革漉き機のメンテナンス
こんにちは、皮革工芸師の鈴木 大輔と申します。
革細工の仕事に携わってもう30年以上になりますが、プロの道具として何が必要だと思われますか?
革細工は材料の革と、手縫い用の針と糸があれば誰にでも出来ます。
それこそ 一辺が17~8cmの正方形の革を二つに折って、両端を縫えば立派な札入れの完成です。
しかし、プロとしてデビューするなら、もっと作品のクオリティを上げる為に機械や道具などが欲しいですね。
私がクーデルカ レザーとして独立した時、業務用の機械として手に入れたのは
厚縫用の工業ミシン、糊付け機、そして革漉き機でした。(いずれも中古です)
その後 糊付け機はゴムのりの強度等の理由で処分してしまい、今は手作業にて建築内装用のボンドで塗りをやるようになりました。
今 クーデルカ レザーのアトリエには厚縫用ミシンと革漉き機があります。
もちろん、ミシンを使わず一切の縫製は手縫いという職人さんも数多くいます。
私もバッグなど一部の商品で手縫い作業をやります。
ミシンと手縫い、どちらの縫製が良いか、或いは技術がいるか、は又の機会に譲るとして
沢山の注文を捌くプロにとって、ミシンは無くとも革漉き機だけは必要かも知れません。
革漉き(皮漉き)とは、革の裏側をカットして厚みを整えたり 革のヘリの段差を無くすように斜めにカットしたりする作業です。
元々 タンナーさんより発送する前の鞣し革は6~6.5mmの厚さがあります。
(各メーカーにより差があります)
これを用途によって各革の半裁を薄く仕上げて貰うために革漉きの工程を経ます。
更にそれらの厚みの革をパーツ毎に裁断した後、一部を薄くしたり 斜めに漉いたりするのに革漉き機は必要となります。
財布やバッグなど構造が複雑になり パーツ数も多くなると革の漉きは必須となります。
もちろん手縫いと同じように 斜め漉きは革包丁でも出来ます。
私も少量の場合は手作業でやる事もありますが、広い面積を均一に調整する平漉きは機械が無いと中々出来るものではありません。
さて漉き機はどんな構造なんでしょうか。
機械の中には円柱形の丸刃と、送りと呼ばれる革を送り出す楕円形のザラザラしたタイコがあります。
ゲージで革の厚みや角度を調整して、そこに革を流すとタイコが回転して丸刃に押し付けてカットします。
丸刃は定期的にグラインダーを使って研ぎます。
又 機械は全てそうですが 注油する事で機械の摩耗をできるだけ抑えます。
それでも長年使っていると 丸刃や送りのタイコは摩耗もします。
今回 余りにもすり減ってしまった丸刃と 使い過ぎて割れてしまったタイコを交換する為にメーカー純正品を発注しました。
丸刃の摩耗の具合は分かるでしょうか?
送りのタイコは摩耗だけでなく無理な力が加わって割れていました。
ついでに丸刃を研ぐグラインダーも交換しました。
そして外した順番と逆にパーツを組んで行きます。
丸刃は交換後、きちんと研いでおく必要があります。
革用のカンナ、包丁の刃もみんな 新品の状態ではそのまま仕えず、一度しっかり研ぎます。
最後にタイコの角度や丸刃までの距離を調整して革漉き機のメンテナンスは終了です。
やはり 消耗したパーツは早めに替えないとダメですね。
漉きの面もキレイになって、微妙なデコボコ感がなくなりました。
こういう見えない部分のクオリティが全体の質感を上げています。
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