スパイスでカレー。
いきなりですが、昔サークルにカレーをスパイスで作る先輩がいたんです。当時その先輩のイメージが、そつなくこなす「デキる人」タイプだったので、スパイスからカレーを作るってことを、「ちゃんとした人がやるもの」という位置づけに置いて生きてきました。
なんたる偏見の塊。
まあ、何を言いたいかって、私からはとっても縁遠いものだと思ってました、ってことです。不器用で大雑把な性格を自覚しているので、そんな大層なことができるわけがない、と。
なのでカレールゥ様の恩恵に預かっていたのですが、そんな私が、なんと現在スパイスでカレーを作るようになりました。全然「デキる人」でも「ちゃんとした人」でもないくせに、作るようになったのです。カレーごときで大袈裟ですが、人生何が起きるか分からないですね。
きっかけは、母の大病からでした。
それはまだ暑さの残る9月のこと。母が大動脈乖離により緊急手術をしました。手術自体は無事に終わったのですが、その結果、お医者様より、塩分とカロリーの摂取制限が宣告されました。
「一日6gの塩と、一食550kcal以内の食事」
食べることが生き甲斐のような母にとって、それは地獄のような宣告だったことでしょう。
佐々木倫子先生の漫画『Heaven?ご苦楽レストラン』の中で
「カロリーの低いものはおいしくない!!」
という、一同から「暴言だ…」と突っ込まれる名台詞(個人的に)があるのですが、まさにそれを地で行く我が母君。
いざカロリー制限が始まり、しばらくは堪えていても、やはりステーキ、ピザ、カレー、餃子、天ぷら、唐揚げ、ケーキにスナック菓子etc…カロリーの塊をいっぱい食べたい思いは募るばかり。
もちろん、栄養士の先生は「絶対食べてはいけないということではありませんよ。前後で調整して少しずつなら良いですよ」とおっしゃってくださりますし、カロリーを抑えたレシピも世の中には存在します。
しかしそれでは食べた気持ちになれない…と漏らす母君。我慢のストレスもまた負担になるだろうし、こちらとしても「アレもコレもダメ」とはかなり言うのは辛い。
何かいい打開策はないだろうか…と思い、食事制限のコツなど書かれているパンフレットを見ていた時のこと。
「塩の代わりに香辛料を積極的に使いましょう」
と今まで何度も読んでいた文言にハッとしました。
カレーだ!
実は母は、カレーが異常なほど大好きで、毎日毎食でも良い、と言うくらいの人間です。実際に若い頃、毎日3食カレー生活をしたことがあるらしいのですが、徐々に肌が黄色くなってきたので周りから止められた、という恐ろしいエピソードを持っています。
それまでも市販のカレールゥの「塩分控えめ」や「カロリーオフ」のものを使って作っておりましたが、考えたらカレーって香辛料の塊なわけで。スパイスだけで作れば、まずほとんど塩分を気にしなくて平気なことに気付き、私は「エウレカ!」と叫びたくなるような気持ちになりました。
そんなわけで、私はスパイスカレー作りを始めたのでした。
ハードルを上げていたスパイスカレーでしたが、凝らなければ案外簡単に出来ることが発覚。ネットで調べてみれば、100円ショップでもスパイスを買えてしまう、と出てきて驚きでした。
ご興味ある方はぜひ検索してみてください。
色々な方が色々なレシピを公開されているのですが、私が手にしたのは、稲田俊輔さん著の『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー』という本でした。友人が貸してくれたのですが、分かりやすくて、作り手に寄り添ってくれる優しいレシピ本です。
そのレシピをベースに、塩を使えない分スパイスを増やしたり、カロリー減らすためにとにかく野菜を入れたりと試行錯誤。
その結果、母が「美味しい」と食べてくれることがなにより嬉しい。普段、カロリー調整用に販売されているお弁当も利用しているんですが、食べる時のテンションが違います。
「母さん、こんなにカレー食べてて本当に飽きないの?」と言いながら、暇さえあればカレーを作る日々。喜んでくれるとこっちも作りがいがあるってもんですよね。
美味しく食べられることが、人生を楽しく豊かにしてくれる。
改めて痛感しております。
スパイスカレーの組み合わせはもう無限大。
おすすめ配合があったら是非教えていただきたいです。
今回ご紹介させていただいた本はこちら。
https://www.amazon.co.jp/南インド料理店総料理長が教える-だいたい15分!本格インドカレー-稲田-俊輔-ebook/dp/B084GJFHV7/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=稲田+カレー&qid=1614752999&sr=8-1