万葉集翻案詩:『逢いたい』

飯食めど うまくもあらず 往ぬれども 安くもあらず
あかねさす 君が心し 忘れかねつも
(巻⑯・3857 佐為王のまかだち)


『逢いたい』

あの人に逢えないまま
過ごす日は
ご飯を食べても美味しくないし
眠りについても、
恋しくて、寂しくて、切なくて
うまく眠れない

一緒にいる時は
いつも
朝日のような温みを帯びた
優しい心で接してくれる あなた

忘れた事は一日だってないのに
ずっと、逢えない日が続いて
もう、どうしようもないの

昼も夜も働き続けて
時の感覚がなくなるくらいなら
あなたの側にいて
時を忘れるくらいの
幸せな気持ちに浸る方が
よっぽどいい

早く、あの人に逢いたいな

早く、あの人の腕に
包まれたいよ…

【メモ】 
万葉集の歌の題詞には…

佐為王の屋敷に仕える女性がいた。
彼女は宿直勤務が続き、なかなか夫に逢えなかった。
そのうち、恋しくてたまらなくなって、ある宿直の夜に夫の夢を見た。
目が覚めて手で探ったり、抱きしめたりしてみたけれど、手に触れる事はなかった。
彼女は泣き叫びながら、この歌を高らかに歌った。
それを聞いた佐為王は、それから永く宿直勤務を免じた。

と、この歌が詠まれた詳しい事情が記されています。

ちなみに、この歌の形式は、五七・五七・五七七となっており、万葉集の中で最も短い長歌です。

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