2024年広告総括レビュー~広告最強ランキング、混沌、怒り、そして……~
2024年の広告は激動であった。
本題は後に語るが、今年も大量の広告を見る事が出来た。広告を見るやきそばが2023年12月~2024年11月期のまとめ、総勢613455字+αから、2024年の広告を今年も振り返ってランキング形式で紹介したいと思う。
・2023年広告のあらすじ
2023年は3月頃に発生した無料1000連ガチャブームというプレゼントインフレの加速、生成AI技術の一般化が大きなターニングポイントと言えるだろう。2024年広告環境においても大量ガチャ=1000回以上という風潮が出来上がり、コストカットのためAIを活用した広告が増加した。
コミュニティノート機能の実装やアドブロッカー対策の明確化など広告を見せる側とサービスを享受する側の対立が可視化されつつある中、環境を支配したのは単純に大量の紹介すべき商品が存在するDtoC(Direct to customer=顧客に向けて直接商売を行う)のショッピングサイトと、生成AIを最も分かりやすい形で活用したオタ恋、そしてそれに追随する各社の個性を押し付けるゲーム広告たち、という構図になっていた。
だが、2023年末期はそれらの急激すぎる環境の変化にやや疲れが見られていたようにも思う。スパム投稿やブラクラ広告などそもそも広告に触れる事すら危険な例も増えていき、広告に対する心証が悪化し続ける末法的な状況から、2024年の広告振り返りが始まる。
より詳しくは昨年の振り返りをご覧ください。
・2024年広告ダイジェスト
・2023年12月
『聖闘士星矢レジェンドオブジャスティス』や『モリノファンタジー』など、同一タイトルの広告物量戦が話題になる。この単一タイトルがリリース直後に大量の広告を発出する初動戦略は2024年全体に見受けられる流行戦術となっていくので、よく覚えておくと良いだろう。
今にして思うと闇バイトの募集告知だったんだろうなと思える怪しげな求人広告もX上で確認されており、激動の2024年を予感させる不穏な年末だった。
・2024年1月
星矢ジャスティスが119作もの広告をリリースして強力なスタートダッシュを切るが、その隣で『キノコ伝説』の広告が始動。第一のテーマソング戦法「キノコは勇者や」を筆頭に、生成AIを活用した広告や有名ゲームのタイトルロゴに酷似したパロディ広告を多数リリースしていた。
2024年内にしばしば話題になっていた悪質広告である『スターフェイト』の広告が登場したのも1月だし、IYAGAMESが『職場少女fighting!』をリリースしたのも1月。まさしく一年の計は元旦にありという言葉を実践した形になる。
2024年全般に言える特徴として、トレーディングカードゲームの広告やそれに付随するオリパ(オリジナルパック)の広告が多かったのも1月から見受けられた特徴だと言えるだろう。
・2024年2月
2024年広告界隈流行語大賞と名高い「キノキノも遊ばない」が始まり、テーマソング『キノコ勇者』も合わせて日本国内にキノコ伝説ブームを巻き起こしたのがこの月。
また凝った映像を作って耳目を引こうと考えた『パニシング:グレイレイヴン(以下、パニグレ)や『Hero Wars』は、2024年の超ハイクオリティ広告ブームの嚆矢であったようにも見える。Herowarsに関してはまるでウソなのだが、パニグレに関しては後の鳴潮に引き継がれた広告ノウハウも多い事だろう。
『エバーテイル』の再来を予感させた『東京ディバンカー』という逸材もいたが、後に上手く一般的な女性向けゲームとしての人気を獲得したようである。怪しい広告界隈というドブ沼にいても良い事無いし、ホラー広告をやりつつも真っ当なゲームとしての地位を確立したのはすごい。
・2024年3月
2024年1月にリリースされた『パルワールド』の影響か、ポケモンをパクったように見える広告が増加したのがこの頃。
その上で詐欺広告がX、instagram、Facebookなどプラットフォーム問わず増加し、前澤友作ら投資家系インフルエンサーが動いたような話が見受けられた。現在第二次の提訴を行っているが、Facebookを見るに投資詐欺広告がはびこっている現状は変わらず。
しかしキノコ伝説は相変わらず強くて、キノキノも遊ばないがバカウケした所を見た所から即座に「キノキノは遊ばない」という精神的続編の広告を登場させる辺りやっぱりやり手なんだよな。
・2024年4月
ラストウォー、覚醒。2024年の広告でやっぱり印象に残ってるのって『ラストウォー:サバイバル』なんじゃないでしょうか。地上波広告にゲートをくぐる広告を持ち出した功罪はあまりにも大きいし、「ラストウォーは詐欺じゃない」は第二の流行語と言える。無論キノコ伝説もそれに対抗してか新たなMVとして『キノコ大解放』をリリースし、ゴールデンウィークに繋げて広告の初動戦略を完遂。
それ以外にはほぼ完璧にアフターコロナ的な認識になったせいかカードローン系の広告が爆増し、X広告がローンだらけになったのもひどかった。全部ブロックしてやってもよかったのだが、広告を見ている人間として観測のために残していました。
個人的には広告素材を一新して美少女ゲームっぽい見た目の広告に転生した『三国合戦ラッシュ』とか、超美麗な映像で勝負しに来た『無期迷途』ももっと評価されて良いと思うんですけどね。いずれもタイトルがマイナーであるせいで話題になりきらない。
・2024年5月
なんか知らないけど5月ってパクリ広告が増えるんですよね。広告を見るYAKISOBAでは勝手に5月~6月はパクリの季節と呼んでいるんだけども、本当にこの梅雨の時期はパクリが多い。各社法務部なり何なりはこの時期ちゃんと広告をチェックした方が良いと思います。
TemuもDtoC広告(Direct to Customer)広告では支配率が異様に高くなり、真っ当な広告市場でもさすがにヤバいと話題が出るようになったのもこの月の特徴。昨年はバラバラにやってきていたDtoC広告が概ねTemuに合流したような感覚がある。
2024年広告で地味ながら強い印象を残す『異世界のんびりライフ』が初登場したり、頻繁に野外広告を行う星矢ジャスティスって実はすごいんじゃね? と再評価が進んだのも5月の特徴。でもラストウォーは実際に開催してないキャンペーンを「※この動画はイメージです」の一本で広告にしてきたのはさすがに一番ヤバかったけどね。
・2024年6月
動画や画像の中に本編の動画を入れるピクチャーインピクチャー形式、いわゆる違法視聴スタイルの広告が流行し始めた。これでチンコをデカくする手術だのエロ広告だのをAI検閲をスルーして突っ込むような手口が常套化して、2024年の広告の治安は悪化の一途を辿った。
そもそも『メンズクリア』や『アトムクリニック』のような露骨な美容外科系の広告がぐっと増えたのもこの頃くらいからだと思います。美容外科系の広告は例外的に全て人間のチェックを通さないと広告出来ないようにしても良いんじゃないの? それか動ありが語っていたYoutubeアダルトを別に作ってそこに隔離する案など、そういう個別対応が本格的に必要な類の広告だと思います。
この辺りからゲーム広告界隈もキノコ伝説モデルの広告方式を早速パクリ始めたのも大きな動き。具体的には『進化!大食い龍』が最初期のキノコ伝説リスペクターになり、一時の魔剣伝説モデル並の流行を見せる前兆となっています。偽パズル系広告で話題になった『主公、走れ!』も中々の逸材。
また、Xの広告にGoogle Ads経由の広告が混じり始めたのもこの頃。当時は消せないしブロック出来ない広告として話題になりました。
・2024年7月
もう2024年の広告はキノコ伝説とラストウォーの一騎打ちかと思われた最中、クオリティでぶん殴るタイプの広告筆頭である『ゼンレスゾーンゼロ』が登場。それ以外にも『鈴蘭の剣』、『AFKジャーニー』など、広告本編のクオリティが大きくインフレした月となった。
しかしその反面、生成AIを通す事によってパクリを行った『異世界のんびりライフ』、主人公が明らかに髪の生えたサイタマでピンク髪のフリーレンがいる『ゼロから勇者』、夏祭りイベントと称して柏木由紀コラボと無料4000連コラボで無料ガチャのベアを果たした『キノコ伝説』、桜井日奈子とのコラボを果たしつつ懐かしの失敗広告をリリースした『おねがい社長』など、夏休みシーズンに向けて改めて広告戦線が拡大した印象も強い。
・2024年8月
広告のクオリティが高くなった結果、強い摑みが必然的に求められるようになったのが8月。スマホを空に投げる『釣りの達人』、突然円安を語りだした『鈴蘭の剣』、倒すべき敵としてエロバナーを表示する『シンギュラリティ×ラブストーリー』などが目立った。
その中で『スターフェイト』が2024年パリオリンピックに便乗した広告をやっていたのは中々終わってるなあと思います。
健全な広告の中ではマクドナルドの『マクドは大変なものを作っていきました』が大ブレイクしたのが大きな動き。これが大企業のネットミーム広告を増加させるきっかけになった。
・2024年9月
東京ゲームショウを筆頭にリアルイベントが増加。ICG MUSIC FESやキノコ伝説のファン感謝イベントなど、広告活動を行う上でインターネットに留まらなくなってきたのは大きな動きと言える。
ヤバかったのは『天宮の冒険』で、直接DMでメッセージを送ってアプリをダウンロードさせようとするとか、アカウントが凍結した時のために20個超の公式アカウントを用意したとか、ChatGPTを活用したメッセージ量産術も含めて暗黒のAI活用を存分に見せてくれた。生成AIの活用例ってポジティブな話ばかりが出てくるけども、こういう使い道がなされるのも間違いないんすよね。
個人的にはこの辺りから、生成AIも使わない、いわゆる何百連ガチャという広告の常套句も使わないで延々と茶番広告をやり続けてきた『Herowars』の異常性も明らかになってきたように思う。延々と新しいストーリーを生み出し続けて収益を出しているHerowarsって何?
・2024年10月
日清のDaisuke、マクドナルドは今よりダブチ食べ美、HPのSEIKIN陰謀論などネットミームを活用した広告が増えたのがこのタイミング。ちょうど8月から2ヶ月、足が速い企業ならそういう方針にしてくれと準備出来るラインかもしれません。
それ以外にも『Elona2』の音楽無断利用、『TopHeroes』の悟空パクリ、『スターフェイト』の露骨なポケモンパクりなど、ロクでも無い広告が増加した。反面、『レゾナンス:無限号列車』の広告は発想がかなり良かったし、『異世界のんびりライフ』の生成AIアニメ、料理シーンを活用した3DCGアニメも着眼点が良かった良い広告だった。
ところで真っ当な広告という面で言うと『TAKE and GIVE NEEDS WEDDING』の広告は真剣に見て欲しい内容です。映像が死ぬほどカッコいいぞ!
・2024年11月
『星の翼』は機動戦士ガンダムEXTRAME VS勢の取り込みを狙った広告を展開。ゲームセンターのエクバ筐体の隣にポスターを展開する強気の姿勢、エクバ産のネットミームをふんだんに活用したり、元ネタのゲーム側のインフルエンサーに絞った広告展開など、明確にターゲティングを絞った戦略が話題になった。結局バンナムが星の翼をどう見てるかは分かりませんが、現状はセーフっぽいです。
ただそれを除くとモザイク込みで女性の裸体が広告にて放映された上に、一般人の陰謀論や詐欺広告、パクリ広告は変わらず流れているという、明確に広告の底が抜けてネクストレベルに到達した月だったと言える。X自体のシステムが端境期だったという説もあるが、それを言い訳に出来るのかというレベルのモラルハザードが起きていたのは間違いない。そしてこの傾向は2024年12月の前半でも継続する事になる。
・広告2023年組の経過観察
・大半の高Tierタイトルが2024年広告ランキングでは脱落
昨年の広告環境も表現の過激さが増していたが、2024年の広告環境はその比では無かった。昨年TopTierに属していたオタ恋、ザ・アンツ、EVONY、パズル&サバイバル、トップウォー、荒野行動、マフィアシティなどの猛者は軒並みランキング圏外として良いほど見かけなくなってしまった。
特に荒野行動やEVONY辺りの評価が落ちているのは往年の広告環境を見ている人からすると驚愕せざるを得ないだろうが、実際に今年の広告で彼らが話題に挙がった日があっただろうか? 単にコラボするだけ、偽ゲーム広告を考え無しに行うだけでは一切目立てなくなったのではないだろうか。
オタ恋に関してはX広告ではなくYoutube広告を主体にするという方針転換があったとはいえ、昨年以上に各社が生成AIを活用して広告を行い始めたことによって相対的に目新しさが薄まった感は否めない。ネタ画像を作ればウケる、という段階は終わってしまったので、次の手としてYoutube広告を強化する路線に行ったのは賢い選択だと思われる。
・生き残った高Tierタイトルの特徴
逆に、この荒波を生き残った高Tierタイトルというのも存在する。ダイジェストを見ていると分かる通り、Herowarsとおねがい社長に関してはなおも古参勢として生き残っているように自分は思う。
彼らに共通する特徴は、新しい広告手法に対して積極的に取り組みつつも自身の強みを見失っていない事だろう。たとえばHerowarsは生成AIが出ても、あの数字を比べる偽ゲームの表現を研究し続けて独自の高みに上り詰めている。おねがい社長は桜井日奈子コラボという既存の流れに近いコラボを行いつつも、『転生したらスライムだった件』などのアニメ系タイトルとのコラボを実施したりして別方向のプレイヤーを呼びこもうとしている雰囲気を感じ取れる。もちろんおねがい社長特有のAI美女や偽ゲーム広告なども見かけるので、既存の流れに加えて新しいチャレンジを行っているのだ。
それと先述のタイトルを比較すると、荒野行動は既にコラボしたことのあるタイトルとのコラボが多く、目新しさが薄かった。EVONYに関しても迷走して射的を行う偽ゲーム広告を擦る事しか出来ず、マンネリを感じざるを得ない。
・新規タイトルへの世代交代/新規タイトルへの転生も増加
また、そもそも新規タイトルへの世代交代を行いたい時期だったのも間違いない。昨年ランクインした『X-ヒーロー』を出していたBINGCHUAN NETWORKはスターフェイトという新作タイトルで勝負しているし、阿波羅テクノロジーが出していた『ダークテイルズ』は『タマモンワールド』が新作タイトルに当たる。
既存のタイトルを運営する以上に新規タイトルを出して販路を拡大したいという流れは今年登場したばかりの『キノコ伝説』にすら当てはまる話で、キノコ伝説をリリースしたJoy Net Gamesは『マージから夜ふかし』、『バンバンヒーロー:社畜の逆襲』という新規タイトルをリリースしている。ただ、残念ながらそれらのタイトルの話題はテーマソングや初動の広告大量発出戦法以外ではあまり聞かないように思う。
これが比較的上手く行っているのが『おねがい社長』で、IYAGAMESは2024年に『職場少女fighting!』、『異世界のんびりライフ』、『恋は職場で』という3タイトルをリリースしている。職場少女に関しては先日サービス終了が発表されたが、異世界のんびりライフに関してはヒットしている所を見るに充分な戦果だと言えるだろう。
商材であるゲームの寿命自体が短い、あるいはダメだったら即座にサービスを畳むやり口から、むしろこれまで同一タイトルが長期的に支配的な広告していたのがレアな光景だったのかもしれない。
・2024年の広告トレンド
・違法広告
広告に関しては毎年違法な物がメインじゃないかと思うかもしれないが、今年は特に異常なほど詐欺広告が溢れ、三次元女性のポルノ、闇バイトへの導線など悪質な広告が急増した。それこそあらゆる悪事が広告に集合しており、完全に広告のモラルの底が抜けた上でその底が抜けた先の裏世界で殺し合いをするような情け無用の世界だった。
さすがに殺人教唆の広告までは見ていないが、闇バイトの件を考えると上っ面だけ求人広告を取り繕って実は人殺し、あるいは人殺しの手助けをするような依頼がありました、なんて可能性もあるのが今年の広告の恐ろしい所である。ここまで異様な状況になりつつも対策の手は回っておらず、無法地帯ぶりは昨年以上に増している。
ポルノ広告と言う所ではコミックキューンの書店用広告『エルフ先生のトイレはどこですか?』でアニメ風の美少女が小便を放出するような演出の広告も登場し、撤去された事件もあった。けしてこの流れはインターネット広告に留まる所では無いのは付記しておきたい。
二次元アニメ・ゲーム広告の表現の過激化が進んでいるというのは半分は正しい見方であり、半分は誤りであると思っている。書店という誰の目にも入る場所に配慮の無い広告が存在していたのは事実であるし、現にインターネットでも性的アピールの激しい広告自体は多数存在する。
ただし駅中に掲示されているブルーアーカイブ、NIKKEの広告などはかなり配慮された広告になっており、それらの駅中広告に関して悪質な性的表現がある! と主張するのは無理筋である。強く批判すべきはいちかなどを筆頭とした個人Fantiaに誘導するポルノ広告、アトムクリニック等美容外科系のグレーなラインを踏んだYoutube広告、2023年にウルフゲームがやっていた獣人の胸を舐め回す様子を描いた広告などの方が適切だろう。
自分が見かけた闇バイトっぽい広告はこのような物とか。最初にLINEに誘導してくるタイプの広告はかなり怪しいし、リンクを踏んだ瞬間にブラクラに飛ばしてくるタイプの広告も多数見受けられた。
詳しくは以下の記事を参照。これは露骨にダメそうな広告例だが、もっと真っ当なビジュアルの闇バイト系求人広告も相応にある事だろう。
・生成AIの活用
広告において生成AIの活用はより積極的に進んだのは事実で、様々な企業がどこかしらにAIを使用していた。詳しくは別にまとめた記事があるので、そちらを参照して頂きたい。
ただ今回問題にしたいのはAIの活用例こそ増えているが、悪質な使用例に対してどう対策していくのか? という話は遅々として進んでいない点である。これは上記の違法広告の隆盛と相まって、広告世界を無法地帯に変貌させた一つの原因と言って良いだろう。
・複数アカウント戦略
昨年から見受けられた傾向ではあるが改めて。広告用のアカウントをいくつか分けて用意することによって、削除、ブロックされても再度広告出来るのだ。
これで複垢を用いて削除、ブロックされても継続的に広告を行う戦略が違法広告の温床だったように思う。開き直って20個近く副垢を用意している天宮の冒険はとにかくとして、アトムクリニックやメンズクリア、普通のゲーム広告まで幅広く複数アカウントを用意して広告を行う事が当たり前になっている。
広告を規制するなら、まず企業ごとに広告用に取れるアカウントは一つまで、その後一定期間の不正行為の無い運用を確認してから申請後に新しいアカウントを取得できるというルールを制定した方が良いと思うのだが、それはダメなのだろうか。広告する上で無数にアカウントを取得しなければならない理由でもあるなら是非教えて欲しいが、現状は複数アカウントを許容するデメリットの方が勝り始めているように思う。
・キノコ伝説モデル(2024年全般)
2023年に流行した阿波羅モデルをそのままブラッシュアップしたのがキノコ伝説モデルである。当時の大量ガチャラインだった2000連ガチャを上回る3000連ガチャ、テーマソング戦略、偽ゲーム、偽ステージ広告に加えて、「偽タイトル画面広告」と「サービス開始前の著作権違反広告」、「韓国版との比較」「インフルエンサーへの多面展開」を加えた全マシセットである。
初動戦略に関して詳しくは以下を参照頂きたい。
ちなみに「初動戦略に関して」と付記したのは、キノコ伝説モデルはこの記事を書いた後にさらにグレードアップしているからだ。有名IPとのコラボを毎月行い、リアルイベントを開催する事による既存プレイヤー層の囲い込みなども追加で行っているためである。
この辺りの個性は明らかに荒野行動のコラボ連打であったり、ゼンレスゾーンゼロなどMiHoYoのゲームが行っていたリアルイベント施策から参考に着想した物ではないだろうか。つまりキノコ伝説が大ヒットした後のスケジュールもある程度抑えていて、2024年全体でキノコ伝説を売れ筋タイトルにするだけのルートを最初から構築していたと考えた方が妥当である。
キノコ伝説モデルに関して初動だけパクったタイトルは『ちび勇者の伝説』や『進化!大食い龍』など多数あるが、中期戦略まで構築出来ているタイトルは現状存在しない。
・転生系広告(2024年1月~2024年3月)
広告を大量に作る上で、広告自体を過去に作った物から引用して少し手直しするだけで広告しているパターンが見受けられた。
確かにアピールすること自体が一切一緒であるならば、わざわざ新しく広告を作る必要は薄いだろう。しかし、だからと言ってここまで一緒の物を使う事に意味があるのだろうか?
売れた広告の再利用だとしたら多数の人間に見つかっているからすぐにバレるだろうし、以前ダメだった広告をもう一度繰り返して上手く行く例はよほど最初に顧客に届いていなかった時だけだろう。
ちなみに、ゲーム自体を別のタイトルとして再リリースする例も見受けられた。広告だけ多少作り直したとして、商材自体が一緒ならば相当なコストカットになるだろう。
ただし、それにしてもタイトルとほかの要素を少し変えるだけでそんなに売れるかは疑問が残る。
・超ハイクオリティ広告(2024年7月~)
悪質な広告が増える一方で異様に高いクオリティの映像を放映して見る者を感動させる方向に振り切った広告が増加したのもまた事実である。代表例としては『ゼンレスゾーンゼロ』、『鳴潮』、『無期迷途』、『鈴蘭の剣』、『ドールズフロントライン2』、『TAKE and GIVE NEEDS WEDDING』などを例示したい。
海外のスマホゲームに比べて日本のゲームは遅れている! みたいな論が出てきて日本のゲーム制作者が怒っている様を見受ける機会もあった。確かにゲーム本体のクオリティだけで言えば日本のゲームも充分良い物が揃っていると思う。しかしこと広告という面において、素晴らしい映像を充分にアピール出来た国産ゲームがあったかと言えば正直な話自分は一つも思い出せない。
広告が全ての価値を決める訳ではないが、キャラクターをより良く見せる方法、より良いプロモーションを行う方法と言う面で日本のゲームは何か進歩があっただろうか。
映像表現という面においてもHoYoverse系のタイトルなら原神、崩壊3rdの時代から研究していた訳だし、鳴潮をリリースしたKUROGAMESは2022年頃からパニシング:グレイレイヴンで優れた告知映像を多数リリースしていた。いわゆる真っ当な広告という面でも海外の作品は優れていたな、と思ってしまった。
『無期迷途』に関してもここで改めて触れておきたい。無期迷途は3分間のイベントPVを広告として放映しており、広告とは飛ばされない6秒~15秒で収めようという昨今の流れに逆行するような超高クオリティ広告を行っていたのが印象に残っている。
広告を飛ばされないようにしよう、無理矢理広告を見せようという流れとは異なる本格派の映像であるが、伝えたい事がたくさんあるならそれだけ長時間の尺をとってじっくり広告を行うという選択肢ももっと採用するべきだ。これだけで足りないと言う人に対しては新イベント予告番組と称した告知番組22分もついてくるので、相応に気合の入った広告だったと記憶している。
この面においては日本も似たような広告を行っていて、2021年に真・女神転生Ⅴが8分尺の広告を毎月1度配信し、定期的に新情報を広告で伝えるミニ番組を広告で放映していた。自信があるならばそれくらい腰を据えて長期計画を採った広告を行うのが今後の広告を生き延びていく手法になっていくかもしれない。
総括すると、2024年の広告はとんでもなく優れた広告と悪質過ぎる広告の二極化がより一層進み、それ以外の広告はほとんど話題として続かなかった1年だった。
・2024年広告最強ランキング
さて、それでは本題に入ろう。上記が2024年の広告を見るYAKISOBAが1年間収集したデータより決めた、最強ランキングは上の通りである。
アトムクリニック周りが入っていない事に疑問を覚える人もいるかもしれないが、あの辺はやっている事の手口自体はメンズクリアをテンプレに過激化しただけであり、さして目新しい事はやっておらず評するほどの事をしていないので論外です。下品具合で言ったらいちかの方が上だし。
広告のステータス分けに関しては昨年と同じく以下の通りです。以下の要素を最低0点、最高6点で評価し、これらを足し合わせた総合得点が高い物を上位においている。
・Cランク 違法三人衆
・スターフェイト~オリンピックとポケモンに喧嘩を売った男~
スターフェイトはXヒーローの広告ジャンル転身術をベースに、ポケモンの露骨なパクリとオリンピックロゴの便乗広告を行った無法ぶりが驚かれた。普通に考えたらダメな広告寄りだと思うんだけども、それでも全然地味な方だった、知らない人も多そうなのは今年の異常性が窺えます。
世の中キャッチーすぎるパルワールド辺りに話題が行くのはしょうがないんだけど、こいつは普通に許されたらアカン奴だと思いますよ。
活動範囲としては主にYoutubeがメインなのだが、結局「ヤバい広告がいた!」という触れ込みでXでも話題になっているのだから大して変わらないか。
もしスターフェイトが真面目に取り締まられたとしても、おそらく会社を建て直してゲームも別タイトルにして改めてパクリ広告を出すくらいの事は普通にやってきそう。現代は悪事への再チャレンジが簡単すぎる。
・マジックカード~広告界のニャルラトホテプ~
マジックカードがヤバいのは、毎月偽ゲーム広告のジャンルを変えているせいでレビューの苦情で出てくる広告で見たゲームジャンルが大体違うという偉業を成し遂げた事。
具体的には犬を助けるゲーム、泥棒を捕まえるゲーム、輪のパズル、レンガパズル、ナイフを振り回すタイプのダダサバイバー風広告、星座のクイズ、3D射的、同じ色で線をつなぐパズルゲームと、もう毎月のようにジャンルが変わっていってたんですよ。
ジャンルとタイトルを頻繁に変えてダウンロードを狙う戦略自体は昨年のXヒーロー時代から見られる物ではあったが、それでもこの頻度でミニゲームの変更を成し遂げたのは異形だと言って良い。
1月のみリリース直後という事もあってか多めに広告を行っていたが、2月以降も平たく偽ゲームの広告を行っていたのが印象的。
スターフェイトがパクリによって爆発的に話題を取ろうと狙っていたならば、マジックカードは継続して様々なジャンルの広告を行って様々なジャンルのプレイヤーを呼びこみたかったのかな、と想像出来ます。
・天宮の冒険~そのスパムは広告なのか?~
こいつはゲーム広告の中でも突然自らダイレクトメールやリプライで広告文句を送り始め、それを広告だとでも言いたげな雰囲気でやっていた時期がある時点で相当独自の悪質広告である。将来的にはこれが「未来の広告戦略」になってしまうかも……という危うさも感じてしまう内容です。
まあスパムというだけならブロックすれば良いじゃないか、という所もあるんだけど、現状のインターネットは複数アカウントを取る事も簡単なのでインプレゾンビのごとくブロックしてもブロックしても話が進まないような事態も大いに起きうる。結局天宮の冒険はスパム戦法をやめたらしいが、後に第二、第三の天宮の冒険が現れる事は容易に想像できる。
・Bランク 広告四銃士
・勝利の女神:NIKKE~健全広告勢に仲間入りしたケツ~
ポイントだけで見るならBランク以下なのだが、違法度、誇張度がゼロに収まっている優良タイトルである事にご注目。今年から違法性が見受けられず、誇張が少なく良い広告を色々やっている場合はそれはそれでランク入りさせるようにしています。
NIKKEに関してはかなり無難でこそあれど、屋外広告も行いつつ印象に残るハイスタンダードな広告を行っていた事が印象的。昨年はいくつか騒がせる要素があったが、こういう真っ当なタイプの広告も展開力や広告の拡散ぶりを考えると充分話題になっていたと言えるのではないでしょうか。
屋外広告に関してもチェックし損ねたものがあった可能性があるし、バナー広告などを含めればもっと広告していたはず。
NIKKEの広告の何が良いって、普通なら印象の薄くなりがちな6秒広告をキャラクターの個性が出せるような形でインパクトある内容に仕上げた事。キラーワイフの6秒紹介広告は必見です。芸能人に企業名を言わせるだけが広告じゃねえんだぞって所を見せてくれました。
・聖闘士星矢 レジェンドオブジャスティス ~野外広告特化勢という新しい可能性~
星矢ジャスティスは元がジャンプ作品であるせいか、違法要素無しで屋外広告を主軸に広告を行ってきたような内容に仕上がっている。しかし広告の物量作戦で市場調査を行うとか、堂々と自動音声を使うとか、そういうやり方に関しては海外ゲーム特有の安価なやり口を導入していたように見えた。
そういう安価なやり口は原作ファンの怒りを買いそうなものだが、大炎上も無く多数見かける広告枠くらいで終わった印象。
12月~1月に強いスタートダッシュをかけてきた事がグラフにすると分かりやすい。
それ以降はぼちぼちであるが、5月に関してはポセイドン登場のタイミングで厚めに広告をしている。新キャラ登場ってだけで駅中に聖闘士星矢のキャラがでかでかと出てくるの、めっちゃびっくりした。
・おねがい社長~堅調ながら新たな挑戦を加えていく古参~
おねがい社長は今年の広告でも屈指の安定派、正しく堅調に推移したように思います。現状維持は後退だ! みたいな事を言う意識の高い人は多いですが、おねがい社長は昨年より広告数が増え、アイデアも変わり、何なら異世界のんびりライフという新作を抱えながらよくもここまで広告をやったなと褒めるべきなんです。
しかしそれでも評価が落ちたのは、やはり周りの広告のインフレが激しすぎるのが悪いと言えます。
広告も大体バランスよく投稿していた印象。
バランス派を尖った所の無い器用貧乏と評してはいけない。こういうのが一番大変なんだから。
・異世界のんびりライフ~IYAGAMES第二の刺客~
IYAGAMESのフラッグシップモデルとなる広告は異世界のんびりライフだろう。生成AIと有名人とのコラボをハイブリッドしたやり口はおねがい社長っぽさがあるが、それをより特化させたような印象。
特に異世界のんびりライフの生成AI広告は初めて違和感を抱きこそすれ明確な生成AIだという確信を得るまでに30回くらいループして見返す必要があった一作で、将来的にこのクオリティのAIアニメが増えたら情報の真贋をチェックするのは極めて困難になるだろう、という危惧すら抱かせてくれた。
コラボ先、案件の依頼先も壱百満天原サロメやえなこなどそうそうたる面子を選んでおり、充分な人気どころを順当に選んだ印象。
基本戦略としてのスタートダッシュの充実はもちろんだが、サービス開始して5ヶ月のタイミングでにじさんじにコラボ配信を依頼したのは想定以上にヒットしているから追加で広告しよう、という意図があったのではないかと予想出来る。
ちなみに半周年キャンペーンを始めたのは12月26日と、何故か集計期間外の7ヶ月目だった。ひょっとしてリリース1ヶ月目はテスト期間で、2ヶ月目以降も収益が続きそう、運営継続しようと判断したタイミングからがサービス期間だと考えてたりします?
ここはちょっと真面目に気になる要素。
・Aランク 広告三英傑
・Herowars~独自路線を突き詰めた数字比べ職人~
おいおい最高6点と言ってたのに継続性7点って言うのはおかしいだろって思うかもしれないが、今年の広告に関しては次世代に突入出来た広告と旧世代レベルでとどまってしまった広告に二分されると思う。明確に次世代に入れたのはキノコ伝説だろうが、それ以外にもネクストステージに入れた広告というのは数タイトルある。
その中でHerowarsは継続性という面において7評価を下したけども、このインフレの中で継続して新しい事をやり続けている上に、コラボに頼らない、おそらく生成AIも不使用で広告をやり続けて、ある程度知名度がある時点でバケモノタイトルだと評価すべきです。一応2024年12月にミュータントタートルズコラボを実施していてそれは集計外になってしまったけど、それがあったとてバケモノなのは変わらない。
HerowarsはXとYoutubeでの両面作戦で広告していたのだが、驚くべきはそのバリエーションと手数である。多分この偽ゲームだけで1つのゲームを作れるくらいの面白さと質と量があるんだけど、それだけのコストを投下しておいて全部ウソだというのは驚異的。
系列としては2023年のザ・アンツとか、2022年のEVONYみたいな雰囲気ではあるんだけども、流行の偽ゲームジャンルを一切やらないという選択肢を選んだ上で大量に広告をやるってのは相当勇気が要ると思うし、正直おかしい。
ただそこを上手に乗りこなして、XとYoutubeで話題を取れたんだからHerowarsは最高なんだよね。本当に暇なタイミングで全部見るべき。すげえクオリティだから。
・ラストウォー~インフルエンサー戦略を完璧に使った雄~
ラストウォーも明確に一時代を築いたゲームなのは間違いない。特に初動のかまいたちを活用したTVCMやめざましテレビでの特集であったり、マックスむらいの「ラストウォーは詐欺じゃない!」というキラーワードは多くの人間をラストウォーに向かわせ、大きく収益を上げる事に成功した。
違法と言う面で言ってもウソの10万円プレゼント企画をマックスむらいにやらせていたのが衝撃的だった。ゲーム本編ではあまり遊べない詐欺広告だ! という認識だけならまあ2023年でもあったんだけども、ウソの10万円プレゼントはさすがにダメでしょう。結局そんなにお咎めは無かったようだが、マックスむらいという人物その物の信頼が損なわれた感はある。
ラストウォー自体はサービス開始が2023年9月とやや半端な時期だったのは注目ポイント。
サービス開始から9ヶ月後というかなり半端なタイミングでこのコラボラッシュを仕込んだのは間違いなくゴールデンウィークに噛み合わせるつもりで広告費を投下したのだと思うし、割と最後の博奕くらいの気持ちで芸能人コラボを準備したらバカうけした、というのが実情ではないでしょうか。
ラストウォーのターニングポイントはどこか? と考えると、かまいたちが1月31日に投稿した動画をしっかりチェックして、そこからすぐに案件を依頼した所ではないかと思う。
本当に偶然に近い面もあると思うのだが、こういう千載一遇のチャンスを逃さずに大規模なインフルエンサーマーケティングを仕掛ける事が出来たのは間違いなくラストウォーの良かったところ。
その後の広告に関しては目立ったところを出せず没落していった感はあるが、それでも結果を残せただけ立派なタイトルだと言えよう。
・Temu~EC広告の破壊者~
こちらはおそらく一部の広告業界の方は未だに頭を悩ませている問題であるかもしれないし、ネット上で見かける広告という意味ではより高い評価を下しても良いレベルのタイトルだと思う。
海外ECサイト(Electronic commerce、ネットショップの総称)の躍進は大きかったが、その中でもTemuの広告数、地上波進出ぶりはインターネット民に大きなショックを与えた。格安である分問題点も指摘される事があるサイトであるが、少なくともその広告展開に関する手腕は他の広告の追随を許さない。
一応自分のカウントする範囲では上記だが、絶対にこれよりも多数の広告を発出していたのは間違いない。
金があればどんな広告手法でもまかり通ってしまうし世界市場にも進出する勢いが止まらない所を考えるならばこれをTopTierにしてもおそらく文句は無いのだが、唯一弱点があるとすればやっている広告の内容自体は2023年のDtoC広告勢とあまり変わらない事。さすがに昨年から見飽きた形式を続けている分内容を見ると評価は多少落ちる。
ただ、あくまで広告市場を支配したかどうかという側面で見るなら間違いなく最上位に属するタイトルの一つだ。
・Sランク 正統派広告の双璧
・ゼンレスゾーンゼロ~闇と光が融合した最強ビジュアル派広告~
後述するキノコ伝説が海外ソシャゲ広告の新地平を拓いたとしたら、ゼンレスゾーンゼロは正統派広告の新地平を拓いたタイトルだと言って差し支えない。とにかく映像の良さに関しては下手な映画やアニメを上回るレベルであり、これをタダで遊べる、しかも広告で一部分をタダで見せても有り余るほど見せ場が存在するというのはどういう事なのか?
映像のクオリティという面では他のどんな広告もこれを上回らなかったと自分は断言するし、優れた映像作品を作れば広告になるのだ、という思想を突き詰めるとこれになるのかと感嘆するばかりである。
ゼンレスゾーンゼロの広告が凄まじいのは、いわゆるキノコ伝説が行っているような広告量産術を取り入れて広告している事である。一つの映像があればそれを細切れにして広告を量産して見せるとか、初動で広告数を稼いで注目を集めるとか、テーマソングを活用してShort動画での話題を作るとか、ベストな映像を作った上でベストな広告戦略をつまみ食いして採用する事によって注目をさらに高める事に成功したのだ。
無論ブランドがしっかりしているHoYoverse作品だから別に広告戦略が適当だろうと一定はヒットするだろうが、ここまでの大ヒットを見せたのは悪質な広告だと断じられるような存在からも貪欲に盗める所を盗んで広告に活用してきたおかげだろう。しかも中身が真っ当でブランド力もあるゲームだからこそ、ファンメイド作品をそのまま広告に活用するような優れた広告戦略もそのまま採用出来ているのはキノコ伝説でも出来なかった個性の一つ。
少なくとも2020年にリリースされた当時の原神の広告より、初動戦略に力を入れたなというのは見てすぐに分かります。
・マクドナルド~突如ネット広告に現れた大重鎮~
ネットの変な広告論評という二部リーグに、一部リーグの超トップランカーがやってきたみたいな雰囲気を漂わせるのがマクドナルド。今だけダブチ食べ美を筆頭にネットミーム広告で一躍オタクの人気者である。
マクドナルドが普段どんな広告をしているのか、という情報の一部は以下のnoteにあるが、結局8月の広告でバカウケしたのがきっかけになってかネットミーム広告を高精度で叩きつけてくるようになってしまった。センスある大企業が本気で取り組んだらこうなるんだな、と分からされる仕上がり。
結局オタクはネットミームを広告に使われるのが嫌いだ! という論もすっかり薄れてしまったし、マクドナルドって本当にヤバいよ。昔は皆ネットミームを大企業が使ったら舌打ちしてたってのに……
・SSランク 神
・キノコ伝説~キノコ伝説モデルを成立させた地母神~
Web広告は魔剣伝説以前と以後に分けられる。魔剣伝説が「偽ゲーム」「有名声優」「有名俳優コラボ」「カッコいい、面白そうなPV」で告知を行った魔剣伝説モデルを生み出してから、多くのタイトルが魔剣伝説を真似て、改善し、さらなる独自手法に進化していった。
キノコ伝説は、魔剣伝説以来の「Web広告はキノコ伝説以前と以後に分けられる」だけのパワーを持った広告となる可能性が非常に高い。初動戦略の時点で「偽タイトル画面広告」と「サービス開始前の著作権違反広告」、「韓国版との比較」「インフルエンサーへの多面展開」という既存広告の優れた所を全て取り入れているにも関わらず、売れた後にファンイベントを開催してコアファンを取り入れる、東京ゲームショウという舞台で子連れ層に向けてアクティビティを開催するなど、将来のキノコ伝説を見据えた長期的広告戦略を常に取り続けていたのだ。
無論マクドナルドのネットミーム広告だって凄まじいクオリティだし、ゼンレスゾーンゼロに比べたら映像のクオリティは低く、Temuに比べたら広告自体の数は少ないだろう。しかし広告それぞれの方針が明確に固まっていて、初動戦略だけで無かったゲーム広告が過去にあっただろうか?
広告数も文句なく多いが、7月~9月周りのコラボ+リアルイベントを活用した広告の施策プランを考えると単純な広告数では測り切れない地力がある。キノコ伝説の広告って8月以降何となく見かけなかったのに何故? と思う人もそれなりにいるだろうが、それはターゲティングから外れていただけだ。
キノコ伝説はより中長期的に作品を支えるであろうプレイヤーに対して資金を投下していたのであり、おそらくまた1月~2月の周年期になったら改めて何かしらの一般向け広告を多数発出すると自分は予想している。そしてこのタイミングで改めてプレイヤーを集めたらその収益で次のヒットになり得る新作を出しつつ、キノコ伝説自体のファンはイベントで囲い込んでいく、そういう戦略を見越して1年目を過ごしたのではないか。
キノコ伝説はどこまでもロジカルなので、もしかしたら他の施策やプランも用意している可能性がある。今もなお底知れないプランを用意しているように見えるのが恐ろしいところだ。
・怒り
なるべくこのnoteにはポジティブな話を書くようにしていたのだが、さすがに今年に関しては言わせてもらいたい。この広告まとめ以外で今年の広告を少しでもまともに見ていた人間はどれだけいたのか?
人類と広告の関係はイビツになり過ぎた。このnoteを書き始めた理由は、2022年の広告最強ランキングを作った時に書いている。
そもそもマーケターと呼ばれる人間達が広告に対して話題にするのは、概して優れた広告とアドテク(アドテクノロジー)の話ばかりである。無論広告は収益を高めるために行う物だから自分のプロジェクトに横展開出来るような施策を探すとか、広告をより効率よく表示する方法を検討するとか、そういう手法を模索するのはある意味当たり前かもしれない。
だが、広告を健全化すべくプラットフォームに掛け合おうという大きな動きはここ3年で自分の知る範囲で見られなかった。当然マーケターの中には悪質な広告を打って話題を取ろうと言う側の人間もいるだろうし、真っ当なマーケターに関しても果たしてプラットフォーム全体に対して疑問を抱き、何かしらの行動を起こしただろうか。
広告は悪質化の一途を辿った。内容が粗末になるばかりでなく、画面全体を覆う広告、異様に消しづらい広告、ブラウザバックしたら表示される広告と、年々表示をする方法も悪どくなっていった。結果としてアドブロッカーが流行し、広告に対する無関心は加速する一方である。
代わりに大掛かりな街頭広告を展示して遠回しにインターネット上での拡散を狙ったり、TiktokのShort動画のように広告に見えない広告を模索したり、広告を案件と呼び変えて有名人に広告をさせたり、広告をプロモーションと言い換えたり、あらゆる手段で広告を放映しようとした。現代人はそのようにして広告を広告で無いように見せるか、無理矢理見せつけなければ広告を見なくなっている。
そして今年はfacebook、Google Ads、X、instagramと言った各インターネットサービスで悪質な広告が急増した年でもあった。先述の通りマーケターがインターネットで広告しているからと言って、それらの他所の悪質な広告に対策を行える訳ではない。
広告環境悪化の元凶の一つは悪質な広告への対策が遅々として進んでいない大手プラットフォームである。取り締まりのためにAIを活用していると言っても、結局詐欺広告や不健全な広告は残ったままだ。本来であれば広告にウソが含まれている時点で即座に取り締まるべきであるにも関わらず、それを取り締まれていない。
現代のネットとは水道ガス電気と同じほどのインフラと言っても過言では無いだろう。これほど悪質でくだらない広告が増えたら本来ボイコット運動が起きてもおかしくないにも関わらず、もはや人体の一機能と化したインターネットを人類は排除できなくなってしまっている。
私は次第に広告を見る側に対しても怒りを抱くようになった。広告がイヤならばインターネットをやめれば良いのに、インターネットはやめられない。そして広告に関しても自分にとって都合の良い広告は見る癖に、嫌いな広告は見たくもないし関心も抱かない、広告など邪魔だから全て消せばよいという身勝手な無関心が目立った。
インターネットに人間関係を人質に取られているから、広告を自ら消すという方法を使ってでもインターネットを使わざるを得なくなっているという主張もあるだろう。だがそれでも、アドブロックという対話を拒否する機能によって広告を見なくなってしまえば完全に広告は広告を見せるためだけに悪質になり続けるのが道理である。
それで悪質な広告に関しては過剰に取り上げるにも関わらず、視聴者は良かった広告、普通の広告に関してなかなか話題にしようとしない。広告の価値は地に落ちているが、それは優れた物も悪質な物も一緒くたなせいで広告全てが悪いようになっている。そして海外の広告は全部クソだという乱雑で一時の怒りに任せた感情的な評価が広がっていた為、真っ当な広告ジャンルにおいても研究が遅れる一因になった。
広告を見せるサービス、マーケター、視聴者、全員が別の方向を向いて広告の上っ面を話しているのが現状である。誰も広告その物をまともに見ようとはしていないし、アドブロッカーで広告を消しながら広告を批判している。昔の広告は良かったと懐古厨ぶるのも結局昔はアドブロッカーが無かったからで、今だって優れた広告があるにも関わらず見ていないだけなのではないかと疑問に思う事すらしない。
その歪んだ社会の末路が今である。画面全体を覆い尽くしてきらびやかに装飾されたバナーのおかげで異様に読み込みが遅いブラウジング、15秒の広告を2回放映する上に生放送中でも広告を挟み込むYoutube、10個の広告を連続して放映するTwitch、犯罪教唆でもエロ広告でも何でも垂れ流すX、芸能人の名前を無断で利用した詐欺広告を放映するInstagramやfacebook、闇バイトの広告が堂々と流れるTiktok、広告を消す事で快適なブラウジングが出来ると標榜するプレミアム会員制度、AI技術は善だと言いながら広告における悪質なAI使用に関して何一つ対策を挙げようとしないAI推進派、AI技術は悪だと言いながら具体的な悪質な使用例に関して何一つ批判しようとしないAIアンチ、広告は嫌いだと宣いながら案件配信を喜びネットミーム広告は例外的に話題にする二次元オタク、広告において自分の好きな芸能人が出ているかでしか判断できない三次元オタク、広告技術に対してevilだ技術者倫理だと大層な事をわめいてインプレッションを稼ぐ連中、詐欺広告を発出して収益を得る犯罪者、優れていない広告に関してはまともに見ようともしないマーケター、広告を批判しながら広告が無ければ食い扶持を失う存在が大勢現れる人類。
広告は多くの人々にとって求められなくなりつつあるにも関わらず広告を出す仕事は未だに存在していて、広告によって収益を得る人間はいるがその広告から物を買われたかは甚だ疑問である現代社会、本当に広告は必要なのか。誰も広告を求めていないのに、社会から除去するには大変な労力がかかるからという理由で惰性の広告を続けているのではないか?
広告に対して真剣に考え直すべき日は今である。
・まとめ
2024年広告を見るYAKISOBAエンディングテーマ『キノコ勇者』
まあ色々と怒りを書いてみたが、どれだけ書こうが多分視聴者はアドブロックで広告をブロックする、マーケターは広告をし続ける、大手プラットフォームはろくにサービスを改善しないという分断は解消されないだろう。そしてそんな状況でも、広告は放映され続けるし、広告を見るYAKISOBAというこのnoteすら結局業界の部外者が好き勝手書いているだけの批評に過ぎない。
来年はどんな広告が出るのかは分からないが、おそらく広告の治安は悪化の一途を辿る。その中で最初に広告を攻略するのは、間違いなく海外広告(特に中華系)だろうと思っている。
来年はもう少し広告がマシになる事を願ってやまない。