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黄色い看板の中国料理には。学生時代から愛する東北家のお話。【フードエッセイ】

この前の金曜、学生時代のサークルメンバーと再会する機会がありとても懐かしい心地だった。その日は大阪の第2ビルでビールとハイボールで晩酌していて、ふとサークル時代に通っていた中華料理屋を思い出す。

学生のころ私は、京都の大学でオーケストラサークルに入っていた。略して"オケ"。オケメンバーのことを"オケ民"と呼んだりしてた。当時サークルは深夜練もあったり毎日地獄の練習オンパレード。周りは効率よく練習してるって感じだが私は割と情熱タイプだったので、毎日ひたすら練習すればきっとうまくなることを信じてたから、練習しても周りとのレベル差に落ち込む日々だった。挙げ句の果てに楽器が全く弾けなくなってしまった。やっぱり情熱だけじゃ上達できないことだってあると泣きながら思ったもんだ。

そんな時もずっと変わらなかったのは"飯はうまい"ってこと。サークル周辺には個性的でうまいお店がたくさんある中でも特に「東北家」は思い出に残る店だ。

地下鉄東山三条駅付近にある中華料理屋で金管楽器陣がよく好んで訪れていた。金管楽器陣はビールにつまみにを好む印象だったので、ここは絶対うまいと目星をつけていた。

早くもその念願は叶う。
よく泊まらせてくれていた子がオケ連練終わりにビールと中華にと誘ってくれて、市バスに挟まれながらあの狭い道路をウキウキ自転車で駆け抜けた(危ない)。

店前のメニューでもう最高。

黄色の背景に赤い字で"中国料理 東北家"と見えたらそこが目的地だ。私たちは奥まった扉を開けて一番左のテーブル席につき早々メニューを見た。あまり記憶が定かではないのだが、その子がよく食べるおすすめが酢豚だったのでとりあえず酢豚とビールをいただいた(気がする)。
メニューには「食べたい料理が"あたつら"、メニューになくても相談できますよ」と書いてあったことだけは覚えている。こんなにもメニュー数があるのにそれ以上対応してくれる店主ったらどんなお人なのだろうと、その愛らしい文とお人柄に興味津々だった。

カリジュわああの豚と酸味ある餡の塩梅よ〜

酢豚到着には安定のカリジュわああを感じられて今見たって垂涎ものだ。
もちろん酢豚だけでは終わらない。
それから私たちは麻婆豆腐と春巻きを頼んだ。
店名からして中国東北地方がメインなのであろうが、きっとその頃私の中で春巻き大ブームが巻き起こっていて鳳泉の春巻き、せせチャンネルの春巻き…などあらゆる春巻きに挑戦していたので春巻きを食べないわけにはいかなかったのだろう。麻婆豆腐は何故か無性に食べたくなる時といらん時の差が激しい料理(私的)でその時は無性に食べたかったから注文したんだと今の私は予想する。過去の食思考を振り返るのも面白いもんだ。

春巻きが花びらのように皿に盛られるスタイルは愛
見た目からしてパリッが溢れる皮の薄さ!
豆腐の上にドーンとスプーンが添えられた大胆さも愛だ。笑

友人と囲む食卓は落ち込んでてもやっぱ元気をもらえる。そしてこの愛らしい中国の家庭を見たかのような皿たちにも。これから食べようとするこの料理たちは私の胃袋の中におさめられてまたひとつ私のオケ生活源になってくださるのだから、ありがたく頂かなければ。
そんなことを思いながらこの瞬間の写真に収められた記憶がぶわあああっと溢れ出て涙が出そうだった(けどでなかった)。

苦しかったこともあるけど、やっぱり学生時代に経験したサークルの思い出は一生もんの宝で、そこで出会った仲間たちの繋がりにも感謝だ。みんなそれぞれの道を歩んで会える機会が少なくなってしまったが、これを機にまた定期的に会いたいと思えた日だった。
そんな感じで私は第2ビルでみんなと23時過ぎまで語り合った。この瞬間もまた一生の記憶として刻まれるのだろう。食と繋がりはこの上なく大切なものだと一層感じた日なのであった。
その想いはずっと変わらないだろう。

ハイボールおともにしながら

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