フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメント〜アセスメント例で解説〜
アセスメントは子どもの現状を把握することや支援の手立てを得るために必要不可欠なものです。
国内ではアセスメントという言葉を使ってガイドライン等で明記されていますが、具体的なアセスメント方法の記載がないため、どのアセスメントを使用するか悩むことは決して珍しくありません。
アセスメントには大まかにフォーマルアセスメント・インフォーマルアセスメントの2つのアセスメントがあります。
フォーマルアセスメントとは
標準化尺度を用いられたアセスメントのことを言い、信頼性(何度実施しても同じ結果が出ること)や妥当性(測定したいものを明確に測ること)が非常に優れているアセスメントです。
デメリットとして
子どもの状態によって結果が左右されやすいです。
既存の枠組みで実施されるため臨機応変な対応が出来ません(アセスメント中の問題の出し方や手順の変更など)。あくまでマニュアルに沿った手順に従い信頼性と妥当性の確保に努める。
フォーマルアセスメントの例
・発達検査、知能検査(WISC-Ⅴ,新版K式発達検査2020,田中ビネー知能検査Ⅴ等)
・言語検査(LCスケール,LCSA,STRAW-R,質問応答関係検査等)
・適応検査(Vineland-II 適応行動尺度,S-M社会生活能力検査第3版等)
いずれも標準化検査であり結果が数値化されますが、使用される検査については事業所や評価者によって異なり全国で統一されていません。
インフォーマルアセスメントとは
既存の枠組みはなく、評価者の知りたいことを直接評価することが出来ます。また遊び場面などの自然な環境での様子も評価することが魅力的です。
デメリットとして
自由度が高いアセスメントとなっているため評価者によってアセスメント内容が異なる。評価者の主観での評価になりやすく、他の評価者が実施すると異なる結果になりやすい等を挙げます。そのため評価者の経験や知識等様々な能力が必要となります。
インフォーマルアセスメントの例
・保護者面談や関連機関による情報
・日々の支援内容の記録
・行動分析(以下ABA)
いずれの方法も主観にならないように注意が必要です。
例えば
・「ことばが少ない」→どれくらい?
・「活動中は声が出ていた」→活動中ずっと?どんな声?
このように具体的に情報が欲しい時は抽象的な表現だけでは不十分です。
記録の方法は評価者の意見を記載するのでなく実際に起きた出来事、特に5W1Hを意識すると客観的な記録となります。
仮に評価者の考え等を記録に盛り込む場合は客観的に記録と分けて記録すると良いかもしれません。
列挙したいずれの方法も継続的にも情報収集しなければなりません。
特に支援においてはABAの課題分析のように行動を段階的に分けることや行動の頻度を記録することが後々の再分析に繋がっていきます。
組み合わせて使用する
フォーマルアセスメント、インフォーマルアセスメントを組み合わせて使用することがより子どもの状態像を捉えることが出来ます。
フォーマルアセスメントは評価場面だけであり本来の生活場面を捉えることはインフォーマルアセスメントが優れていますがインフォーマルアセスメントは評価者の主観が入りやすい等注意が必要です。
そのため片方のアセスメントだけでなく双方を包括的にアセスメントすることで子ども本来の状態を把握することが可能です。
ことばがゆっくりな幼児のアセスメント例
上記のフォーマルアセスメント・インフォーマルアセスメントを組み合わせた実施例について紹介します。
※個人的な見解です。
ことばの学習を進める際は知的発達からアセスメントする方法が多いです。(言語の他に認知面等の支援の手立てとして必要であるため)
その後言語検査等を必要に応じてアセスメントすることや保護者や関係機関からの聞き取りや実際の行動観察によって子どもの現状把握に努め、それらを包括に捉え支援を進めていきます。
アセスメントと支援例
実際の年齢が4歳の子どもインフォーマルアセスメント結果知的発達が2歳と想定します。言語学習を進める際は実際の年齢の言語獲得ではなく、知的発達の年齢の言語獲得を目指します。
※知的発達2歳であってもフォーマルアセスメントの構成によっては動作性課題が言語性課題より優れている場合が多いです。
ここでは動作性課題3歳、言語性課題1歳の結果を総合的に評価した知的発達2歳とします。
そのような場合は知的発達でなく言語性課題の年齢に応じた言語学習が必要です。
このようにフォーマルアセスメントで総合的な数値を得ても、どこに苦手さを抱えているのか解釈が注意が必要です。
一方検査だけに捉われない分析がインフォーマルアセスメントであり、そこから具体的な支援を導き出します。
例えば家庭場面、集団場面ではどのような行動があるか。観察場面ではどうか。ことばを焦点に充てると有意味語もそうですが発声場面やコミュニケーション面もアセスメントしていきます。
支援方針は知的発達に応じた言語獲得を目指します。
インフォーマルアセスメント結果から指差しやジェスチャーでの要求行動があることがわかったら、支援の中でも指差しやジェスチャーを使用しながら、声掛けだったり模倣行動を通しながらことばを促していきます。
このように既存獲得しているコミュニケーション方法引き伸ばしつつ、音声コミュニケーションの獲得を目指していきます。
※ことばの土台はコミュニケーション意欲です。既存獲得しているコミュニケーション手段を用いないことは、土台であるコミュニケーション意欲低下に繋がるため必ず既存獲得のコミュニケーション方法を用いましょう。
またフォーマルアセスメントより動作性課題>言語性課題という結果から、積み木やお絵描き等を交えながらコミュニケーションを図ります。
このように得意とする能力を手掛かりに言語プログラム立案していきます。
※支援の進め方は『業務効率化のPDCAサイクルとは?保育・教育・発達支援でどう活かす』で詳細を解説しています。
※アセスメントや支援に関しては『児童発達支援で働く言語聴覚士の悩みごと~評価や支援方法について~』にも解説しています。
まとめ
このようにアセスメントは様々な支援の手立ての方法を得るための1つです。2種類のアセスメントはそれぞれ単一で実施するのでなく双方を組み合わせて実施する事が子どもの成長に繋がります。
またアセスメントだけでなく、支援での様子や家庭、集団での場面を随時把握にも努めていきましょう。
中にはアセスメントが難しいと感じる支援者もいると思います。私も支援全般的に至らない点が多く日々自己研鑽を積む日々ですが、実際の支援の中からアセスメント的な視点(発達過程や客観視での状態把握)を持つことによってその知識や経験を習得出来るのではないでしょうか。
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