得難いひと

訃報。まだ若いのに。
のっけから「腹上死であった、と記載されている」から始まる『後宮小説』をを読んだときの衝撃は忘れられん。つい歴史の教科書を並べてしもたくらい史実を押さえながら架空の世界を広げるのがうまかった。

審査員の井上ひさしに「もっと騙してくれ」と評されていた。あぁせやった。これはフィクションなんや。こんな歴史はどこにもない。せやけど「あの時代ならそゆこと起きるんじゃね?」と錯覚させてくれるのだ。ほんま、細かいところもよぅできとるしそれがまたほころばん。確固たる石板を鉄の糸で縫うたんかと思う。

アニメになって武豊の奥さんが声当てた。録画せなんだことをのたうちまわるほど後悔した。
なに食ったらそんな話が書けるんですか?
コンビニおにぎりはなにが好きですか?
あなたの腕食ったらオイラもそんな話が思いつけるようになりますか?

指輪物語やドラクエだけがファンタジーやないんやな。エルフやドワーフや魔導師がおらんでもファンタジーは成り立つんやな。オイラを想像もつかん新たな世界で押し潰してくれた。這々の態で抜け出してみたら『墨攻』だ。映画化も漫画家もされた。若き吉宗、いや、オイラはこう呟いた。
「ファンタジーとは」

オイラにとってあなたは得難い人物でした。
あの世でお目にかかれたら「コンビニおにぎりどれが好きですか?」とお聞きします。もぅ買いに行けんのにお聞きするほど舞い上がるでしょう。
そのくらいあなたを確立されたジャンルのように尊敬しているのです。

作家の酒見賢一さん死去 「後宮小説」でファンタジー大賞 | 2023/11/15 - 共同通信
https://nordot.app/1097458946953970261?c=39550187727945729

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