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見慣れた景色の美しさを知る時、私は初めて自由を手にした。
私は生まれ育った田舎町が大っ嫌いだ。近くにコンビニもないし、当然スタバもない。娯楽といえば井戸端会議くらいのもんだから、誰が結婚しただの浮気してるだのくだらない噂ばかりが蔓延っている。
そんな田舎が嫌すぎて、私はひとり、故郷を捨てた。
新宿、渋谷、表参道。街も人も、全てがキラキラして見えた。ここが私の本当の居場所だと、妙な高揚感に包まれた。
キラキラした街は、年月とともにメッキが剥がれ、どんよりして見えるようになっていった。まるで排気ガスで覆われているような、灰色の世界。
もうこれ以上頑張れない、そう思った時、田舎のハナが危篤だと知らせが入る。子犬だったハナも天寿を全うするくらい帰っていなかったのかとハッとした。
十数年ぶりに帰る故郷は相変わらずのド田舎で、田んぼや畑ばかりで何もない。
なのにどうしてだろう。この景色に涙が止まらない。
"嫌"でも"悲しい"でもない。
懐かしさに、美しさに、涙が止まらなかった。
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