誰かにカンケイあるテレビ。私も。
ここ数年、テレビ埼玉(テレ玉)の元日恒例の特別番組「埼玉政財界人チャリティ歌謡祭」の番組収録を観覧している。
Twitterでも、歌唱する出演者の顔ぶれ、選曲、番組が醸し出す雰囲気…すべてが度肝を抜く内容。埼玉県でしか放送されない番組にも関わらず、そして在京キー局が元日の夜に強力な全国ネット番組を放送する中、トレンド1位を獲得するスーパーローカルコンテンツだ。しかし、番組は「チャリティ」の名があるように、「埼玉県文化振興基金」へのチャリティが目的だ。が、Twitter上では↓のように表現されてる。真摯な目的があるのに。
番組収録の観覧のきっかけは、とある優しい友人が「こういうの…お好きですよね?」と数年前に声をかけて下さったのが始まりだが、以来数年、師走を前にした我が家の恒例行事と化していた。が、ここ数年は公開収録は中止。2021年は「総集編」を、2022年はテレ玉本社スタジオでの非公開収録。そして今年、実に3年ぶりの公開収録となった。但し会場はこれまでの大宮ソニックシティ 大ホールが改修中のため、JR南浦和駅に程近い、さいたま市文化センター 大ホールで行われた。
収録レポを書くわけではない。本年(2022年11月収録、2023年元日放送)に関しては「マイナビニュース」はじめ数社の取材が入っていたようなので、そうした記事を読んでいただきたい。
今回、マイナビニュースはかなりの記事を出稿している。
そして、新聞社も話題にしている。こんなことは今までになかったと思われる。
入場時にはパンフレットとともに、テレ玉のタイムテーブルが配られる。クリスマス風のデザインだが、元日の「チャリティ歌謡祭」の紹介もされている。そのタイムテーブル表紙一番上に記されているのが、テレ玉のキャッチコピーだ。
「あなたにカンケイあるテレビ」
この言葉は大変重みがある。テレ玉の番組を見ようと見まいと、このキャッチコピーを見た人に、テレ玉は「あなたは関係あるんですよ」と宣言しているのだ。チャリティ歌謡祭」を見て、Twitterで呟いた人とは、もはや関係性が出来上がっているというのだ。
本当にカンケイはあるのか
だが、大都市圏…東京のTV局が映るエリアに於いて圏域の、どこの系列局にも属さないテレ玉には、そうそう用がない。でもタイムテーブルを眺めるに「関係ない」とは言い切れない。お笑い好きなら「いろはに千鳥」に「それゆけ!大宮セブン」に「鬼丸テレビ」。公営競技に興味があるなら、月曜から日曜までの帯番組「BACHプラザ」がある。自社制作番組以外、地方局が制作した番組なら「水曜どうでしょうClassic」(北海道テレビ放送)に、関西発の「上沼・高田のクギズケ!」(読売テレビ)や「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送テレビ)、「あんぎゃでござる!!」(KBS京都テレビ)がある。スポーツはもちろん地域スポーツ応援「ライオンズチャンネル」に「REDS TV GGR」がある。地域の情報が知りたければ平日夕方の「マチコミ」続く「NEWS545」だ。そこからさらに続く夕方6時15分からのアニメゾーンは2022年12月現在、月曜から順に「めぞん一刻」「ベルサイユのばら」「るろうに剣心」「宇宙兄弟」「シティハンター2」だ。どうだあなたはカンケイ性が築けたか。
カンケイないとは言わせない番組もある。
しかし、さまざまなジャンルの番組名を並べたところで「いや、私には…」という向きもおられましょう。しかしこのキャッチコピー登場以降、テレ玉が開票速報番組につけたタイトルは「あなたにカンケイある選挙」だ。投票権を有していれば、いや有しておらずとも埼玉県に暮らしていれば「わたしにカンケイない選挙」とは言い切れない。
「見たい、が世界を変えていく」
これほど明確に、自局の立ち位置と存在意義を明確にした言葉は、2010年代に日本テレビが掲げたコーポレートメッセージ「見たい、が世界を変えていく。」に匹敵するのではないかと思っている。日テレ局内のエレベーター、モニターテレビにこのメッセージと映像が流れてきた時、私は、感動するようなことはなかったが「そうだよなぁ、そうなんだよなぁ」と、妙な納得感に包まれた。
テレビという仕組み、そして語源の「テレ・ヴィジョン」(遠くのものを見る)を忠実に捉え、そして一歩先に進めた言葉である。同様にテレ玉の「あなたにカンケイあるテレビ」は、手法は違えど視聴者に一歩近づいたリアリティのある言葉なのだ、と勝手に思っているのだ。
そしてカンケイは向こうから固めてきた
「チャリティ歌謡祭」に話は戻る。公開収録は、出場者に「カンケイある」人々が様々な理由で観覧・応援にやってくる。しかし、それとは別に一般公募枠で会場に足を運ぶ人がいる。彼ら彼女らは自らの意思でテレ玉とのカンケイを強固なものにしている。
そしてテレ玉は、そうした「チャリティ歌謡祭ファン」に対し、更なるカンケイ性を構築しようとしている。昨今の言葉でいえばタッチポイントとでも言うべきか。
今年(2022年)大晦日の夜8時、テレ玉は新たなコンテンツを関東平野に放つ。それが「大晦日職人歌合戦〜2022年もおつかれさまでした〜」なる番組である。
NHK紅白歌合戦の真裏で「歌合戦」を名乗る番組の登場は1980年代中盤にフジテレビが放送した「世界紅白歌合戦」以来か。いや、いつ以来かはどうでもいい。テレ玉は1年を「政財界人」の歌で始め、最後を「職人」の歌で締めくくることが明らかになったのだ。どう考えたってセットで視聴するものだろう。脅威の2days公演。編成とはこういうことだ。
思い返せば2018年の元日、私はさいたま市内のホテルに宿泊し、駅ナカの店で買い求めた寿司やオードブルを肴に、前年11月にソニックシティで観覧した「チャリティ歌謡祭」を視聴したことがあった。大人になって初めての正月ホテルステイがこれだというのは、実に誇らしい。
しかしその頃に「大晦日職人歌合戦」があったら、私はきっと大晦日から宿泊して視聴し、元日は大宮の氷川神社に参拝し、夜に再び客室のテレビを地デジ3chに合わせて「チャリティ歌謡祭」を視聴していただろう。つまり年末年始をさいたま市で2泊だ。あれだ、年末の東京駅でインタビューを受けたい。年末はどちらで過ごしますか?「さいたまです」。そう答えてから新幹線に乗って大宮で降りるのだ。
放送作家の仕事を四半世紀余り営んでいるが、私はテレ玉の番組に一切関与していない。他局で関わった番組がテレ玉で放送されたことも多分ないと思われる。それでも「チャリティ歌謡祭」を観覧し、自身のnoteにテレ玉テレ玉と書いている。これで私も「テレ玉にカンケイある人間」だ。あとは、狭山茶を淹れて十万石まんじゅうを食べるのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?