多くの方が、英語で面接を受けることに不安を感じているのではないでしょうか。私自身も、未だに長い英文を組み立てるのが苦手です。特に、緊張する面接の場では、言いたいことがうまく出てこないことがあります。そこで、あらかじめ原稿を用意しておくことで、考えを整理し、事前に練習することができます。

もちろん、面接中には想定外の質問が出てくることもあると思います。しかし、面接で終始スラスラと話す必要はありません。企業が求めるレベルで英語でやり取りができれば十分です。一番大切なのは、明確に自分の言いたいことをできるだけ伝えることです。頻繁に言葉に詰まったり、内容が二転三転したりすると、相手に正確な情報が伝わらなくなります。よく聞かれる質問を事前に対策しておくことで、自分の情報や熱意を確実にアピールすることができます。

以下に面接でよく聞かれる質問をいくつか例示します。

まず、初回の面接では、ほとんどの場合は「自己紹介」が求められます。また、その後の面接でも担当者が変わることが多いため、再度自己紹介を求められるケースが頻繁にあります。自己紹介では、自分の学歴、経歴、スキルを 4〜5分 で簡潔に説明する必要があります。企業が求めるスキルや要件に合わせて、話す内容や強調するポイントを調整しましょう。

次に、「なぜあなたを雇うのか」といった質問を改めて聞かれることがあります。この場合、求人の要件に合わせて、自分の経験や知識を基に、会社でどのように貢献し活躍できるかを説明する必要があります。

また、「なぜこの会社で働きたいのか」という質問もよく聞かれる内容の一つです。この場合、自分の興味や熱意を述べるとともに、会社の理念やサービスと関連付けて志望理由を説明します。日本企業ほど直接的に志望理由を尋ねられることは少ない印象ですが、なぜその会社に興味を持ったのかを言語化しておくことは重要です。

稀に「将来のキャリアの方向性」について尋ねられることがあります。この質問では、自分が数年後や10年後にどのような姿を目指しているのかを説明します。自分が業界に対してどのように貢献したいかを述べるだけでも良いと思います。

(4) 逆質問の用意

基本的に、各面接ではこちらから質問できる時間が 5分 ほど設けられています。この時間に疑問点や気になることを自由に質問できますが、全く質問しないと、面接官に熱意や興味がないと受け取られる可能性があります。

会社のサービスやプロダクトについて鋭い質問をしなければならないわけではありません。以下に、私が面接でよく尋ねた質問の例を示します。

  • このポジションで、最初の3か月に直面しそうな最も大きな課題は何ですか?

  • 今後2〜3年のプロジェクトは、どのように進めていく予定でしょうか?

  • このポジションの採用にあたり、特に重視するスキルは何ですか?

  • 今後の面接は、どのような流れで進行しますか?

  • チームのエンジニアは何名在籍していますか?

4.2 採用担当面接

1回目の面接は、ほとんどの場合は 採用担当者 との面接です。その後、採用部門の責任者との面接が行われることもあります。

この面接では、十分なコミュニケーション能力があるか、スキルがポジションに適合しているかなどの確認の意味合いが強いです。また、基本的に担当者から企業やポジションの詳細についての説明の時間もあります。

この段階の面接は、事前に用意した原稿を基に説明することで十分に対策可能です。自己紹介や志望動機、これまでの経験について明確に説明できるように準備しておきましょう。

また、希望する年収について聞かれることがあります。給与レンジが求人ページに記載されている場合は、その範囲内で回答するのが適切です。一方で、給与レンジが記載されていない場合は、同じポジションの平均給与を調べ、その情報を基に回答すると良いでしょう。注意点として、あまり低い額を提示すると、その額で確定してしまう可能性があるため、自分が納得できる額を提示することが重要です。

4.3 技術面接

採用部門との面接が終わると、資料や情報がエンジニアチームに共有されます。この際、スキルや経験がエンジニアチームの求めるものとマッチしない場合、この段階で不合格となることがあります。そのため、採用部門との面接での不合格は、面接の出来不出来というよりも、スキルのミスマッチに起因するケースが多いです。

採用部門との面接を通過すると、技術面接が始まります。技術面接にはさまざまな形式があります。以下に私が経験したスタイルを示します。

(1) オフラインコーディング試験 → コードレビュー
3~4日で実装を完了できる課題が提示されます。指定された期間内に実装をして提出します。その後、実装したコードの設計や仕様について面接でエンジニアとディスカッションを行います。

私が経験した課題は以下のようなものがありました

  • 特定のデータ構造を実装する

  • APIからデータをスクレイピングし、条件に沿ったデータを表示する

  • コンセンサスアルゴリズムを使用した分散キーバリューストアの実装

  • P2Pメッセージングサービスの開発

この試験では、単に仕様を満たすだけでなく、以下の点も重視されます

  1. 十分なテストの実装
    コードの仕様やエッジケースへの対応を確認するためのユニットテストがあるかどうか

  2. コメントの記述
    言語の標準仕様に沿ったコメントや、適切な部分で処理の説明や意図に関するコメントがあるかどうか

  3. クリーンで読みやすいコード
    簡潔で分かりやすい設計で実装されているか。ファイルやモジュールの分割は適切かどうか

このような点が重要な理由は、技術力だけでなく、チームで円滑に仕事ができるかどうかも評価の対象となるからです。提出期限内に間に合えば問題なく、提出の速さはそれほど評価されない印象でした。そのため、単に仕様を満たすコードを書くのではなく、実務を意識したコード を書くことが重要です。

(2) ライブコーディング試験
面接中に画面共有を使用し、簡単なコードを実装します。双方向リストなどの 基本的なデータ構造 やシンプルなスマートコントラクトを実装することが多く、前述のオフラインコーディング試験と比較すると、難易度は低めです。

この試験では、以下の点が評価されます

  • 仕様の理解
    面接中に提示された仕様を正しく理解、実装できるか

  • 実装の進め方
    適切な設計やステップで実装を進められるか

  • コミュニケーションスキル
    適切にエンジニアとやり取りができるか

そのため、仕様が不明瞭な場合は、質問して確認することが重要です。また、実装方針をその都度説明しながらコードを書くことで、自身の考えをしっかり伝えながら進めることが大事です。

(3) ディスカッション試験
特定の技術トピックについて、エンジニアとディスカッションを行います。この形式の面接を最も多く経験しました。また、前述の2つのコーディング試験の後に、2回目の技術面接としてディスカッション試験が行われる会社も多くありました。

この面接では、特定の技術について説明したり、課題に対する自分の考えを回答することが求められます。単なるコーディングスキルだけでなく、これまでの経験や知識を総合的に問われる場面が多いです。

例えば以下のようなディスカッションを経験しました

  • 特定の性質を満たす分散アルゴリズムの設計

  • メモリリークに対するデバッグ方法

  • OSスレッドとグリーンスレッドの違い

  • 提示されたOSSコードの説明

  • 自分が過去に書いたコードを説明し、その実装意図や改善点について議論

この面接では、自分の考えを論理的に整理し、相手に分かりやすく伝えるスキルが重要です。特に、過去の経験や知識を活用しながら議論を深めることで、技術的な理解度だけでなく、コミュニケーション能力問題解決能力 をアピールします。

4.4 上級管理職面接

技術面接を無事に通過すると、最後に上級管理職との面接が行われます。この段階では、人事やエンジニア部門の最高責任者、もしくは経営陣との面接になることが一般的です。

この面接は、最終確認的な要素が強いと思います。再度 自己紹介志望理由を説明するほか、条件面の確認 が行われることが多いです。

また、自分の人間性や仕事の進め方に関する質問がされることもあります。例えば以下のような質問が挙げられます

  • チームでの仕事において重視していること

  • タスクの優先順位をどのように決めるか

  • チーム内でトラブルが発生した際、どのように対応するか

これらの質問では、自分の考えや価値観を明確に伝え、チームの一員としての適性をアピールすることが重要です。

4.5 面接後の対応

各面接が終わったら、1日以内に 感謝のメール を送ることをオススメします。この際、単に感謝の言葉を述べるだけでなく、面接中に特に印象に残った内容や、伝えきれなかった部分を補足するのが効果的です。

各面接が終わった後は、結果が分かるまで時間がかかることが多いです。企業によって異なりますが、1週間程度 は待つつもりでいると良いでしょう。稀に面接後に連絡が途絶える企業もありますが、ほとんどの場合は面接後に合否の連絡をしてくれることが一般的です。

もし2週間以上連絡がない場合は、フォローアップメール を送るのも一つの方法です。また、面接中に「いつ頃までに結果の連絡が来るか」を確認しておくのも良いと思います。

5. オファーをもらったら

すべての面接を無事に通過すると、合格通知が届きます。この際、給与や開始日についての調整が行われます。稀に希望する給与の提示を求められることもありますが、ほとんどの場合は会社側から給与案が提示されます。その提示内容に不満がある場合は交渉も可能です。この時、単に自分の希望を伝えるだけではなく、同じランクのポジションの平均給与を調査し、希望給与が妥当であることを説明することが重要です。

また、Offer Letter と呼ばれる書類が送られます。この書類には雇用条件(ジョブタイトル、開始日、給与、福利厚生など)が記載されています。必ず内容を確認し、細かい条件について最終確認を行いましょう。

最後に、双方が条件に納得できた場合、Employment Agreement に署名をすることで契約が確定します。

6. ふりかえり

ここでは、今回の転職活動を振り返り、細かい補足をまとめます。

6.1 コーディング試験対策に関して

技術面接の説明でも触れたように、ライブコーディング試験では難しい問題を解く必要はありませんでした。

ITエンジニアの技術面接対策として、LeetCode などの競技プログラミング的な問題を多く解く方法がよく紹介されていますが、今回の転職活動では特にその必要性を感じませんでした。もちろん、これは私が応募していた会社や分野に依存する部分もあります。中小規模の企業が中心で、ブロックチェーン関連のポジションだったため、汎用的なアルゴリズムよりも専門的かつ実践的な知識やスキルが求められたからです。

とはいえ、双方向リストの実装などを求められる場面もあったため、基本的なデータ構造やアルゴリズムについては、入門書を活用して理解を深めておくことが大切だと思います。

6.2 ネットワーキングやリファラルの活用

就職活動期間中、海外のカンファレンスやハッカソンに参加してつながりを増やしたり、知名度を獲得しようと試みました。しかし、これが就職活動に大きな影響を与えたとは感じませんでした。理由として、仕事を探している会社の関係者に偶然リーチできる可能性は非常に低いからです。

一方で、ハッカソン参加者の中には、この経験をきっかけに新しいビジネスを立ち上げようとする層が一定数存在します。こうした人々とつながることで、仕事に繋がる可能性はあると感じました。

知名度を上げるという点では、英語で良質な記事を定期的に投稿したり、幅広くOSS活動を行う方がより効果的だと思いました。私は以前の仕事でOSSプロジェクトに関わっていましたが、有名かつ大きなOSSに貢献することが、知名度や信頼度の向上に大きく寄与すると感じました。この点については自分の取り組みが不十分だったため、次回の転職活動までに習慣化したいと考えています。

6.3 フルリモートに関して

最近は フルリモート の仕事が増えています。私自身もフルリモートのオファーをいただきました。フルリモートには、日本にいながら働けたり、ワークライフバランス を整えやすかったりするなどのメリットがありますが、それ以外にも海外就職においては次のようなメリットがあると思います。

(1) ビザの必要がない
フルリモートの場合、企業が所在する国に住む必要がありません。現地で働こうとすると、多くの場合、企業の ビザサポート が必要になりますが、ビザサポートを提供していない企業も存在します。そのような企業に応募するのは困難だと思います。(一部のスタートアップでは交渉次第では可能だと思います)

一方、アメリカなど一部の国では、現地の大学や大学院を卒業すると一定期間就労できるビザを取得できる制度があり、ビザサポートがなくても就職できる方法があります。そのため、まず 留学 をしてから就労するという選択肢も考えられます。しかし、留学には費用がかかったり、数年間のブランクが生じたりするなど、いくつかの壁があると思います。

一方、フルリモートであればビザの心配が必要ないため、これらの問題を気にせずに応募ができ、企業の選択肢が広がります。

(2) 世界中の仕事を探せる
実際に移住する場合は、言語や社会制度の壁があり、移住先の国の候補が限られると思います。しかしフルリモートなら、時差の問題さえクリアできれば世界中の企業を対象に仕事を探せるため、より幅広いキャリアの可能性を追求できます。

6.4 時差に関して

選考段階で、時差が懸念事項として挙がることが多いです。フルリモートであっても、明確に 特定のタイムゾーン での居住を要件として記載している場合もあれば、チームのタイムゾーンに合わせればOKという場合もあります。私が現在働いている会社は後者で、メンバーの半分がベルリンに住んでいるため、基本的に仕事はベルリン時間を基準に進められています。そのため、ミーティングは日本時間の夜に行われることがほとんどです。

以前、私はベルリンと同じタイムゾーンであるセルビアの会社で、日本から勤務していたことがあります。そのため、ヨーロッパの会社と面接する際に時差の話題が出た場合、この経験を説明していました。

経験上、ヨーロッパのタイムゾーン は比較的調整しやすいと感じています。例えば、中央ヨーロッパ時間の10時~18時は、日本時間の18時~26時に相当します。夜型の人にとっては、それほど負担ではないかもしれません。一方、アメリカの場合、西海岸でも東海岸でも現地の昼間は日本の深夜から早朝にあたるため、非同期コミュニケーションを重視する会社でなければ調整が難しいと思います。

面接前には、どのタイムゾーンを基準に仕事が進められるのかをあらかじめ調べ、日本時間で問題なく働けるかを想定しておくことが重要だと思います。

7. あとがき

私の今年の海外転職活動経験をもとに、ITエンジニアとしての海外就職活動について説明しました。今の会社に入社したことで、自分が興味のある分野の仕事に取り組めるようになりました。また、仕事の内容がよりハイレベルになり、意義のあるサービスに貢献することで大きなやりがいを感じています。さらに、給与が上がったことで、精神的な余裕も得ることができました。

海外就職は、確かに日本での就職活動と比べると難易度が高く、長期戦になりがちです。しかし、入念な準備を行いながら根気強く応募を続ければ、いつかは希望のポジションを得られると思います。この記事が海外就職を目指す方の参考になれば幸いです。

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