小さい頃食事が大嫌いだった私が、娘に伝えたいこと。
食べることが嫌いだと気づいたのは
年中さんぐらいだったと思う。
昔の保育園では完食が当たり前で、
当時私は食べるのが遅く
いつも先生たちが
「がんばれ~!」
と食べさせてくれた。
ただ、苦手な先生がいた。
幼心に「このせんせい、こわいな」と思っていた。
ある日、その先生が食べさせてくれたんだけど
他のおともだちは食べ終わって
お昼寝の準備をしていくのに全然進まないから、
先生がイライラしているのがわかった。
やっと最後の一口になって、
カンカンとお皿のごはんをスプーンで集めて
口に運んでくれた。
でもあまりに勢いよく奥に入ってきたから、
えずきそうになって、頑張ってこらえた。
泣きそうだった。
だから保育園の給食は
「早く食べなきゃ」っていつも焦っていた。
私が大きくなって母から聞いた。
「お迎えの時に先生が
『私ちゃん、背中を丸めて
一生懸命ごはん食べていましたよ』って
教えてくれたことがあって。
お母さん、その姿を想像して泣きそうになったよ。
ごはん苦手なのに一生懸命食べたんだって。」
また泣きそうだった。
「だってすごく頑張ってたもん」って言いたかった。
お家での食事も私にとっては大変な時間だった。
食べない私に、とにかくいろんな手を使って
食べさせようする献立や雰囲気が嫌だった。
食べたくなくて箸がとまったままの私に
父の低い声が聞こえてくる。
「終わりなら、『ごちそうさま』しなさい。」
「出されたものを残すなんて。」
「食べられない子がたくさんいるんだよ。」
いとこのお家にお泊りに行った時。
お泊り自体は楽しかったけれど、
そのお家はごはんが漫画盛りで出されるから
朝はいつもうつむき加減で食卓へ向かっていた。
「ほんと私ちゃんは食べないね~!」
毎回言われたけど、私からすれば
“なんでこんなに食べるの?”という感じだった。
でも、1個下のいとこは時間をかけながら
おいしそうにそれを毎回平らげるのだ。
本当にすごかった。
食事が楽しいと思えるようになったのは
中学生になって運動部に入ってからだ。
体を動かすようになってやっと
“お腹がすく”感覚がわかり、
いろんな味をおいしいと感じられるようになった。
遠征に行くのも怖くなくなった。
私が苦手なモノは食べられる子にあげて
私が食べられるモノはもらって。
みんなと笑いながら食べる空間が楽しかった。
それからも、大学生になれば飲み会で。
社会人になれば同期とのランチや
姉妹での海外旅行先で。
いろんなものが食べられるようになった。
それで思うのだ。
いつかは食べられるようになる。
こんな話をすれば、家族や友人は
「好き嫌いが多かっただけじゃん!」
と笑うだろう。
わかる。それは大正解だ。
好きな食べ物がでればノルマはクリアできたし、
外食は自分で選べるから嬉しかった。
でも、私の中にその思い出たちが
ありありと残っているのも事実だ。
2歳になる娘は、
離乳食が始まった頃からよく食べる子だった。
自分の娘と思えないぐらい、
“なんでも食べてみる”という姿勢があった。
ただ最近、嫌だということが増えた。
さっさと「ごちそうさま」を言って
食事を終えようとする。
前に保育園の先生から
「最初はよく食べていた子でも、
いろんなものを食べるにつれて
触感や味に好みが出てきて
食べなくなるということはあるんですよ。」
と聞いていたので、その時が来たかもしれない。
昨晩も「あつい~」と全然熱くないご飯を
一向に食べようとしなかった。
「大丈夫。おいしいよ?」「熱くないよ。」
と声掛けをしていたのだが、
「……あついの!!」
と今までの駄々っ子の声とは違う、
『決めつけないで!私が嫌なの!!』
というはっきりした声色だった。
その時、自分の幼少期を思い出した。
あぁ、大人のそういうのが嫌いだったのに。
親になった今、当時の大人の気持ちはわかる。
まだまだ発達途上の子どもにとって、
栄養や食べる量はとても重要なものだ。
だからとにかく食べてほしい気持ちになる。
でも、自分が嫌だったことを覚えているから
言えることがあるんだった。
娘さん。
それが単なる好き嫌いだったとしても、
食べたくないなら食べなくてもいいよ。
わがままと言われるかもしれないけど楽しく食べよう。
少し痩せたねと言われるけれど、笑いながら食べよう。
元気に走り回って元気に泣いて
元気にイヤイヤ期に入っているあなたは、
すこぶる健康だよ。
ママも全然ごはんが食べられなくて
悲しくなることもあったけれど、
今はいろんなものが食べられるようになったよ。
大丈夫だよ。
今はとにかく楽しい時間にしよう。
スプーンが上手になったね。お箸も練習しようね。
パパとママはあなたとの食事が楽しいよ。
人が生きていく上で、
食べることはとっても大事なんだよ。
そしてその時間は楽しいものだと知っていてね。