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人体実験

 行きつけの喫茶店に行くと、臨時休業の張り紙がドアにあった。
 なのでしかたなしに、その近くにあったコメダ珈琲に初めて入ってみた。
 どうせチェーン店だろうと、いままで行かずにいたのだが、コーヒーに本物のミルクが添えられて出てきたので、少し驚いた。てっきり小容器に入ったコーヒーフレッシュが出てくるものとおもっていた。
 スーパーなどで大量に売られているあのミルクもどきは、油に水を混ぜて添加物で白く濁らせたものであり、じつはミルクは一切入っていない。だから常温でも腐ることはないのだ。
 俺はコンビニでコーヒーをよく買うが、何故、本物のミルクを置いておかないのか、いつも疑問に感じる。わきに小さな冷蔵庫でも備え付けておけば簡単にできるとおもうのだが、あのミルクもどきでごまかしている。コンビニの貧乏くささが、これでもかとそこから漂っている。

 18世紀中頃、スウェーデンの国王グスタフ三世は、コーヒーが体に悪いかどうかを調べるために、囚人に毎日コーヒーを飲ませるという人体実験をすることにした。ところが、何年経っても囚人には何の変化も見られない。1792年、当のグスタフ自身が暗殺されてしまったが、その後も囚人は毎日おいしいコーヒーを飲み続けた。
 まさかコンビニは、顧客を使って、コーヒーフレッシュが体にどんな影響を与えるかの人体実験をしているのではなかろうか。
 俺が、ハード・トンカツ・イーターの活動の一環として日々行っている、とんかつが体にいいか悪いか、自分の体を使って人体実験をしているように。

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