【ドラマ月22時】『春になったら』第一話
1月15日(月)22時から始まった『春になったら』
「三か月後に結婚する娘と、三か月後に世を去る父」という衝撃的なテーマとともに始まった今作の一話は、いたって穏やかな初回となった。
朝、向かい合い食事をする雅彦と娘の瞳は、互いに伝えたいことがあると言い出す。どちらが先に言うか決めかねた二人は、一緒に言うことにする。お互いの声にかき消されながら、聞こえた言葉は三か月後に迫っている結婚と死という正反対の運命だった。雅彦は結婚に反対し、瞳は雅彦の病気を信じていない。二人にはいつもと変わらない穏やかな新年がやってくる。互いに仕事に出向き、いつもと変わらず過ごす二人だったが、瞳はついに雅彦がかかったという二つの病院を訪れ……。
世を去ると言いながらも、明るく元気いっぱいな雅彦。実演販売を仕事とし、売上№1を誇るなど楽しそうに過ごしている。そんな姿には、瞳のみならず視聴者ですら病気という事実を忘れてしまうほどの明るさがあった。しかし、瞳が病院に出向き医者から雅彦の病気について知らされるとき、瞳が受けたのと同じ衝撃を視聴者も受ける。たった一人病気の事実を受け入れ、明るい決断を下した雅彦の姿には、なんとも言えない思いが募る。
雅彦と瞳の関係性は決して特別なものではない。互いに自分の時間を過ごし、それでもその中に確かにお互いがいるという唯一の関係だ。瞳は職場で何気なく父の話をする。ふとしたときに思い出す。一緒にいる時間を少しでも長く保とうとする執着はなく、初詣に行った日にも仕事だからとすぐに別れる。それでも、一緒に和装をして同じ方法で祈る。そういう二人にしかない、互いでしか埋められない関係性が垣間見える。だからこそ、視聴者にとってはいなくなるという事実が受け入れられない。なんとかして、このままの時間が続けばいいと願ってしまう。
最後の場面、雅彦と瞳は婚約者をめぐって言い争いになる。そんな笑えるような場面にも、寂しさや儚さが漂っている。雅彦が病気であるという事実を忘れてしまうような場面もしばしばある。だからこそ、ふと我に返りその事実を思い出すときじんわりとした切なさが募る。雅彦や瞳を取り囲む登場人物に近い感情を抱きながら、視聴者も「生きるってなんだろう」「家族ってなんだろう」と考えさせられる物語になっている。今後、それぞれの登場人物が何を思い、何を願い、何を選ぶのか。大切に見守っていきたいと思える初回となった。