9月の読書

8.ユージニア

恩田陸著
ミステリー

北陸K市で起きた大量毒殺事件。事件には謎が多く捜査は困難を極めた。数カ月後、ある男の自殺をし、自身が犯人だとする自供の遺書を残していたことから事件は幕を閉じた。
それから数十年、様々な人から語られることで浮かび上がる事件の真実とは。

従来のミステリーのようにまず事件が起こってトリックがあってそれを探偵が解き明かして犯人は誰々だ!みたいな明確なものではなく、わざと謎を残して読者に深く考え込ませるミステリー。全十四章ごとに語り手や視点が変化し、事件の真相に近づいていく・・・と思いきや謎が深まっていく、絡まった糸をほどこうともがいてなんか余計絡まったみたいな、劇中の舞台金沢の湿っけが肌にまとわりつくかのようなモヤモヤ感。
わざと核心については伏せて細かな謎を残してあり、後から読み直して色々考察すると楽しい。

おそらく事件の謎を紐解くミステリーが本質ではなく事件を通してその関係者それぞれの人間性が紐解かれるもの。
この恩田陸ならではの緻密な人間描写とミステリー構造が妙となった小説のように感じた。


これ感想を書く習慣を付けた今だからこそ良い方向に読後感があるけど、以前の読書苦手の自分がたまたま手に取っていたら評価が全く違っただろうなあ。
読書習慣はいい感じ。次の本もまた違ったジャンルに挑戦予定!

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