籤引き仏

 桃の木の上に仏様がおりました。

 誰も仏様を見たことはありませんでしたが、皆が仏様だというので仏様ということになりました。

 その桃の木は村と村をつなぐ道でしたので多くの者がその仏様を見たのでした。

 仏様は気まぐれに花や光をふらせ、人々を喜ばせたのです。

 仏様に拝む者も出始めたころです。

「あたりあたり」

 仏様がそう言うと手を伸ばし拝んでいる者を一人捕まえ食べました。

 そして仏様は気まぐれに花や光をふらせたり手を伸ばし通行人を捕まえ食べたりしたのでした。

「あたりあたり」

 と仏様が言うと仏様は手を伸ばし人を捕まえ食べます。

「はずれはずれ」

 と仏様が言うと、何かの実が頭に当たりました。

 運の悪い者に当たりも外れも当たったのでした。

 一人の尼さんが仏様に頼みました。

「私は祈ることを第一に生きてまいりました、私を極楽にお選びください」

 尼様が頼みますと、仏様は、

「はずれはずれ」

 と言い、その言葉で尼さんは気を失いそのまま死んでしまったのです。

 仏様の所に食べてもらえば極楽に行けると思ったお坊さんや尼さんが集まるようになりました。

 そして仏様のあたりはずれに喜び、悲しみそして嫉妬したりしたのでした。

「仏様にお坊様達が集まっているのに良いことが何もない」

 人々はため息をつきました。

 人々の願いは平和に暮らすことだったので、お坊様達の行動が理解できませんでした。

 人々は仏様をくじびきぼとけと呼ぶようになりました。

 お坊様にも様々な方がいます。

 ソウヤという名のお坊様は侍の家に生まれたので弓が得意でした。

 ソウヤは仏様を一目見ると迷わずに矢を放ったのでした。

 仏様はぐえっと鳴き地面に落ちました。

 人々が集まると一匹の蛙が倒れていたのでした。

 ソウヤは人々に言ったそうです。

「もし仏様なら矢は届かないだろう。怪しければ射てばいいのだ、くじ引きのように引けば、当り外れが分かるのだから」

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