【現代ファンタジー小説】祓毘師 耶都希の復讐(47)「そういう意味じゃない」
7月13日21時、三条駅。陽との約束。
組織《ネス》の裏切り者とされている、風間《かざま》の処理のために。それも復讐ではなく、始末を任された。
組織《ネス》への不信を払拭出来ずにいるが、ただ陽への好奇心と、保身のために、指令に臨んだ。
三条駅に着いた私は少年を乗せ、直ぐさま彼はカーナビをいじり、そこからの女声に従った。10分程度で、ターゲットの自宅に着いた。
車内で私の体内に保管している三人分の幽禍を、受け渡す。いつものように彼は一人で風間宅まで歩き、闇儡《あんらい》遂行。10分ほどで待ち合わせた場所で彼を拾い、場を離れた。
「今回は苦しめることが目的じゃないから、深夜2時頃に、脳と心臓の血管を破り死ぬよう、仕向けたから」
陽の冷静さと精確さに、いつものことながら関心していた。
「陽、食事は? 」
「まだ」
「食べに行く? 少し話しもしたいし」
「いいよ」
「あまり高いのは奢れないけど」
「今日は僕が奢るよ。毎回車で送ってもらってるし」
「高校生に奢ってもらうなんて、出来ません」
「気にしないで、僕の金じゃないから。活動費の一貫だからね、養父《ちち》も知ってることだし。それに、この前迷惑、かけたから」
決闘《けんか》の日のことを言っているのだろう。
「……陽は家族と外食したりするの? 」
「しない。家にいる時は僕、勉強忙しいから。欠席が多い分、テスト頑張らないといけないからね。
それに、今の養父母《りょうしん》と、仲良く家族ごっこしたいと思わないから……」
これ以上家族のことは聴かないほうがいいように感じた。沈黙を避けるため、すぐに次のコトバを発すことに努めた。
「で、どこで食べようか。甘えてご馳走になるわ」
「姉さん、嫌いな物ある? 」
「如いて言うなら、トマトとイチゴ」
「何で? 」
「赤いから」
反応が返ってこない。
「冗談よ。
食べる度に、酸味が強かったり甘かったりするから、いい加減ムカついてるの。どっちかハッキリしろって感じ」
またもや無言。
「で、どこにする? 」
スマホで探し出した隣席の者は、カーナビ設定開始。
周辺パーキングに駐車し、西大文字町にある和風居酒屋に入った。
肉類を好んで食べないと言う男子は、野菜を主としたこの居酒屋“棲○”を選んだ。
時間的にファミレスだと思い込んでいたが、居酒屋の選択と彼の食の拘りに、変に驚いた。
空室の個室でゆっくり、食事することとなった。
「ところで姉さん、話しがあるって」
「あっ、そうね……」
二口ほど料理を口にしながら、脳内でコトバを選ぶ。
「あのね、陽は、組織《ネス》のこと、どこまで知ってるの? 」
「どうして? 」
(やはり、そう来るわよね)「私、組織《ネス》と関わって三年。でも、何も知らない。ただ指令を受けるだけ」
「ダメなの、それだけじゃ? 」
(ダメな気がする)「陽のことも知らない、組織のことも知らない。それに
……このままでいいのかなぁって。私、組織に必要なのかなぁって……」
そう言いながら、自分で気持ちを沈めていた。
察してくれたのか、優しく応えてくれる弟のような存在。
「僕の知ってることなら、教えてもいいよ。ただ機密事項は無理だけど」
(機密事項、知ってるんだ)「ありがとう」
「何を知りたい? 」
「先ず、なぜダークネスと呼ばれているのか。ダークって闇とか暗いとかの意味でしょ。自分たちで使うかなぁって」
彼は料理に箸をつけながらも、教えてくれた。
「ダークはそういう意味じゃない。……」