短編小説「夜の実習」
『じゃあ…はじめよっか…』
薄暗い部屋の中で、彼女は沈黙を破った。
その、か細い囁き声から、緊張がうかがえる。
だが俺も、負けず心臓の鼓動が激しくなっていた。
なぜなら二人は、今から、互いに初めての行為をしようというのだからだ。
『好きにしていいよ…』
彼女は目を逸らしながら、呟いた。
俺は息をのんで、彼女にゆっくり近づいた。
『待って…』
彼女は焦ったように言った。
俺はそのまま立ち止まる。
『やっぱ…自分でするから…』
俺は思わず生唾を飲み込んだ。
彼女はゆっくりと、その準備を進めていく。
一つ一つの仕草を、不慣れそうにしてる彼女がとても愛おしかった。
体は火照って、俺の興奮も、もう自分ではコントロールできなくなっていた。
俺も準備をしようとしたその時――
『手伝ってあげる…』
準備を終えた彼女は少しいたずらな顔で近づいてきた。
「ちょ…まっ…そんなの…すぐっ…」
俺は思わず声を漏らした。
初めてだというのに、彼女はとても上手だった。
あろうことか、俺は彼女の技術に完敗した。
『ねぇ私…上手でしょ…』
「うん…」
俺は悔しくも、彼女の頭を撫でた。
だが、男として、こうもしていられないと思い立ち、俺は掴みかかった。
『え…ちょ…ちょっと…』
「今度は俺の番だよ…」
俺は半ば強引に、彼女を楽な体制にさせた。
『いやっ…やめっ…』
彼女もまた、思わず声を漏らしているようだった。
これでいいのかはわからない。
でも気が付くと、辺りは水浸しになっていた。
『もう、ばか…』
少し落ち着いた彼女は、赤面しながら頬を膨らませた。
「ごめんって…」
俺はまた、彼女の頭を撫でた。
こうして、二人の準備は完了した。
だが、まだ俺の興奮は収まっていなかった。
それどころか、先ほどよりも強く昂っていた。
「じゃあ…い…入れるね…」
『うん…いいよ…』
俺は注意しているつもりだった。
『あっ…』
彼女は少しつらそうな声を上げた。
「ごめん…大丈夫…?」
『うん…平気…続けて…』
俺は心配のまま、優しく続けた。
『あっ…んっ…』
「やっぱ痛む…?」
『ううん…大丈夫…だし…ちょっと慣れてきてるかも…だから…もっと激しくしても…いいよ…』
「うん…」
彼女は小さな吐息を漏らし始めた。
中でよく絡み合っていく感覚が堪らない。
俺はさらに激しく振りつけた。
始めて5分ほどが経過しただろうか。
俺はもう、我慢の限界だった。
「俺…もうやばいんだけど…」
『私も…』
しかし、頭の中にはわずかに理性が残っていた。
「でも…このままだと…できちゃうよ…」
『いいよ…あなたとなら…だから…もっと…』
俺はその言葉にますます興奮した。
「じゅあ…一緒に…」
『うん…』
俺は最後に残った力をすべて絞り出し、思い切り振りつけた。
俺たちは同時に、声にもならない声を上げた。
『ねぇ…』
「どうした…?」
『ちょっと…激しすぎじゃないの…』
「ごめんごめん…」
『でもさ…またしようね…』
こうして俺らは、初めての共同作業で絶品のチャーハンを完成させた。