自分探しの旅の果て。
30歳を目前に、私は猛烈に焦っていた。
同じような毎日。かと言って変える勇気もない。そのくせ何かが起きて変わらないかと夢見てる。他人任せの受け身な人生。
そんな自分に嫌気がさしたのは、29歳と6ヶ月が経った時だった。
何も変わらずにただ歳を重ねるだけの人生が、急に怖くなったのだ。
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普段降りた事のない2つ先の駅で降りてみる。あてもなく彷徨っていると、鮮やかな黄色の自転車が目に留まる。衝動買いなんてした事はなかったけれど、それは一目惚れだった。
このまま自転車でどこかへ行けば、何か変わるだろうか。
何も考えずに、私は自転車を漕ぎだした。
走る
走る!
走る!!
走る!!!
何かを振り払うように、無我夢中で走り続けた。
こんなに風を切って走ったの、何年ぶりだろう。
知らない街で見る夕焼けは、格別だった。
あぁなんだ。そういう事か。
私はひとり、笑った。
広い世界の片隅で、ちっぽけな自分探しの旅の果てを見つけた。
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