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「第三回川瀬露秋の会 ~懐い継なぐ~」

紀尾井ホール小ホール。
生田流箏曲白秋会を率いるお家元の会。
江戸時代の曲を、箏・三味線・胡弓で演奏。

と聞くと、
堅苦しそう、かしこまって聞かなくてはならなくて、そして眠そう。
そんなイメージを持たれるかもしれません。
しかし、そのイメージが覆る「演奏会」ではなく「ライブ」でした。
 
幕開けは2面の長磯箏で「みだれ/京みだれ」
長磯箏は、豪華な装飾がなされたお箏です。
蒔絵や螺鈿、鼈甲で彩られたお箏は今や貴重な骨董品。
拝見するだけでうっとりしてしまいます。
現在、通常の演奏会で使われているお箏は、音の響きを重視して改良され、長磯箏のような装飾は付いていません。
逆に言うと、長磯箏はその装飾があるため、残響が短く、ポツポツとした素朴な音に聞こえます。
しかし、このポツポツ音が、小ホールのちょうどよい広さと相まって、2面のお箏がおしゃべりをしているかのように心地よく鳴っています。
八橋検校作曲「みだれ」に、替手は京都に伝承されていた「京みだれ」
八橋検校の時代は、お箏が改良される前になります。
もちろん今のような大きなホールもなかったことでしょう。
こぢんまりと集まり、このお箏の音でこの曲を楽しんでいた当時の人々の中に混ざって、一緒に聞いている気分になりました。
 
今回の公演は、副題に「懐い、継なぐ(おもい、つなぐ)」と付けられています。
露秋さんの師匠であられた白秋さんが亡くなられて10年。
師匠への想いと、受け継いだ芸の継承を込めての会でもあります。
「袖香爐」は峰崎勾当が師匠である豊賀検校の追善曲として作られたとのこと。
袖に忍ばせた香炉の伽羅の香りに師を偲び、旅立つ雁に師との別れを重ねた曲です。
三絃の旋律に、切ない胡弓の音色が寄り添います。
曲、というより心語り。
心に広がる哀しみや慈しみ、懐かしさ、有り難さが、音となって会場を包み込みます。
とても心が暖かくなりました。
 
続いて、プログラムには
「おはなし」葛西聖司
とありますが、露秋さんと藤井さんもご登場してのトークショーです。
演奏家さんは、マイクを持って、自分のことをお話しすることがあまりないのですが、明るく楽しいお人柄のお二人。人となりがとてもよく分かる楽しい時間でした。
この時間は撮影もOKとのことで、客席から一斉にカメラを向けると、舞台からもよいですか、と双方撮影タイムになりました。
 
最後の「吾妻獅子」は山田流箏曲の萩岡松韻さん松柯さんがお箏を担当されました。
松韻さんは、白秋さんとも度々共演されたご縁でのご登場とのこと。
山田流ならではの軽やかな演奏と唄。そこに露秋さんと藤井さんの三味線、川瀬庸輔さんの尺八で、華やかに締めくくられました。
 
「お堅そう」に思えた演奏会は、
「静かにかしこまって」ではなく「息を呑んで食い入るように」聴いていた満員御礼のお客様と、それに応えるように演奏してくださった舞台上のみなさま、葛西さんの楽しい解説も相まって、会場中が一体化したライブでした。
休憩時間中も、終演後も、ロビーからは楽しい明るい声が溢れていました。

帰りには皆さまにお花を配ってくださいました。
いただいたお花を抱きかかえながら、幸せな気持ちで家路につきました。
素敵な演奏、素敵な時間を、本当にありがとうございます。
 
*「さん」とお呼びするのは、大変失礼であると重々承知しておりますが、「客席からの眺め」では、「先生」方も、「さん」付けで表記させていただいております。何卒ご了承くださいませ。
 
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。
https://gainful-butter-9171.glideapp.io/
 
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会場 紀尾井ホール小ホール
日時 2024年3月18日(月) 18:30
 
みだれ 京みだれ 八橋検校作曲
 箏(みだれ)藤井泰和 箏(京みだれ)川瀬露秋
袖香爐 峰崎勾当作曲
 三絃 福田栄香 胡弓 川瀬露秋
おはなし 葛西聖司
吾妻獅子 峰崎勾当作曲
 箏 萩岡松韻 萩岡松柯
 三絃 藤井泰和 川瀬露秋
 尺八 川瀬庸輔

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