『光る君へ』第一話 幼い日の恋と悲劇
はじめに
『源氏物語』の作者として知られる紫式部の生涯を描いた『光る君へ』
第一話では、まひろと呼ばれる紫式部の幼少期のことが描かれる。貧しいながらも優しい母の元で育ち、父が弟に教える漢文に興味津々のまひろ。鳥を飼ったり、父から漢文の話を聞いたりしながら生活するまひろは、穏やかな日々を過ごしていた。ある日、逃げた鳥を追っていった先で、三郎(のちの藤原道長)と出会う。
そんな第一話から気になった点をいくつか。
まひろと三郎の恋
鳥を追って偶然出会う二人。鳥の行方だけを気にして走り続けるまひろが少しずつ三郎に近づいていく描写は、偶然に導かれた出会いを思わせ、少しわくわくした。そこからさらに心を通わせていく二人だったが、三郎がお菓子を持ってこられなかったことでまひろの機嫌を損ねてしまう。その場面でまひろから発せられた「馬鹿」という言葉は、信頼している人を前に大いに拗ねる様子が感じられ愛らしい。その機嫌を取ろうとする三郎もまた女の子に笑ってほしいと頑張る男の子のよう。心を通わせる二人の描写は幼い恋のようで、見ているこちらの心が温かくなった。
貧しくも穏やかな日々と衝撃的な悲劇
まひろの母、ちやはは穏やかで優しい人物として描かれている。貧しい生活の中でも笑顔を絶やさず、いつも夫を信じて応援している。父の行動に疑問を抱くまひろに対してでも決して夫のことを悪く言わず、彼女のもとでまひろも穏やかな日々を過ごしていた。
しかし、そんなまひろの前に訪れた突然すぎる母の死は、幼いまひろの心に抱えきれないほどの衝撃を与える。今までが穏やかで静かだった分、視聴者が受ける衝撃も大きかった。それによってまひろの中の何かに大きな影響を与え、のちに紫式部として『源氏物語』を紡ぐに至るその気配を存分に感じさせた。
最後に
のちに、いわゆるベストセラー作家となる紫式部の幼少期を描いた第一話では、自分の周りで起きていることを考え疑問視する思考の深さや、幼い心には大きすぎる衝撃。さらには、三郎との恋の気配もあり、これからまひろが『源氏物語』を描くことに大きな影響を与える要素が存分に詰め込まれていた。まひろがどのような道を辿り、物語を紡いでいくのか。続きが楽しみだと思える第一話だった。