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旅と、高揚/ハノイへ

今回の旅は、べトナム、ハノイへ。幼馴染の友人と行くはずだった。

ただ友人が怪我をしてしまい、急遽行けなくなってしまった。休みも航空券も既に取っていたので、一人で行くことに。もともと2人で東南アジアに旅をしたいね。と前から話していたことを実現するために決めたのが、距離も比較的近く、航空券もお手頃で、2人も行ったことのないハノイだった。

ひとりでは特に行きたい場所も目的もない。ただ、20歳の頃以来の東南アジアひとり旅。きっと楽しいものになるだろうと思った。

忙しない日々が過ぎて、気付けば当日に。リサーチは一冊ハノイの本を読んだのと、友人からお勧めを聞いた程度。3泊4日、どう過ごそうか。せっかくだからハノイの中心地だけでなく、近くの街にも旅をしたい。ハノイから近い有名な観光地といえばハロン湾だけど、観光地らしい人の多い場所に行く気持ちになれなかった。そうして調べている中で見つかったのが、陸のハロン湾とも言われる世界遺産の街「ニンビン」。ハノイからも2時間で行けるらしい。2日目にここに行ってみることだけ決めていた。

成田空港からベネジェットエアでハノイへ。5時間半のフライトでは、星野源の『いのちの車窓から 2』を読んだり、うとうとしながら過ごした。

到着する少し前から、頭が痛かった。

ノイバイ国際空港からは、タクシーで宿へ。車窓から見える景色は、亜熱帯の植物が青々としていて、東南アジアに来たなと感じる。ハノイの街に近づくと、ものすごいバイクの量。噂には聞いていたけれど、本当に歩道も何も関係なく、隙間ができたらすぐにバイクが差し込んでくるような量だった。そして鳴り止まないクラクションがうるさい。頭が痛いのでつらい。

ホテルの前の通り
ファミリールーム

宿泊したのは「ラ ストーリア ルビー ホテル Eliana Ruby Hotel & Travel

ハノイの中心地に近いこの宿を、1泊目と3泊目の宿に選んだ。

ホテルの方はとても親切で、上手な英語で様々な観光情報を教えてくれる。ベトナムの宿はコンシェルジュ業務を多く担当していて、予約時点から移動手段、ツアーの手配等も行ってくれるのでありがたい。ひとまず翌日のニンビンへのバスと、帰りの空港までのバスの情報をここで得る。

空きがあるので、と広々としたファミリールームを用意してくれた。シャワーを浴びたら少し頭痛も和らいだので、少し街へ。

10月初旬のハノイは、夏の装いだが、汗ばむほどではない心地よい気温だった。

train street

少しして、気付く。あれ、なんだか普通に地元の公園を歩くような気持ちだ。見える景色も、言葉も、人も。まぎれもなく初めてのもので、旅らしいものなのだけど。

ハノイ大教会

頭が少し痛いのが影響しているのかな、と思いながら歩き、この日はクラフトビールのお店「Pasteur Street Craft Beer」で一杯だけビールを飲んで、見かけたレストランでブンチャーを食べて、宿に戻ってすぐに寝た。

Pasteur Street Craft Beerで出会った子。やさしくて可愛かった。


2日目の朝。頭痛もなく頭もすっきりしている!今日は存分に楽しもう。そんな気持ちで宿でフォーを食べてから、街へ。今日は水辺に行くことにした。

Cong Capheのヨーグルトコーヒー

初めての街に行くときは、基本的に湖や海、そしてその近くにいい公園やカフェがないかをいつも探す。ハノイの中心地には2つの湖があって、ひとつは旧市街の中心に位置するホアンキエム湖という小さな湖。もうひとつは、旧市街の北に位置する広大な西湖だ。

どちらも行ってみようと思ったのだが、最初に気になったのは西湖の一部。この赤いピンの立てた、丸く湖側に出っぱった土地だった。ここを丸くぐるっと回ってみたいし、道路で区切られた小さな水辺はきっと穏やかだろうと思い行ってみることに。

コーヒー屋さんの前でバイクタクシーの運転手さんに価格交渉をし、連れて行ってもらう。

到着すると、そこはハノイ旧市街とはうってかわって人も少なく、自然な居心地の良い空気が流れていた。

ああ落ち着く。しっかり呼吸が出来る。みんな水辺を眺めながらトレーニングをしたり、お茶をしたり、手仕事をしている。どの国でも、水辺の近くにいる人たちとは趣味が合うと思う。以前ひとりで旅した、ルアンパバーンの川沿いの空気を思い出した。

そのまま西湖沿いをぐるっと散歩。

歩き疲れて立ち寄ったコーヒーショップで今日の午後から行くことを検討しているニンビンについて最近ホーチミンから移住してきたという若いお兄さんからお話を聞いた。6月頃から英語の勉強に力を入れていたので、こういう実践のコミュニケーションができるのは嬉しい。

のんびりしてから、次はホワンキエム湖へ。

ホワンキエム湖には多くの人がいて、大きな音楽がかかっていて、賑やかな印象。整備された綺麗な花畑やフォトスポットもあり、中心地の水辺という感じがする。

ランチは湖からほど近い、「Pizza 4P’s」へ。ここは日本人が経営する、ベトナムで10店舗以上あるピザ屋。ハノイに行くというと身近なセンスの良い方はみなさんこのお店の名前を出したので、行ってみることに。

ハーフ&ハーフピザを注文するとピザーラでいうとLサイズくらいのものが出てきた。偶然隣に座っていたのが日本人の一人旅の方でお話をしていたので、同じくハーフ&ハーフを注文していたその方とピザの味を交換しつつ食べきった。美味しかった。

ホテルに戻り、乗合のタクシーでニンビンへ向かう。途中休憩のために降りたサービスエリアのようなお店で、乗ってきたはずのタクシーが見当たらなくなって、同乗していたイタリアの方と一緒に困ったね〜と話していたが無事戻ってきてくれた。よかった。

徐々に景色が変わってくる。


宿の近くまで来たところで、車窓からとても美しい水辺が見えた。そして今はちょうど日没直前。宿に着いて、荷物を置いて、レンタサイクルを借りて急いでその水辺まで戻った。ハノイとは違い、身体に入ってくる空気が爽やかだ。

幻想的な景色。ぽこぽことした岩山、鏡のような湖がオレンジ色に照らされる。「地球にいる」ことを実感する景色。ああ、この街に来ることを決めてよかったな。

空も綺麗で、暗くなるまでゆっくりと過ごした。

ニンビンで泊まった宿は、ベトナム料理をみんなで囲みながら、旅人同士の交流をするという会を毎晩やっているようで、せっかくなので参加してみた。はじめはメキシコから来た青年と旅の話をしていたけれど、段々と人数が増えて10人くらいの英語での会話となると、理解して言葉が見つかる頃には次の話になっていて、全然言葉が出せなかった。まだまだ勉強しなくちゃな。(ただ、あとから思い返すと日本でも10人くらいのグループになったらあんまり自分は話さないわとも思った。)

旅中は、毎日10時に寝て6時くらいに起きていた。
朝の光

宿での朝ごはん。一品はレストランのメニューから自由に注文をして、その他フルーツ等のビュッフェを楽しめるスタイル。テラス席に吹く風が気持ちがよかった。

ニンビン観光で有名なのは川下り。チャンアンのボート乗り場に行ったが、観光地観光地した感じが今の気分に合わないので、ボートには乗らず、ムア洞窟へ向かう。

ムア洞窟は、500段ほど石段を登った先の絶景が人気のスポット。宿から15分ほど自転車を走らせたら到着。

10万ドンの入場料を払って公園内に入ると、レストランやカフェ、売店が並ぶ感じのいいスペースがあり、その中にムア洞窟はある。

ひたすらに石段を登る。気温は30℃ほどで、湿度が低いとはいえ流石に汗をかく。でも、段々と変わっていく景色が綺麗。そして身体を動かすのはやっぱり楽しい。

そして頂上へ。絶景でした。ただ人も多くゆっくりするスペースがなかったので、一息ついたらすぐに下山。一段一段がとても高いので、くだりはかなり危険を感じる。

木漏れ日の降り注ぐ公園

無事降りて、売店でビールを買って飲む。流石に美味しい。公園のスペースが心地よく、音楽を聴いたり、ぼーっとしたりして過ごす。

宿に帰る途中のレストランでバインミーを食べた。注文する時、お腹が減っていたので他の麺料理とかも頼んじゃおうかなと悩んでやめたけれど、30cmくらいあるバインミーが届いて危なかった…と思った。美味しかった。

もう見たい景色は見れたし、あとはゆっくりしようと宿に戻り、プールサイドで予約したタクシーを待って過ごした。映画「プール」を思い出して、ハンバートハンバートの「妙なる調べ」を聴いた。帰ったら久々に観ようかな。

13時頃出発して、16時頃に宿に戻った。日曜なのもあり、ハノイの中心地が渋滞していて、乗合タクシー→別のタクシー→バイクタクシーと、運転手に言われるがまま何度も乗り換えをして宿に到着した。疲れたのでシャワーを浴びて少し寝る。

夕方頃から動き出し、スーパーやショップでお土産を買い、ナイトマーケットを歩き、食堂でブンチャーを食べて、バーに行ってビールを飲む。

明日の早朝のフライトで、日本に帰る。


あれ、このまま旅が終わってしまう。

大きな心の動きがないまま、終わってしまう。楽しく、いい時間もあった。でも、緊張や、感動、そして高揚を特に感じることもないまま終わってしまう。

その事実を自覚して、不安に襲われる。最近、自分自身の心の動きが少なくなっていることは感じていた。でも自分にとって旅は純粋に好きなもので、旅と高揚はセットのはずだった。

僕は自分がたのしく日々を過ごすために、「高揚」を重視している。基本的には穏やかな日々を求めているが、その中にたまに生きている喜びを強く実感するような体験をつくっていきたいと思っている。

「海外への旅」という、心の動きを生むための、ひとつの魔法のような選択肢を失ってしまったような気持ちになった。あれ、これから先どうしよう。自分は何を楽しいと思うのだろう。何が自分の心を動かすのだろう。

翌朝。早朝のフライトで帰路へ。

飛行機の中では、今の自分の考えをノートに書き出した。

気分が上がらなかった理由は?

・海外への旅に慣れたから。
・旅で問題がない程度には英語が出来るようになった。
・でも海外の方と仲良くなるほどには英語が出来るわけではない。
・自分の興味があるもの、そして心地良い過ごし方がわかってきて、一人だとそれを選んでしまう。
・ハノイ自体に、行きたい場所がもともと特になかった上に、あまり下調べをしなかった。
・昨年の北欧旅の感想をまだまとめられていない。最近はインプットが多くて処理しきれず、ちゃんと受け止める余白が残っていないからか。

書いていると自分の気持ちや状況が理解できて、落ち着いてきた。自分の性格なら、これを楽しめないのは仕方がないなとか、今度はもう少し歴史やそこに住む人のことを調べてから旅に行こう。などと具体的に出来ることも見えてくる。

そして、書き出した中で一番自分の気持ちにフィットしたのはこの言葉だった。

今、自分が時間をかけたいのは、「好きな人たちと、好きな場所で、自分の仕事をしながら生きていく。」というほしい未来に向けて、自分の仕事をつくること、表現をすること、学ぶこと、住む場所を探すこと。

動ける元気と体力と、お休みをとれる、旅に行ける状況があるという奇跡を逃さまいと今年も旅を多くしてきたし、素晴らしい経験をしてきた。後悔はない。

でも多分、今の自分にとって面白いことは、熱を注げることは、今と未来に目を向けて、具体的に動くことにあるのかもしれない。

そのために出来ることが、やりたいことが決まっているにも関わらず、そこに時間を注げていない状況が自分の楽しい!という感情に歯止めをかけていたのかもしれないな。

あくまで仮説ではあるけれど、納得した。旅先も、今は未知の海外よりも、いつか住んでみたいと思っている日本の各地をもっと深く知ること、関係性を深めることに興味が湧く。

今回の旅は、これに気付くための一人旅だったのかもしれないな。本当に友人と一緒に来たかったのは間違いないし、それなら純粋に楽しい旅になっていて、それも最高だっただろうけれど、今、この自分の状態に気付けて良かった。

人の気持ちは揺れ動く。

心から好きだったものが、そうでなくなったとしても、未来がずっとそうという訳ではない。色々書いたけれど、ただ今回がそうだったというだけかもしれない。きっとひとりで海外に行くのも、また心から楽しめる日が来るだろう。

ベトナム、ごはんがとにかく美味しくて、誠実な方も多くて居心地がよかったな。また来ることになる気がする。

今回の旅の記録はここまで。次は、今度こそ、自分の人生に大きな影響を与えた北欧旅の記録を書こうと思うので、よければ読んでくださいね。



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