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なかにし(nia)
2016年9月8日 19:02
雑踏に嫌気がさして少しだけ厭世的な気分になったら、ここに来る。決めていたわけじゃないけれどいつの間にか、ある種のルーティンやおまじないのように、僕は「05」と書かれた小汚いビルの屋上に足を運ぶようになっていた。5という数字は好きだ。ぴかぴかのビルじゃない辺りもまた、僕にとっては都合が良く思えた。美人が苦手なのと一緒で、綺麗すぎるビルなんてものもあまり得意じゃない。パーカーやスニーカーが似合うくら
2016年7月20日 16:05
眩い朝だった。或は、それは夜だったのかもしれない。薄っすらと目を開けた僕の視界に、大きな影が揺れた。頬を撫でる風は確かに自然な不安定さを保ち、ここが外であるということを僕に知らせる。淡い桃色の、綿菓子のような空が見えた。確か、僕は一人で学校からの帰り道を歩いていたんだ。いつも通りの見慣れた景色。すれ違う友人は、僕が住むアパートの4ヶ月分くらいの値段もするロードバイクにまたがって
2016年7月16日 01:35
毎年、夏になるとサークルの仲間五人と一緒に海沿いのコテージへ行ってバーベキューをする。夜には花火を楽しんで、お酒片手に星空を見上げるのが毎年の楽しみ。今年でついに四回目、サークルのみんなと過ごせる最後の夏だ。来年にはきっと、みんながそれぞれの環境で新しいコミュニティに身を置いている。「うっそ、雨?」 バーベキューの終盤、加奈子の声がして、空を仰いだ。曇天。朝の天気予報では晴れのち曇り、だ