書評:仲山進也 『組織にいながら、自由に働く』
2018年6月20日初版発行 出版元:日本能率協会マネジメントセンター
ページ数:246ページ
読了までの期間:6月20日~6月23日
前職楽天で働く「自由過ぎるサラリーマン」
それが著者である仲山さん(通称:がくちょ※楽天大学の学長のため)の印象。私自身は2009年に楽天に入社し2013年まで在籍していたが、その際にランチをご一緒させていただいたこともあります。
当時から「不思議な人」でもあり、「魅力的な人」でした。ですので、仲山さんの著書は欠かさず購入もしています。
※他にも”今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則 『ジャイアントキリング』の流儀”や”あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか”等があります。
さて、話を戻すと今回の”組織にいながら、自由に働く。 仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除(+-×÷)の法則」”では大きく4つのステージに分類され物語が展開されていきます。
そして、この話は組織で働くサラリーマンの方だけでなく、フリーランスの方や、経営者の方含めて参考になると思います。
サラリーマンの方は、自分自身がいる組織の中においての自分の働き方の整理について。
フリーランスの方は、自分だけでなく誰かと一緒に働く「共創」という考え方について。
経営者や管理職の方は、自身の部下や社員の方が自由にイキイキと働き、かつ自社に貢献をしてくれる組織マネジメントについて。
そうしたヒントがあるように思いました。著者である仲山さんのこれまでの働き方と体験談と併せて物語が展開していくので非常に読みやすく、理解しやすいです。ネタバレを防ぐために、いくつか気になったポイントをお伝えできればと思います。
「加減乗除」の法則
働き方は4つのステージで進化する。それを小学校で学んだ「加減乗除」すなわち「足す・引く・掛ける・割る」という考え方で表現をしている。
「加」のステージでは自分のできること、できる領域を増やす。苦手のことを量を積み重ねても継続して行う。その結果報酬として新しい「仕事」が与えられる。
最初はこのステージからスタート。新卒の方はここからスタートかもしれません。自分のできることを仕事を通じて確立していき、領域を増やすことで信頼され新規の「仕事」を任せてもらえるというステージです。
そしてそこから「減」のステージへ。好みでない作業を減らし、強みに集中をしていきます。正直このステージが一番難しいのかもしれません。取捨選択を勇気を持って行う。
その結果として自分の「強み」が理解でき、得意な分野での第一人者という地位を社内でも社外でも確立ができるという状態です。
○○と言えば◇◇さん!的な部分になり、かつ自分の得意でない仕事から、上手く避けていくための考え方が語られています。
自分の強みが確立すれば「乗」のステージへ。まさに自分と他者との強みの掛け合わせです。
「僕はこれができる。私はこれができる!あ!じゃあこれ一緒にやってみましょうよ!」というような形でプロジェクトや仕事が進んでいきます。こうして過程を経て、仕事を通じて強固な「仲間」を得ることができます。
互いの強みを理解し合い、相互理解し合えることで相乗効果も大きくなりそうです。
そして、そこから最後のステージ「除」のステージへ。積み上げではなく、強みを尖らせて仕事をしていく中でいくつかの仕事を同時に進むように考えて行うようにしていきます。
そうすることで、「自由」を得ることができます。
もちろん一足飛びで「除」のステージにいくことは難しいでしょう。場合によっては環境の変化で「加」のステージからやり直すケースもあると思います。それでも、こうしたステージでは何が学べるか?を知っておくと自分の働き方について考えるきっかけになるかもしれません。
読書時に刺さったフレーズ
2018年6月20日~23日の3日間で読んだ中、当時心に残ったフレーズをいくつかピックアップしたいと思います。
P78-83「積みへらし」の作法
積み重ねではなく積みへらし。減らすことで強みを磨いていくというのは勇気が伴う行動だと感じます。
「やりたくて、得意で、喜んでもらえる仕事」に集中するために「他由」を「自由」へと変換していく。
自分自身も、正直まだまだ「他由」で受け取りながら行動してしまっていた事案が多くあります。もちろんそこを減らしていくこともですが、自分に理由付けをしていくことで得る自由への変化も体感したいと読みながら思いました。
捨てる勇気もですが、「そもそも今やっていることはどうなんだろう?」と自分を振り返る時間を持ってしっかりと選別していきたいですね。
P38-42 そもそも「楽しい仕事」なんてあるのだろうか
仕事=作業×意味
作中の中に出てくる考え方の1つです。
確かに、こう考えると確かに整理しやすい。と素直に思いました。
なんとなく「やだな~」という感覚をきちんと整理することで、「あぁそうそう。自分ってこれが嫌だ。これが好きだ」というのがはっきりしてくるのではないでしょうか?
何気なく、頭では理解しつつも、要素として書き出したり、整理する習慣を持つことでより考え方がクリアになると思います。
好みでない作業を「マイナス」と置き換えれば、そこにどれだけ意味付けしても仕事がマイナスになってしまいそうなので、好みでない作業からは逃げるという表現に個人的にはピンときました。
人によって得意領域は違うので、そこを自分ではっきりさせておけばすぐに逃げれなくても徐々に渡していくことができます。減らすことが苦手な人は特に、減のステージは必見かもしれません。
P167-171 「目的・動機・価値観」をさらす
「やっぱり改めて大切」と感じた部分です。
「心理的安全」を高めるために目的・動機・価値観を晒す。しっかりと自己開示を行うこと。
そうすることで相互理解が深まり、よりよい環境になる。
そのためにどんなコミュニケーションをとるべきかと悩むこともありますし、悩んでいる人も多くいそうです。
目的・動機・価値観も人それぞれですが、「こんな目的・動機・価値観」でいいのかな?と不安になるケースもありますし、無意識のうちに流されたり、人に合わせてしまう人も多いのではないでしょうか?
さらすという行為自体も大切ですが、そうした「場」がどうすれば生まれるか?
読み進める前は勝手に、「乗」かなと思っていたステージも冷静に読み進めていくと「加」と「減」を行ったりきたりしている感覚でした。
ただ、「乗」や「除」に行きたい!とも感じたのでどうすればそのステージに行きつけるかを自分の現状に置き換えながら行動したいと思いました。
今の働き方に悩んでいる人や、自分がどんなステージにいるか知りたい人は一度手に取ってみても良いかもしれません。