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アースサイエンスについて

近頃もてはやされているのは、生成AI関係の技術とか宇宙開発ですが、こと日本においては、優秀な人材がアースサイエンスに携われるような環境整備が急務だと考えます。

その前に、アースサイエンス軽視の明確な現れとして、高校理科の4科目(物理、化学、生物、地学)のうち「地学」が非常に軽んじられていることが挙げられるでしょう。そもそも「地学」を専門で教えられる教員の数も非常に少ないですし、予備校では在籍している地学講師が本当に少なくて、あちこちに講義に出かけたり、教材・模試作成という業務にも忙殺されて大変だという話も耳にします。
まずはこの状況を何とかすべきです。
高校物理はサイエンスの入り口として非常に重要で、「F = m a」を原理としてまずは呑み込んで議論を始めるとか、理論は実験事実をよく説明できるという限りにおいて「とりあえず正しい」というような考え方を身につける場であると思います。
化学も、アメリカの教科書などでは、central scienceという言葉が登場する等、その文字通り、中心的な科学と考えてもよいと思います。ドルトンの原子説がありそれでは気体反応の法則がうまく説明できないことからアボガドロの分子説が登場して修正を図るという話などは、仮説を立てて実験でそれを検証し、想定通りならとりあえず正しく、想定に反する場合には仮説の修正や棄却という結果になるというサイエンスの根本的な考え方の代表例として非常に重要なことだと思います。
生物は、おそらく昭和世代の生物の教員の方々にはかなり厳しい、というか他の理科の科目に比べて、教育内容が最も大きく変わってきている科目だと思います。DNAの複製やRNAによる転写といった内容は30年前にはなかった話だと思います。あと抗体グロブリン(IgGなど、「何て読むの?」なんて話もあったりなかったり)みたいな用語も登場します。ひと昔前の教養の生命科学の内容が高校におりてきた感じですね。細胞内では超微細なナノロボット(実体はタンパク質)が、これまたタンパク質の軌道上を動いたり、タンパク質の合成をしたりととんでもないことが起こっているということは常識にしたいですね。医歯薬系や農学部系、あと国公立志望の文系の高校生が選択することが多いようですが、全員が生物を学ぶべきだと思います。
そして地学です。
これがアースサイエンスの学びの端緒といってもよいでしょう。岩石の名前を覚えたりしなければならないのでは、という変な先入観を抱かせてしまうのは、中学校の理科教育まで遡って考えなければいけないことだと思います。「地学」は入試でも選択できない大学が多いなど「使えない」もので、教える人も少なく「学べない」もの、あるいは社会に出てからも「あまり役に立たない」ものという状況は本当によくないことだと思います。
特に気象や地震については、災害大国である日本で重視されるべきです。
かつて、理科4科目の基本部分をすべての高校生に学ばせるような時期があったと聴いたことがあります。現代だからこそそうした試みを再度施行してもらいたいと思います。

私は「30年以内に起こる」といわれている東南海トラフ地震のことを非常に深刻に考えています。そのための備えも行われていると思いますが、3.11を上回る大津波などが予想されており、静岡から愛知、三重、和歌山、高知など広範囲で大きな被害が出ることになるでしょう。
多くの人々の生命や財産に激甚な被害を与える「地震」について、どうしてみんなが真剣に考えていないのでしょうか。

私は、気象庁をはじめとする政府機関やアースサイエンス関係のアカデミアに優秀な人材や研究開発資金がもっと集まるべきだと考えます。
ホリエモンさんには申し訳ないのですが、日本が今更頑張ってもアメリカにはかなわないロケット事業に財政的な支援を行う余裕があるのなら、それをアースサイエンスに振り向けるべきです。確かにロケット事業には夢がありますし、北海道に拠点を設け地元住民の雇用の場を作り出したことには敬意をいだきますが、「地震をコントロールする」という究極的な目標を掲げて取り組む、異常気象もありますので、「気象をコントロールする」ということも併せて考えてもよいと思います。

先日Geminiとブレインストーミングをやっていて、「地震をコントロールする」というアイデアについて尋ねたら、「現実的ではありません」という趣旨の解答が返ってきて、「免振や耐震の技術開発をすることがよい」と諭されました。たしかに現時点ではそうかもしれません。

しかし、現在の科学技術のレベルを、例えば、50年前に予測できたかというと答えは「否」だと思います。画期的なアイデアが生み出されて状況が大きく変わるということも考えられなくはないでしょう。

また、究極的な目標を掲げることは、その追求過程で多くの技術革新をもたらす可能性があります。地震のコントロールまでいかなくてもその予知の精度を高めるためには、深い地下の様子をより詳らかに測定する必要がありあす。そのためのセンシング技術にはまだまだ進歩の余地があります。また、膨大な観測データを処理するためにはパワフルなコンピュータが必要ですので、スーパーコンピュータの能力向上や次世代コンピュータの開発のための研究の動機付けとなります。

首都圏が甚大な被害に遭遇することは想定されていないということも東南海トラフ地震への取り組みが今一つ不十分な理由かもしれません。今年のお正月に起きた能登半島地震の傷はまだ癒えておらず、今日あたりは大雪が降って地域住民の方は寒い一日をおくっておられることだとおもいます。もし被災地域が首都圏であったとしたらそんなことにはなっていないのではないでしょうか。

首都圏に人口が集中し、少子高齢化で国民の数は減っているのに、首都圏では人口が増えているという問題については、また別の機会に触れたいと思います。

末筆ながら、雪の降る寒い日々をお過ごしの能登半島地震被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。

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