万葉集翻案詩:『風の櫛』
雄神川(をがみがは) 紅にほふ 娘子らし
葦付(あしつき)採ると 瀬に立たすらし
(「万葉集」巻⑰・4021 大伴家持)
『風の櫛』
雄神川が綺麗な紅に染まる
乙女たちが川藻を採ろうと
流れ穏やかな場所に
立っておられるらしい
水には
スカートの色が映り込んでいる
命のふくよかさを湛えた
春の景色の中では
乙女たちのはしゃぐ声さえ
耳に心地よい
裾を膝の辺りまでまくり上げ
恋の話に花を咲かせる
乙女たちの艶髪を
風の櫛が梳かしてゆく
想いを寄せる人の目に
触れるようにと…
可愛い可愛い乙女たちよ
もっともっと、幸せになれ
【メモ】
雄神川…現在、富山県を流れている庄川(しょうがわ)に比定される川と言われています。
葦附…アシツキノリ。食用。