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精神保健福祉士国家試験を受けた記録

2021年2月6・7日、精神保健福祉士国家試験を受けた。

浜松町から東京モノレールに乗って流通センターへ。乗り合わせた人の群れは明らかにわたしと目的が同じで、険しい顔で参考書を睨んでいた。
2月なのにとても暖かな陽気が、わたしたちを応援してくれているようだった。初めての会場、長丁場の試験。合格を祈る切実さ。もう10年も前の大学受験のあの空気感の記憶が一気に蘇った。
きっと大丈夫。あの日のわたしに励まされたような気がして、不思議と気持ちが落ち着いた。平気な顔でトイレの行列に並んで、ギリギリまでノートに走り書きをして、説明を聞きながらマスクのなかであくびをした。大事なのはそう、平常心。空気に飲まれるな。

さて、以下は試験対策の記録である。

2年前 受験資格取得に向けて

2019年4月に聖徳大学通信教育学部に3年次編入。現職の実務経験がカウントの対象になったので実習は免除(ついでに施設長に推薦書を書いてもらって入学金も免除)。
仕事をしながら、毎月テキストを読んではレポートを書くことを繰り返し、スクーリング期間にはお休みをもらって受講。最後のレポートを書き上げたのが2020年7月、科目終了試験を終えたのが10月、最後のスクーリングが12月だった。

3か月前 ワークブック読み込み

10月終盤、ぼちぼち勉強を始めている周囲の動きに焦りを覚えながら試験対策をはじめた。いろいろ手を出しても混乱してしまうのは目に見えていたので、やることを先に決めた。

使用するテキストは4冊だけ。いずれも中央法規出版のもの。

①社会福祉士・精神保健福祉士国家試験受験ワークブック(共通科目)
②精神保健福祉士国家試験受験ワークブック(専門科目)
③精神保健福祉士国家試験過去問解説集
④社会福祉士・精神保健福祉士国家試験過去問一問一答+α(共通科目)

これらをひたすらやり込んで、すべての情報をここに集約することで効率的に勉強しようという作戦である。

最初はワークブック。
一通りレポートを書いたりテストやスクーリングを受けたりしたものの、残念ながら全然頭に入っていないものである(わたしだけ?)。
なので1周目はざっくり読んで全体像をつかむ。章末の確認テストで間違えたところを本文で振り返って、全科目最低3周。
ワークブックは大変分厚くて重いので、科目ごとに裁断して透明カバーをつけて持ち歩いていた(裁断して脆くなっているためと、単純に1冊ずつ丁寧に装丁してあげることで気分を上げるため)。時々サボることもあったけれど、通勤の電車や休みの日にせっせと読んだ。
ちなみに、毎日のモチベーション維持のために学習の記録をつけるようにしていて、どの科目を何分やったかを書いて栞にしていた。頑張りが可視化されるので、たくさん勉強した後ニンマリできておすすめである。

ここまでで12月頭、1か月強かかっている。ただただ読むという作業なので、集中力の維持が難しく苦行だった。メリハリをつける意味では、3周やり切る前に過去問に着手して、あとで振り返り的にワークブックに戻ってくるのもよかったかもしれない。

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2か月前 過去問三昧

12月は、休日をすべて過去問にあてた(というと聞こえはいいが、実際は全然朝起きられなくて計画は常に後ろ倒しだった…)。直近3回分の過去問を3周。把握できていない内容をマークして付箋を貼っておき、あとでまとめてワークブックの該当箇所を確認してそこに付箋を移すという作業を行った。過去問は過去に出題された問題であり、そのまま同じものが出ることはまずない。しかし、同じ事柄を異なる切り口から問うてくる可能性は十分あり、それに対応できるための知識を頭に叩き込んでおく必要がある。わからない・知らない、を徹底的につぶしていくことが自信になるのだ。

共通科目は科目数が多く、どれもまんべんなく得点できる力をつけておかないと足切り(0点の科目があるとその時点で不合格になる)のリスクがある。共通科目に重点を置いて、上記の過去問3周の合間に共通科目の一問一答を3周。百均で買った透明の細い付箋を間違えた問題につけていって、正解したら剥がす、間違えるたびに重ね貼りしていくことを繰り返した。付箋だらけの参考書を見て「ここまでやったぞ」、回収されて手元に帰ってくる付箋の山を見て「これだけわかるようになったぞ」と再びニンマリするためである。わたしはこうやって自分を奮い立たせたり承認したりすることで満たされる人なんだろう。

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3週間前 「書いて覚える」

ときどきサボったり、二度寝三度寝をしたりしていたわたしだけれど、さすがに3週間前には焦りから集中力が高まった。1週間前にはタイミングよく3連休をもらえたこともあり、かつてないほど猛烈に勉強した。

ここまで、テキストを「読む」とか「線を引く」とか「メモを書き込む」という形で学習を進めてきた。一方で大学受験の頃に好んでやっていた「ノートにまとめる」という作業は意図的に避けた。それは、「まとめる」にこだわることでスピードが落ちる(やりきれない)懸念があったことと、通勤電車の中が試験対策の主戦場だったことが主な理由である。しかし、ここへ来てA4の方眼ノートを購入した。どうしても書きたくなったのだ。
「読む」とか「線を引く」という作業は、とても受動的だ。頭を半分しか使わなくてもなんとなく済んでしまう。だから手を動かして視覚で捉え直しながら復習することで、頭に情報が残していくのだ。間違えた箇所の解説を写したり、ワークブックで確認した内容をメモしたりした。これはあくまでも知識を定着させるための作業であって、あとで丁寧に見返すことはあまり想定していない。したがって文字のバランスとか色彩の美しさとかは一切気にしない。ひたすら水性インクの黒いペンで書きなぐった。わずか3週間でノートを1冊使い切り、2冊目に突入した。家中からかき集めた水性ペンたちのインクを切らした(長時間書き続けても手が痛くならない水性ペンがおすすめ)。この勉強法がわたしにはフィットしていたようで、試験前の高揚感も相まって妙に楽しかった。

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前日 専門科目の仕上げ

精神保健福祉士国家試験は2日がかりで、初日午後が専門科目、2日目午前が共通科目である。共通科目重視でいつも二の次だった専門科目。前日だけはすべてのエネルギーを専門科目に注ぎ込むことにした。仕事を早めに切り上げて、過去問3年分の4周目をして間違えた問題を解き直した。それが済んだら、ワークブックの付箋箇所をチェックしてノートに書きなぐった。ワークブックの付箋箇所というのは、過去問でひっかかったポイントである。最後に見直して、ちゃんと頭に入っているかを確認する。朝起きるのが心配だったので、やり切る前に早めに就寝した。

1日目 専門科目受験

朝、余裕をもって起床。出発前に1時間ほど昨日の続きをやる。受験票、シャーペン2本、消しゴム、腕時計、専門科目のワークブック、A4ノート、水性ペン、水、膝掛けを持って出発。(普段バラして持ち歩いている)ワークブックを全冊入れたのでリュックが異常に重い。しかし、土壇場で後悔したくなかったので我慢。会場がどういうところかまったく見当がつかず、感染症対策で換気をするので防寒具を用意せよとの注意書きに怯えながら膝掛けを詰め込んだ(結果的にはむしろ暑いぐらいで必要なかったが)。

会場は広い展示場だった。早めに来た大勢の人たちが一度に押しかけたので大混雑であった。押し合いへし合い(嗚呼、密!)しながらなんとか自席にたどりついた。展示場内がいくつかのゾーンに仕切られていて、それぞれに試験監督がついていた。説明等のアナウンスは館内放送で、マスクにフェイスシールドの試験監督たちは基本的に喋らない。説明が始まる前から机の間を歩いていて、追い込み中の受験者にペンケースはしまってくださいとか荷物を通路に置かないでとか個別に小声で声をかけていた。

トイレ(女子)はかなり並んでいた。20分ほど待っただろうか。ワークブックの図や表を読み込む時間にした。

試験は2時間20分。模試を受けなかったので、正直ぶっつけ本番だった。しかし、時間が足りなくなって焦るような問題数ではないので、試験対策が十分できていない状況で下手に模試を受けて結果に落ち込むよりも、着実に学習を進めることを優先したのは悪くない選択だったと思う。
試験開始から1時間で途中退室が可能になる。念入りに見直しをして(正答を2つ選ぶ問題を複数見落としていたことに気がつく)、途中退室ができるギリギリの時間(終了10分前まで)で挙手して退室をした。退場の混雑が予想されたので、一足先に抜けて明日に備えたかったからだ。

リュックには専門科目のテキストしか入れていなかったので、帰り道はそわそわと落ち着かなかった。解答速報が出ていないかネットを見てみたが、明日の夜まで出ないと知り拍子抜けした。終わった試験の心配より、明日のために勉強をしろということだろう。

共通科目の仕上げは、一問一答で。付箋のついている箇所だけ5周目、6周目をして、最後はワークブックを見直した。

2日目 共通科目受験

早起きをして、昨日通った道を行く。ひざ掛けは持たず、浜松町駅構内でトイレを済ませてから会場入り。昨日ほど時間の余裕をもたずに到着したので、周囲の席はすでにほとんど埋まっていた。

ノートに走り書きをしながら心を落ち着かせる。「書く」ことは、情緒の安定にもつながるらしい。いつもと同じ作業を淡々と繰り返すから、気持ちがほぐれるのだろう。

共通科目の試験は2時間15分。昨日より5分短いけれど、かなり疲れた。解くスピードが遅くて少し焦りもあった。見直しをする段階にはすっかり疲弊していて、丁寧な見直しを優先して今回ばかりは途中退室を見送ることにした。

混雑回避のため時間差での退室が案内され、解放感を噛み締めながらウキウキと会場を後にした。ウキウキは次第に「受かっていなかったらどうしよう」の結果への不安に変わる。今までは勉強に打ち込むことでかき消していたその不安を前に、今やわたしはなすすべもない。ただ静かに21時の解答速報発表を待つばかりである。同日に社会福祉士を受けた友人たちとLINEで互いをねぎらいながら、帰り道に百均で買ったかぎ針と毛糸ではじめてのかぎ針編みに挑戦する。不安をかき消す何かが必要だった。

21時過ぎ。同居人に解答を読み上げてもらい、一喜一憂しながら自己採点をした。結果は7割強の得点。例年6割が合格ラインなので、深い深い安堵のため息がもれた。よかった、来年受けなくていい。

大学入試にはじまり、保育士に精神保健福祉士にとゴリゴリの受験勉強をしてきた。もう次はないかもしれない(少なくとも今はもうこりごりだ)から、ここまでの軌跡をこうしてnoteに残しておくことにした。10年後にわたしを励ましてくれるかもしれないし、もしかしたらほかの誰かの役に立つことがあるかもしれない。そんな淡い期待も抱きながら、ひとまずわたしにお疲れと言ってあげよう。

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