捨てられないもの
大事にとっているわけでもなくて、ただ、なんとなく捨てられない。
荷物を取ろうとして、横着がたたって雪崩が起きる。ちょこんと転がってきた、小さな箱。過去の恋人にもらった指輪が、相変わらず輝いていた。
指輪もネックレスも、捨てられない。未練があるわけでもないし、もはやあることも忘れていた。それなのに、捨てられない。
「別れた人にもらったプレゼントってどうしてる?」
友達に聞くと、別れた瞬間に即捨てた、ブランド物は売った、そういえばどっかいった、結婚のタイミングで全部捨てた、引越しのタイミングで捨てた、とのこと。
うん、みんな結構捨てているのね。
思い出もあるし、頂き物を捨てるのはどうも気がひける。かといって、いつまでもとっておくのも如何なものか。
「結婚のタイミングで捨てた」は一番理想的だ。
けれど、そのタイミングがずっとこない人はどうしたら。。。
数年前のクリスマス、これがほしいとリクエストして買ってもらったアガットの指輪。本当は彼が選んでくれたものがよかったのに、好みじゃないものをもらうより自分で選んだ方がいいでしょ、と言われて自分で選んだ。
薬指に合うようにサイズを調整してもらったら、受け取りはクリスマスを過ぎてしまうとのこと。クリスマスデートでつけたかったのに、とふてくされる私を、落としたら嫌でしょ?また来年その指輪をつけてクリスマスデートしてよ、となだめてくれた。
けれど次の年のクリスマス、指輪をつけてデートをすることはもうなかった。
どの指輪にも、どのプレゼントにも、それぞれに物語があって、必要ない過去のものであっても、どこか捨てられない。
久しぶりに右手の薬指にはめられたアガットの指輪は、やっぱり私好みの美しいデザインで、色あせずに輝いていた。
この指輪をいつか捨てる日がくるのだろうか。
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