『巻き戻し』を読んで
こんにちは。高校5年生です。
一昨日、『小説現代』を買いました。発売日当日に3店舗書店を回ったものの見つからず、2日後に再び訪ね歩き、3店舗目の書店で見つけました。比較的大きな乗り換え駅内の書店に行ったところ取り扱っておらず、「うち(地元)、どんだけ田舎なんだ……」と肩を落としました。
やっと手に入れて読んだので、今回は久しぶりに読書感想文を書いていきます。今回取り上げるのは『巻き戻し』。四千頭身の石橋さんが書いていらっしゃいます。ここからはネタバレを含みますので、読後にご覧いただくことをおすすめします。
さて、感想を書いていきます。完全に私の主観なので、ちょっと批判的なことも書くかもしれません。「素人が何か言ってるよ」と思ってお許しくださいませ。
読み終わった直後はまだ脳内が混乱しており、「着地が決まった!!」という感覚はありませんでした。ただ、時間を置いてみると、普段小説を書いていない方がここまで仕上げられるってすごいことだと気づきました。書き下ろしの短編が掲載されている方、6人ともすごいです。劇団ひとりさんとゾフィーの上田さんの対談を読んだときも感じましたが、芸人さんは芸術家みたいなところがあるんだろうなと思います。
『巻き戻し』を読んで面白かったポイントは2つあります。1つは、女子の面倒くささがリアルな点です。本当にいそうですし、実際筆者の周りにもいたのではないでしょうか。ただ、こういう女子特有の気質を嫌がる女子は一定数おります。私が中高生だった頃は作中で描かれているような女子の集団が学年を牛耳っていたものの、空気のように佇んで距離を置く女子もおりました。慶一は陽キャ女子が取り巻いていたので、後者の女子は目に入らなかったのかもしれません。
周りを敵に回さないように行動する慶一の姿は、私の中学時代に重なりました。集団に馴染めなかった私は、好かれるのは無理でも嫌われたら終わりだという考えから、とにかくいい人でいた記憶があります。あれは演技だったのか、それとも素だったのかも自分でははっきりしません。慶一と違う点は、慶一は行動によって好感度が上がっているものの、私は上がるわけでも下がるわけでもなかったところです。「ただ(都合の)良い人」になってしまって、話したこともない人に教科書や体操服を忘れたときだけ喋りかけられたり、誘導されて面倒な役職を押しつけられたりしておりました。そういう意味では慶一は運が良かったというか、賢かったように思います。
もう1つは、例えがクスッと笑える点です。Twitterにも書きましたが、石橋さんらしかったです。女子の追及を「記者」としたり、心の変化を植物の芽や花になぞらえたり。P.087下段の「○○男」シリーズも好きですね。ここは「クスッ」ではなく「フフッ」と声に出して笑いました。
私は趣味で小説を書いていたとき、笑いのポイントを一切作らなかった(作ることを考えていなかった)ので、こういう遊びを入れる書き手の方には余裕を感じます。
共感できるポイントはとても多かったものの、疑問符を浮かべるところもありました。特に慶一が社会に出た後のパートは急に大人になって登場人物が変わったからか、途中で意味が分からなくなり、理解できていた部分まで戻って読み返すことがありました。だからタイトルが『巻き戻し』なんですか?って言いたくなります(笑)。
全体的な感想としては、小説のプロではない方が書き下ろした作品だということを踏まえると、ここまで仕上げていることに尊敬します。一方で、私にとっては少し説明くさい感じはしました。プロでもないのに偉そうにすみません。何でしょう、もっと読者を信用して欲しい気がしました。
「映像がないんだから、言葉で説明し尽くさないと伝わらないだろ?!」という意見も間違いではありません。ただ私は、読者が物語についていくのに最低限必要な情報だけ与えて、後は読者の想像力に任せるような小説が好きなので、読んでいて「うん、それは何となく分かりますよ」と感じる箇所がところどころありました。はい、これは好みの問題です。何度も繰り返しますが、ちゃんと1つの作品として完成されていることは本当に尊敬します。
ちなみに私は文芸部に所属し、顧問の先生に小説を添削していただいていた頃、言葉が足りず意図が伝わらないことをよく指摘されておりました。私としては読者の想像に任せるつもりだったのですが、読者が書いて欲しいところを書かず「想像して!!」と言うのはいささか傲慢だったかもしれません。
『巻き戻し』も、こうして『小説現代』に掲載されているということは編集部の方々に認められたということなので、私の感想は忘れてください。
以上、「『巻き戻し』を読んで」でした。
最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
次の投稿でお会いしましょう!