詩の砂時計


【作者のための意識調査】

詩が溶けていく。まだ始まらぬうちに、これを拒絶するのは正解也。
わたしの文学は『拒絶』の夢魔を心に招くのだ。
それでもわたしはこの文学を味わうあなたを見出したい。このもどかしさが最初の持ち物だ。早速起こしてみよう。

辿る山犬

 惨状 白雪に無く
 街の飛行でただ流麗 歴史の舟
 音は濡れた黒の星空 命の声は高くなりゆき
魔性の翅は透ける 橋に込められる
歌のバレット 影のシグナル

穹窿

震えて聳えた 眠りの岸にそりを待ち
緩衝の下で雨を灼く
咲く詩の方へ 単一の日々に駆る
ただ深紅の身の先で

XLIFE

魂の靴には 音の鍵が危機を焚き
満天の海の国は通る
無窮 さざめきは炎に留める
冷たき思念の村 押すこの雛

砂に名を馳せ 凍結に文を撃つ
まどろみの橋の園がかかる
支配の恐慌 悪辣の雅
着て立て
単純の庵の中 不動は時雨を撫でる
つがえた風の海で 多重のいきれが咒い

不定火焔の苦情哀憐調。

謬算湾の退廃的地久


御簾の名に 聞けと涼しく火を咲く
久遠を焚け 必然の舟には脆く綴り
魔術の路肩に死をぬぐう 不一致 謬刑の空
冷たき灯篭が来るまで

ことのは天象野

ただいくつもの手が伸びて
ほとりに咲く風の花
萌えて、聞こえる日々に
知られずに、生きては浮く炎
野辺に響け、霧は透明の果てよ

岸に月光の梅が着き
微かに疾走の息を継ぎ

晴れてなお、波は翅を焼く
木々に飛べよ、枯れぬかと
凍えて、灯りだす意思を
朽ち果てずに、死しては行く島の
尾根に響け、息が高潔を魅せよ

岸に月光の雪が鳴き
幽き一切の時に生き

夢に泣け、すみれ野の
ただ身はここに在り

夢に泣け、異形の身
心内のみが朽ちぬように

放蕩者と翅

去れ意味の空で
運よ火をたがえよ
賛美の国に吹く意のまま
心を振るう刹那 金の島に眠る
凍結に荒む 笛の声

危機を飛ぶ数列の夢に泣き
余儀なきリフレインに見える消滅
シギが橋を架ける、何物に応えるように
すみれの暮れへと……

未知の石で翅は囁く
屹立の風を待て
幽谷にすべて来る
荘厳 翅が泣く、凍る陽の身を

丹念に安らぎを知り稲は吹く
旗幟の叫び ここへと
幾億もの誘いには 焔は猛る

すみれの夜風で汽車が舞い
桃の眼で運命を帰依を
竜胆の吐息に我を見る

宇宙の同時が今

夢か現か


詩とは虚無

糸は虚妄の

琴線穢す獣など「詩人」と呼び

疲弊の吐息を「小説」と呼ぶ

栄辱なるかな!

死とは詩歌

生の諦念の逃げ惑いには無く

神慣れて

安くしなびて

すべてを詩となすか?

詩とは虚無

詩とはすみれ。

 幻術微動

 見よ 雨桜

見よ 花の流れの永遠さ

見よ 畦道の果て無き革命の絵

 

空の声さえ聞こえない風景画

 

反逆はもはや虚無、この際に神は無く

 

脅迫の群れをも唐突に消え

 

見よ 冴えた季節の

見よ 空蝉は宇宙の真理で

見よ ただ一つ

 

退廃栄えて我の永劫

回廊陶冶


激しく縊る雨粒の
人は来て うずめた四季に術は泣く
丹念の罪が着く 嘆きの隅のように

 

無痛へ


此岸の栄誉で時を食み
魔術陰影、守衛の桜桃
滞る畝で迷妄の雲は瞬き
多重西瓜の真冬に中止は響けよ
祓魔師、静かに具有の氷がはためく

声の仕草に蕩ける山河 いつにも
割れ鉄 樹意識 枕写し
けざやかへさあ

愁嘆場に斧

無題


羊の鳴動
樹海の迷宮が震える
筒抜けの五月雨へ
ほどけた命の糸に抱かれ
魔人の涙が揺れる
東に行く風の 罪消しの夢が鳴り響く

さめざめとした捨て子の愚痴


凛々しく
華々しく
女々しく
白々しき
 
永遠なり
低廉狩り
清廉たり
霊園在る
 
言の葉さざめき想起せん
御足に御して誓いの花を上の空
横たえる愛を指して首は語る
やはり嘘つき、生きたことさえ許されぬ。

海嘯の嘘


孤独の楽園

至福の紫煙

孤独の楽園

自覚の庭園

さあ真理は数十年来のボクにあり

ただ詩歌数篇内おののく光

綴られた語りに希望を与えた!

慈愛のような幸福が

娼婦を棄てたことで得られようとは!

無上であろう、発見と幸福のシンボルが!

無定が囁く


透き通る雲が降る

詩の乱反射、純然たる屋敷の方へ

岸辺の遥か、貫くような空の秘法

月の白んだ水面の風が

 

嗚呼 風鳴らず

古きを嘆く夢の翼、剣を得よ、轟きを持ち

組まれよ水車の眼、命の道にも無敵が咲く

雀の望む鋼の枯れを

 

村の吹雪が止む

叡智に駆ける船はもはや無い

知りえぬ島から縋るように来る

霧の視線に何一つ

四季の毅然に足り

単純の歌に立たせ、帰依は何思う

桃月の菫


 霧笛が岸に伸びる

 風の塔を夢に過ぎ

 並びし思念の腕が翅を守り

 

 空前さあ進め、満船の意思のまま

 灯火が身に酔えば

 

 訪ねた河川に冬を

 晴れの凍る船に行き

 目覚めし鳥と園の冥号を見る

 

 山巓なお不滅、完全よ不死放る

 神水の詩に来たれ、丹念な記憶界

弾丸とレイフェン

空想が絶える息の枝垂れ桃の
花が蕩け 時の身
此岸は震え 日々の彼方 暮れる近似の才
割れる津の魔上 触れる危機の真の歌

戦場例と目

カデンツァ詠じ 紙魚の奥で 際の内の島へ
源泉凍る ナフタレンの人 まだらの支配
廃棄詩無数の術後 残存の旗幟は
ただ標榜せる

写し窓のさなか

下りゆく夢の朝
通りの雲間は軽く流れ 科の国
無窮の超越 聞きそびれの無重力状態
天翔ける 空想の魔法で木々は舟
空虚が非道 魔性の

森の声 嚠喨なるとこしえ艶やかに

火焔郷の古記録 其の一

麻が絹の詩へ まどろみで汲む空
呪いよ 思念の家へ 述懐の花で膿む夜へ
無常に忌まわしき 古老の迷宮 上に隠れ
天は怒号の土
孤独の嘘組む詩へ来たれ

火焔郷の古記録 其の五

水の音で息は目覚めた 死霊の月
晴れ裂いて虚無へ 見える身を着よ今
宝の超然を思慮に託し

屹立点への回帰路線

さあ泥の中 列車が狂い
不浄不穏 初期の氷河よ
まどろみ割く火がすべてにもたれ
掻き込んでは見目麗しく
生存の炎 我一人

庭園へ

木洩れ日の子に 光柔く飛ぶ空
島に吹く 夢の誘う肢体を抱いて
天翔る舟 極夜に今を描いて
水門の屋根をのぼり

遍く 波に嵩む音の木
眩くも来たりし異形の背で眠り
揺蕩う花籠 火夫の諸手に宿れ
焔の幸が無を染めて

星の原が 天の褥に変わる
定められ 幽寂なる海に誘い
天満月にも似て洗う 意味の地 賛歌で癒す
真夜の理知に歩め さあ

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