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読書感想文【葉隠】山本常朝著
こんにちはコウカワシンです。
今回は、山本常朝(やまもと・じょうちょう)さんの著書【葉隠】から学ばせていただきます。
本書は、新渡戸稲造(にとべ・いなぞう)さんの著書【武士道】と並ぶ、「武士の心得を説いた武士道書」です。
山本常朝さんは、1659年生まれの江戸時代の武士です。忠誠心の高い佐賀藩士であり、42歳のとき出家し「じょうちょう」と名乗られたそうです。
この【葉隠】は、山本さんが口述し、同藩士の田代陣基(たしろ・つらもと)さんが筆録したものと伝わっています。
本書の冒頭には「武士道といふ(う)は、死ぬ事と見付けたり」という言葉があります。
武士道といふ(う)は、死ぬ事と見付けたり
この「武士道といふ(う)は、死ぬ事と見付けたり」という言葉は、「武士たる者は主君のためには死ぬことも覚悟しなければならない」という意味です。
武士道の精神を表現するとともに、武士の行動規範や美徳を表し、武士の使命や忠義、勇気といった価値観を示しているとされています。
しかし、生死を別にすれば、組織で生きるための処世術を学ぶことができることから、本書は現代でも十分に通用するビジネス書として名だたる企業の人材育成に活用されています。
つまり、【葉隠】の説く生きる道と現代の私たちの間には、根本的に共通するものが存在するということでしょう。
なぜ【葉隠】の説く生きる道が現代でも重要なのか?
なぜ【葉隠】が現代でも重要な考え方を伝えているかというのは、次のことからです。
社会で生きるための基本だから
組織に身を置くうえでお手本になるから
ビジネスパーソンの羅針盤になるから
この【葉隠】の内容は、「人生」「仕事」「言葉」「対人」「組織」「日常」「修行」など、社会で生きるための基本となるアドバイスが満載です。
現代もストレスがたまりやすい社会ですが、江戸時代の武士たちは私たちよりもストレスを抱えていたとされています。
とくに藩に身を置く武士は、君主はもちろん、上役武士に対し常にいのちを賭けた対応を強いられていました。
それがたとえ理不尽なことであっても受け入れなければ対面が保てないという覚悟を持つ姿勢は、組織に身を置くうえでお手本になる部分が多く、そんな彼らから学ぶ、この世を生き抜く処世術が【葉隠】なのです。
そして江戸時代は戦乱が終わったことから戦場で命のやり取りをしなくなり、一生を穏やかに過ごし、役所勤めの公務員のような生活をしていました。
組織の一員としてや中間管理職の立場から、いかに上司や部下と付き合い、仕事と向き合えばよいのかについて心得は現代においても変わりません。
おまけに今の自分の状況や環境、目指すべき目標といったことに迷いのない人はいません。
そのようなときに【葉隠】は、「こうすべし」と、アドバイザーとしてビジネスパーソンの羅針盤となり導いてくれるのです。
【葉隠】の精神を今に生かすには何が必要か?
【葉隠】の精神を今に生かすために必要なことは次の通りです。
柔軟性
先見性
向上心
柔軟性
まず過去にとらわれていてはいけません。いまを直視するべきです。ただし、時代は流れるが、昔の気風を否定してはいけません。
さらに他者からの意見や批判を受け入れる度量もあわせもつべきです。
これらは当たり前だと言えば当たり前なのですが、それがなかなかできないのが人間です。
つまり、常に柔軟性を意識していなければいけないということです。
先見性
【葉隠】では、「小利口=目先のことは抜け目なくやってのけるが、大局を判断できないので物事を解決できない」としています。
物事を判断するには物事を大きく見るべきであり、軽々しくうかつに判断してはいけないとしています。
ですが、いざという場面では、思い切ってすばやく決断しなければいけないともしています。
ここでいえるのは、ある程度の先見性を持っていないといけないということです。
それには「適切な組織運営」を心がけるべきだし、「順調なときほど自分を律する」自制心も必要です。
これはすべて先々を考える先見性がもたらすものです。
向上心
どのようなことでも「その上はない」「もう成し遂げた」と思ったら、それ以上は成長しません。
それよりも一生、その上、またその上を目指し、成し遂げようと努力を続ければ続けるほど成長をしていくものです。
それには向上心なくしては達成できないことです。ですので、常におごらず努力の人であるべきなのです。
どうすれば人生を有意義に過ごすことができるのか?
いつの時代にも共通して人生を有意義にする姿勢は次の通りです。
日々反省
物事を大きくとらえる
探求心を持つ
どのような経験も反省をすることで意味のあるものに変化します。
それは一日を通しての自分の言動だったり、対人関係の不誠実だったり、未熟な自分に気がついていないかということをふり返ることです。
そして自分のうかつだったことを、日々反省をすることで引きずらずに次の日を迎えることができます。
こういった姿勢が他者からも認められる人格をつくり上げていくのです。
物事を大きくとらえる姿勢も必要です。
先ほどの先見性の話にもつながることですが、大局を判断するには小手先の考えでは埒があかず、先を見て判断しなければいけません。
なんといっても武士は判断の誤りが生死につながっていましたから、慎重かつ思いっきりが必要でした。
ですので一つの考え方として、物事を大きくとらえて、こうと決めたら突っ切って決断する意識がないといけないのです。
探求心を持つことも必要だと感じます。
先ほどの「向上心」でもそうですが、他者の性格を知ることや組織運営をうまくやるために工夫をしたり、自分を律して身を正すためにも常に探求心を持たなくては成し得ないことでしょう。
そしてそれは「今に集中する」という意識も重要です。
これらは今も昔も人間として生きるために大事な処世術だと思います。
新社会人の人をはじめ、社会人になって数年は経つけどまだ何者にも慣れていないと感じる人、部下との距離感がつかめないと感じている人は、一度は読んでみる価値があります。
私も繰り返し読んでいきたいと思う一冊です。