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関係の質を上げる魔法と科学〜真の心理的安全性を求めて〜

【2025年。昭和100年】

無くならない人間同士の問題と多様化

昭和100年とも言われる2025年。

ダイバーシティーという概念が1960年代アメリカで生まれ、男女雇用機会均等法が1985年に制定されてから40年が経つ。

また「心理的安全性」という概念が提唱されたのが1999年で、それ以前にも人間同士の問題やかだは多くの人間が語ってきた。

2000年から2025年までのインターネットやAIなどのテクノロジー文野の成長により、歴史的に俯瞰して見れは世界は大きく変わってしまった様に感じるが、人間個人や人間同士の問題は無くならず、むしろ新たな問題も生んでいる。

今年になり米国マクドナルドが、多様性についての目標を廃止するニュースが出てきて、多様性推進は逆風も吹きだしたが、ダイバーシティーという概念が出てきた1960年年代と、現在におけるダイバーシティーはその中身と質が変わってきておりそれ自体の概念が多様化・複雑化してきた。

表層のダイバーシティと深層のダイバーシティ

「表層のダイバーシティー」とは、年齢、国籍、男女、障がい者といった外見から認識できて自分の意志で変えられない多様性を示し、主な課題として挙げられるのはマイノリティとされる人たちの雇用や、働き方、待遇面の公平性だ。

一方、「深層のダイバーシティー」とは職歴、スキル、習慣、パーソナリティ、考え方、仕事観、文化的背景など外観から認識できない個性やアイデンティティの違いといった多様性を示し、個人の特徴や違いをいかに企業経営に活かしていくかという課題が挙げられている。

1960年代に誕生したダイバーシティーの問題は主に前者が中心だったと思われるが、インターネットの成長やAIをはじめ、テクノロジーの発展により複雑に変化した世の中においては、前者に加えて後者のダイバーシティーの重要性が増している。

そしてそんな複雑化するダイバーシティーを活かすためにも必要な鍵がとなるのが人的資本経営とセットで語られる「心理的安全性」という概念である。いかに多様な人材を集めようと、心理的安全性が高い場づくりが出来ていることが重要となる。

先の米国マクドナルドのケースもきっかけに改めてダイバーシティーや心理的安全性に対する考え方のアップデートが求められていくだろう。

【真の心理的安全性を高めるには?】

心理的安全性を育む魔法

「心理的安全性を高めるにはどうしたらよいか」という問いに対して、「チームの心理的安全性」という言葉を生み出したハーバード・ビジネス・スクール教授のエイミー C. エドモンドソンは、
「心理的安全性を育むことは科学というより魔法に近い」と指摘し、「その組織風土は私たちが共同でつくり上げるもので、時には不思議な力が働くこともある」点をマネジャーは忘れてはならないと言っている。

参考:ハーバード・ビジネス・レビュー


エドモンドソン教授が元々「心理的安全性」の概念に辿り着いたのは、病院におけるチームワークの質とヒューマンエラー率の関係についての調査からだ。

チームワークが良いチームほどミスが少ないという結果が出ることを予想していたが、結果は反対で、チームワークが良いと回答したチームほど、エラーが多く見られた。何故か?

それは優秀なチームほどミスを進んで報告していたからだ。恐れのない組織には、継続的な改善により、自ら質を上げながら組織風土を作っていこうとする「魔法の様な力」がある。

生産性を高める科学

企業において心理的安全性が注目を浴びたのは、2012年にGoogle社が行った「プロジェクト・アリストテレス」で、心理的安全性の高いチームは生産性が高いということを示した事に端を発する。

病院における心理的安全性とは、いかにミスを減らし改善を行う組織風土作りの文脈だが、企業において生産性やイノベーションを生み出す文脈で使われる心理的安全性は、相手に無知だと思われることなく自らの考えや意見を言える「場作り」の必要性が謳われている。

単に心地が良ければいいわけではなく「真の心理的安全性」は、成果を高めていくためのものであり、信頼、尊敬し合えるチームを作る事で、生産性を高めていく「科学の力」と言えるかもしれない。

【関係の質を上げる魔法と科学】

成功循環モデルと虚構を信じる力

マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している組織の持続的な成長をもたらす仕組みとして「組織の成功循環モデル」という考えがある。

組織のチーム間の「関係の質」が高まると、思考の質が高まり、行動の質が高まり、結果の質が高まり、そしてさらに関係の質が高まる好循環を生んでいく。

重要なのはまず初めに「関係の質」を置いている所で、チームのメンバーがそれぞれを尊重し、相互理解を深めていくことで、結果的に成果が上がっていく継続的な循環が生み出される。

では関係の質はどうやって上げられるのか?

人的資本経営に関連して心理的安全性やコーチングに関する本や記事を昨年から沢山読んでいくなかで強く感じられたこととして心理的安全性のある場を作り出し、関係の質を上げるためには「良い対話を発生させる魔法と科学の力」を使っていく必要があるということだ。

Googleが発見した心理的安全性を生み、
生産性を高める科学は非常大きなヒントを与えてくれるが、表面的に真似をして話し合っても、関係の質は上がらないだろう。

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」の中で語られる「虚構を信じる力」を持った我々人間は、様々な「虚構」により信用しあいながら生きている。「虚構」は個人の思想や願い、会社におけるミッションやパーパスといったものだ。

個人と集団が「虚構」でもある「在りたい状態」を信じて一緒に目指す場を生み出す魔法は「良い対話」の中で発生していく、言葉だけでは言い表せない空気感みたいなものがそこにある気がする。

信用と信頼と真の心理的安全性

この循環モデルにおいて改めてダイバーシティーと心理的安全性を考えて行くと、まずは関係性において深層のダイバーシティーの範囲である職歴やスキルなどを確認することで「信用」して関係がスタートしてそこに、真の心理的安全性を基盤とした「良い対話」を重ねていくことで「信頼」に変わっていき、関係の質は向上していく。

ダイバーシティーや心理的安全性という概念が生まれた時代から考えるとある意味、本当の魔法の様にも見えるインターネットやAIを活用しながら、個人1人1人が科学を学び、個人の中の多様性を確かめ認め合うための対話をしていくことが一層求められていくだろう。

今年はもっと関係の質を上げるための魔法と科学を学び、真の心理的安全性を追求していきたい。

<参考>

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