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何度だって通いたいお店は東山三条に。おひとりさま晩餐はワインとお料理と新たな出会いと。【フードエッセイ】

仕事終わりの金曜日。
私は職場の書き初め会(新年にいつも開催される)を終えて、早々と京都へと向かう。
今日は相方が会社の懇親会ということでおひとりさま金晩なのだ。この機会を見逃してはいけないと、私はGoogleマップで晩餐会の開催場をあれこれ探しながら京阪電車にゆられていた。

いつもなら出町柳ゆきの電車に乗るが、この日はタイミングが合わず、三条行きの電車へと乗ることに。お家の近くでゆっくりと飲みたい気持ちはあったのだが、なんたって華金というわけで今日くらいは少し遠くてもいいやと思い、三条あたりで飲むことにした。

三条大橋に降り立った私はeperonというワインバーに向かった。ご店主さんのワイン情熱がアツいと前々から聞いていて、前からずっと行ってみたかったお店だ。ご店主さんと絶対にお話しして仲良くなってやるんだ!とルンルンで向かったのだが、この日はシャッターが降りていた。
まあ仕方ないよなと心の中で整理して冷静に次なる候補を考えることに。

私はワインが飲みたい。ひとりでもしっぽり落ち着いて飲める三条あたりのお店は…と思考を巡らせながらも無意識に地下鉄東山駅の方角へと向かっていた。この時から私の脳内はここに行くと決まっていたかのように。その日の月は一段と大きく、まんまるに満ちていてとても綺麗だったことは覚えているがひたすらそこへと歩いていた。
途中で東北家の誘惑に負けそうだったがよくみたらここもお休みだった。

学生時代によく行っていた中華料理屋。
ここでビールと麻婆豆腐とか最高なんだよ。

というわけで、向かった先はwine&beer ESTREだ。ここは相方と2回ほど行ったことのあるカジュアルビール&ワイン飲み屋さんで、お料理の味と量のバランスはもちろん、小さなオレンジ色の温かい空間とご店主さんたちのほっこり温かな雰囲気がとても気に入っている。

いらっしゃいませとご店主さんが声をかけてくれ、1名ですが空いていますかと聞いた。奥いっぱいだな…満席かな…と入れるかドキドキしたが、少し狭いですが手前のスタンド席で良ければどうぞと言ってくれた。美味しく飲めればどこの席だってウェルカムですと思いながら入ることにした。

ワインを飲みたかったが、まずはビールでしょって自分に言い聞かし、真っ先に生ビールを注文。ここでクイッと一杯頂きながらアテを何にするか考えることにした。

クリーミーな泡を唇につけた時のあの至福といったら…

カウンター席の幅もあって提供できるお料理が限られてるんですとご店主さんが申し訳なさそうに言ってくれたのだが、この席でいただけるメニューを見るとズラリとアテが並んでいたので、全然大丈夫ですって感じで、私はヤングコーンを香ばしく焼いてその上にチーズを振りかけた一皿と、舞茸のフリットを注文した。
待っている間、ビールを飲みながら携帯のメモ機能を開き、私自身について自問自答していた。とあるきっかけでいただいた取材のためだ。こんな自分を見つめるのは転職活動以来だな〜と思いながらビールとともに考える。こういう振り返りはお酒があると意外にも本音が出てくるものなんだ(自説)

しばらくするとヤングコーンのアテが目の前に現れた。
今はもう22時前だというのに私はこれからお料理を楽しむのだという罪悪感はありながらも、野菜だしヘルシーだし華金よという甘い自分の脳内ささやきに完全に敗北していたので…。まずはヤングコーンとビールで堪能する。

香ばしさとヤングコーンのほのかな甘味とコクのあるチーズの相性がたまらん。

ヤングコーンとビールでひとり謳歌していたら、奥のカウンターに座っていたお客さんたちが席を立ちお会計をすましていた。小さな男の子がいる家族連れのお客さんが店主さんにバイバイと店を後にした。なるほど、ここは常連さんも多いのだなと思いながら辺りを見渡すとすっかり私ともう1組のお客さんのみになっていた。
そしたら、店主さんが奥のカウンター、よろしければどうぞと言ってくれたので私は移動することにした。

一番手前側のカウンター席に座る。ビールグラスはすっかり空で、念願の白ワインを頼むことに。マルクテンペみたいな辛さもありつつ蜂蜜のような甘みのあるワインが飲みたい…とかそんなうんちくワインマンを心の中で発動していたら、ご店主さんがこれは甘みがあってフルーティーでおすすめですよって言ってくれたので、間違いなさすぎる、素晴らしすぎますと、最初の1杯はこれにすることに。
しばらくすると、舞茸のフリットが出てきたので白ワインと食していた。

果実味あってジューシー甘い!
口当たり柔らかい〜
舞茸のフリット。想像以上のサクッとじゅわああ。
そして舞茸の溢れる香ばしさよ…

目の前にあるメニューがずらりと書かれている2枚の黒板を美味しそうだな〜ってボーッと見ていたら、ご店主さんがぜひこちらも頼めるので(スタンドではアテメニューだけだったので)よければどうぞって言ってくれたから誘惑に負け頼むことにした。
ふと目が合ったのは”牡蠣と春菊と舞茸のグラタン”。グラタンって言葉に、冬の寒さをしのぐための本能かってくらい無性に食べたくて、もうメニューから垂涎ものでこちらを頂くことにした。

クリーミーなホワイトソースな上に牡蠣のとろけるクリーミーな味わいのダブルパンチ。
もう舌がとろけます。

これまできたアテとワインはスルスル進み、あっという間にワインがなくなったので、もう一杯ワインを頼む。
店主さんにグラタンに合うワインを教えてもらい、こちらは少し挑戦的ですがとても美味しいですよって言われたので、フランスのオレンジワインを頼むことにした。

アプリコットのような柑橘系の華やかな味わい!
少しの渋みがクセになるワイン。こりゃ牡蠣と合うわ…

グラタンとワインを楽しんでいる終盤、カウンターに座っていたもうひと組のお客さんが東北家の話をご店主さんとしていて、あそこは音楽関係の人がよく行くんですよ〜と話していて、”ほんとにそうなんです。私もよく行ってました。音楽関係してました。みんな行ってました。”と私は心の中で叫んでいた。そしたら、ご店主さんが話しかけてくれて、京都はよく来られるんですかと聞いてくれた。
はい、そうなんです。週末は京都にいることが多くて…から話は始まり、さっき心の中で叫んでいた東北家のことを伝えられてとてもスッキリした。そしたらもうひと組のお客さんが話しかけてきてくれて、地元の話とかここら辺のお店の話とか、お仕事の話など会話がどんどん広がりとても新鮮だった。私が大阪、京都、兵庫を行ききしているんですって言ったら、三都物語ですねってなって、私はクエスチョンマークを頭に添えていた。この後しっかり調べたら、かの有名なお方の歌で私の物語やん!(自意識過剰)ってなった。

こういう、お店での新たな出会いから世界が広がることはとても嬉しい。
日々やらなければならないことに追われてばかりで、自分から新しい価値観を取り入れることが少なくなってしまったからこそ、受動的にそして、生身の言葉に触れて新しい価値観をインプットできる空間は好きだ。
主体的に新しい価値観を吸収していくことの方が大切にされている中で、無意識に何かを吸収できる場所も大切だと思う。まさにこういう場所がその役割を果たすんだと。

もちろんお店によって雰囲気は異なるから、合う合わないも出てくる。
私にとってESTREはとても温かくて新しい価値観を吸収できる空間であり、とても居心地が良いものであった。
言葉の形に直接触れられるリアルな場所はやっぱり好きです。何度だって行きたいお店です。
そんなことを思いながら、上坂あゆ美のポットキャストを聴きながら帰路へとついた24時でした。

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