【落選する最大の理由】入選の精度を上げる11のポイント②(2017年10月号特集)
6.端的に言って面白くない
面白くないと感じさせてしまうなら、そこには何か原因がある。
それを考えよう。
エッセイでも小説でも、選考委員が読んでいて面白くないと思ったら、その作品は入選しない。しかし、その対策を考えようとしても、「面白くない」は抽象的で直しにくい。
そこで「面白くない」理由を具体的に考える。題材が悪かったのか、題材の扱い方に問題があるのか、題材の切り取り方か、話の展開か、文章表現かなど、考えられるものはすべて検証する。それでもわからなかったら、自分が面白いと思う作品のどこを面白いと思うかを検証し、自分の作品と比べてみるのも手。
面白くないを具体化しよう
内容に興味が持てない
読者は「私には関係ない」と思えば惹かれない。普遍性という接点が必要。
盛り上がりに欠ける
驚き、共感という心の動きや、展開、謎の解明などがないと盛り上がらない。
感情移入できない
主人公がいる世界を描き、生きた人間として描かないと感情移入できない。
文章が読みにくい
読んで引っかかる要素、リズム、テンポ、説明不足、説明過剰などを取り除く。
キャラクターに魅力がない
主人公は特殊な能力を持っているか、大きな悩み、欠陥をかかえている。主人公の敵対者は個性豊かな憎いやつに。
7.なんとなく既視感がある
「どこかで読んだ話だ」「よくある話だ」と思われたらアウト。新しいように見せよう。
物語にはパターンがあり、その典型は「どこかに行って帰ってくる話」と、「何かが欠如していて、それを回復する話」だが、そこに代入する要素がありきたりだと、「旅先で素敵な人と出会うが、やがて主人公は家に帰る」となり、「この話、どこかで読んだ気がする」という既視感を覚える。
パターンがいけないわけではない。見せ方の問題。洋服だって、形は同じでも素材や模様を変え、アクセサリーやスカーフを絡めれば違って見える。ただし、「何が、どうして、どうなった」という物語構造は変えようがなく、同じでいい。
よくあるパターン
葬儀や同窓会をきっかけに始まる話。
旅先での話。異文化体験。旅もの。
恋を成就させる話、別れ話、三角関係。
迫害されて復讐する話。勧善懲悪、復讐諏。
夢見て成功する話。サクセスストーリー。
事件やトラブルに巻き込まれて逃れる話。
失ったものを取り戻す、探しに行く話。
男女が入れ替わる、タイムスリップする話。
解決すべき謎があり、それを解決する話。
パターンからの脱却
小説は、話の骨格はみな同じ。そこで設定やキャラクターを変え、「職場& ミステリー」「恋愛& ホラー」のように組み合わせを変えて新しさを出す。
8.ストーリーが展開しない
展開しているように見えて、設定を膨らませているだけだと面白くない。変化をさせる。
物語は展開するから面白い。話がさくさく進むと、どこか乗り物で移動しているようで快い。また、話を展開させてもともとの状態と比べれば、自然とテーマがわき上がってくる。
「うさぎとカメ」で言えば、レースをすることになるという設定が終わり、うさぎは途中で寝てしまうという展開をさせれば、自然と「地道に努力すれば勝てる」というテーマが引き出される。
しかし、うさぎとカメが延々と話していたりして新しい局面が出てこないと、それは展開したとは言えず、話としてはごく退屈なものになる。
桃太郎に見る展開
設定
「桃太郎」を例にとると、あるところにおじいさんとおばあさんがいて、そこに桃があって、赤ちゃんがいる(生まれる) というのが設定の部分。
展開
上記の設定が破れ、新しい局面が生まれるのが展開の部分。「桃太郎」で言うと、鬼が島に向かい、途中で3人の家来を得て、鬼を成敗するというのが展開。
結果(差)
展開してどうなったかが結果。「桃太郎」で言うと、鬼に荒らされ、財産も奪われたが、それを取り戻し、平和になったというのが結末。最初と最後の差がテーマとなる。
9.視点がおかしい
誰の視点で書いているかを意識しないと、視点が定まらず落ち着かない。初心者は一視点で。
視点というのは、映画で言えばカメラの位置という意味。このカメラを誰が持っているか、何台あるかによって書き方は変わってくる。
一番多いのは一視点で、これは主人公自身がカメラを担ぎ、目の前の情景を映して〈雪国だった。〉、誰かの声を聞いて〈「駅長さあん」〉のように書いていく形式。つまり、小説に書かれた文章はすべて主人公が認識したものということだが、これを理解せず、主人公のカメラには映らないことを書いてしまうと「視点のブレ」となり、それを読んだ瞬間、読み手は「作者はド素人」と判断、評価が厳しくなる。
人称と視点
一人称と一視点
主人公の視点だけで書いていく形式。主人公の目をカメラ代わりにして、そこに写ったもの(五感) を文字にする。カメラに映らない情景は基本書けない。
三人称一視点
人称こそ「島村は」のように三人称で書かれるが、実質的には一人称という形式。また、三人称一視点と基本は同じだが、視点となる人物が変わる三人称多視点というのもある。
神の視点
すべての登場人物の心の中を知り、行く末まで知っている神のような立場で語る。小説を書くことに習熟していないと全文が説明とナレーションだらけになって失敗する。
10.構成・バランスが悪い
どこから始めてどこで終わるか、どんな順番で語るかによっては素材が台無しになることも。
どう構成するかは、「どこから始めてどこで終わるか」「どんな順番にするか」ということ。
たとえば、ある男女が1年間付き合っていたとして、付き合い始めて別れるまでにするのか、ある1日を扱うのか。これは作品の長さによる。
あるいは、殺人事件が起きるのなら、「彼が浮気した。ささいなことで口論となり、思いあまって殺してしまった」と書く前に、まず「殺してしまった」と書く。結果、「なぜ?」「どうする?」という疑問がわき、興味をそそる。このように小説は語る順番次第で面白くもなればつまらなくもなる。
構成で良くある失敗
扱う時間が長すぎる
扱う時間は枚数による。小説では意外と長い時間は扱えない。長編小説でも1 週間ぐらいの出来事だったりする。
設定の説明が長く、頭が重い
設定の説明に追われると起承転結の起が長くなる。また、前半では設定や人物の説明が多くなり、話が停滞しがち。
要素が多いor足りない
掌編なら一つの出来事で書ききれるが、長編になるといくつかの出来事を組み合わせていく。配分が重要。
ストーリーラインがはっきりしない
目的が「鬼退治」だとして、鬼退治に向かわなかったり、退治しても話が終わらなかったり。話の筋が通っていない。
11.ご都合主義
小説は作り物だが、作り物ではないかのように見せかけられないと読み手は白ける。
ご都合主義とは、作者の都合で強引に話を展開させること。必然性のない行動をさせること。
たとえば、ここは手っ取り早く濡れ場にしたいと思い、簡単に出会って簡単に事に及ぶ。あるいは、手っ取り早く事件を終わらせたいと思い、犯人が唐突に自首する展開にするとか。
現実の話のようだと思わせるには、出来事は現実を忠実に模倣しなくてはいけない。「そんなこと、ありえない」と言われればアウト。行動の必然を考え、読者が納得できるように説明し、必要とあらば話が自然だと思えるように伏線を張っておきたい。
よくあるご都合主義
都合よく助けが来る
主人公がピンチに陥り、助けを呼ぶと、そこに偶然、警官が現れる……
都合よく自白する
犯人は特に追い詰められているわけではないが、急に真相を語り出す……
都合よく濡れ場になる
女性に声をかけると、向こうもその気満々で、一瞬でカップルが成立する……
都合よく出会いがある
都合よく援助者が現れ、都合よく恋人と出会い、家を飛び出すとタクシーがいる……
都合よく捜査を依頼される
目の前で事件が起きたとしても一般人が捜査に加わることはまずないが、それを強引に進めたりすると不自然に。
前の5つのポイントは下記記事を参照!
特集「その作品、みんなとかぶってますよ」
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※本記事は「公募ガイド2017年10月号」の記事を再掲載したものです。