「星降る夜に、届かない想いを抱きしめて」
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秋の風が、窓辺のカーテンをかすかに揺らしている。陽菜（ひな）は机に広げたノートをじっと見つめていたが、書きかけの文字は途中で途切れていた。時計の針が夜の十時を指しているのを見て、彼女はそっとため息をついた。
リビングでの父の声が、まだ耳に残っている。
「高校生のくせに恋愛なんて、勉強の邪魔になるだけだろう。」
それがどんなに彼女の心を傷つけたか、父はきっと知らない。陽菜にとって、恋人の翔太（しょうた）はただの「好きな人」以上の存在だった。学校生活の中で、彼と一緒に過ごす時間は、彼女にとって心の支えそのものだった。
けれど、それを親に伝えるのはとても難しい。理解されないだろうという思いが、言葉を封じ込めてしまう。
スマホが震えた。画面を見ると、翔太からのメッセージだった。
「今日、話せてよかったよ。ありがとう。」
陽菜は、夕方の出来事を思い出した。放課後、翔太は彼女のために校庭のベンチで静かに話を聞いてくれた。
「親に反対されるのが、こんなに辛いなんて思わなかった……。」
その時、初めて涙がこぼれたのだ。
翔太は何も言わず、ただそばに座ってくれた。そして、ぽつりと言った。
「俺、陽菜が頑張ってるの知ってるから。」
その言葉が、彼女の中の不安を少しだけ溶かしてくれた。彼の優しさに触れるたび、陽菜は心の中で彼をもっと大切にしたいと思うようになった。
スマホの画面に「また明日ね」と返信を打ち込むと、陽菜は机に向き直った。父に認めてもらえる日は、まだ遠いのかもしれない。でも、翔太の言葉を思い出すと、少しだけ前を向ける気がした。
窓の外には静かな夜空が広がっていた。星がひとつ、またひとつ、光を放ち始める。いつか、この夜空のように、彼女の気持ちも穏やかに晴れていくのだろうか。
親に反対されることで知った心の痛みと、それでも強くなろうとする自分。その間にある翔太の優しさが、今は何よりの希望だった。
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