三島喜美代 未来への記憶展

今日7月7日、ちょっと前にEテレの「日曜美術館」のアートシーンのコーナーで紹介されていて是非観に行きたいと思っていた「三島喜美代 未来への記憶展」を観に中村橋の練馬区立美術館に足を運んだ。

僕はテレビを見るまで三島さんの事を知らなかったのだが、三島さんは捨てられた新聞紙やマンガ雑誌、段ボールやチラシを陶芸で再現する作品で知られるアーティストである。元々は画家でコラージュ作品や抽象画を描いていたようだ。その頃の作品も展示されていたのだがダダとポップアート風の作品だったり抽象画も描いていて、そうした画家時代の作品もカッコ良かった。

館内で流れていた10分位のインタビュー映像を観たのだが、その中で三島さんは100回位は「面白い」という言葉を使っていたと思う。高尚でアタマでっかちのアートではなく、自分も見る人も面白いと思える視点を軸に制作を行い、自由な発想で何でもやってみるというのが彼女の流儀なのだと感じた。

別のインタビュー映像で「失敗も面白い」と語っていた。僕の勝手な印象なのだが、三島さんは好奇心というドリルを使って面白いものが出てくるまで飽きずに掘り続けている人のように感じた。そしてその行為はアート云々以前に本気で遊んでいる人のように見えた。この姿勢ってコンセプトやテーマなんかよりアーティストにとって一番大事なことなのではないかと痛感させられた。

実際に作品を前にするとインパクトの強さ、社会性、ユーモア、パンクな精神もある上にそんなにアートに興味がない人でも予備知識無く楽しめる間口の広さがあり赤瀬川原平に近いものも感じたが、ここまで物質性にこだわりを持っている作家は日本にはなかなかいないのではないだろうか?

残念なことに三島さんは先月92歳で亡くなってしまったが、晩年のインタビューの中の彼女は本当に生き生きしていて「こんな年寄りも這いつくばって色々やってるので、若い人はもっと色々やってみて下さい」と語っていた。その語り口はアートをやっていく苦労や大変さを語る口調というより、世界にはまだ面白い事が沢山あるからさがしてみなよと楽しそうに話している感じで(実際には相当色んな苦労もあったと思うが)不覚にも涙がでそうになった。こういう老人になりたいなと強く思った。

展示の最後の部屋全体にレンガを敷き詰めた作品は圧巻。展示最終日間に合って本当に良かった。

#練馬区立美術館 #三島喜美代 #現代アート #現代美術 #美術館 #アート

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?