腰が引けた介護
どうも〜。学生時代はハンドボールをやっていて、飛んだり投げたりは割と得意なひさしと申します〜。
デイサービスで介護職員として働いていますけどもね、頑張っていかないかんなぁ〜言うとりますけども。
デイサービスってね、ほとんどが女性の利用者さんなんですね。
割合でいうと7対3くらいでしょうか。きちんと調べれば統計データあると思うんですが、まぁ多分そんなもんでしょう。適当ですみません。
ぼくがね、171センチ59キロなんですね。
女性の利用者さんで、ぼくの体格を超える方はほぼいません。でもね、男性利用者さんだと、ぼくより体重ある方は珍しくないし身長もぼくより高い方、結構いるんですよ。
ふつうにね、力負けしますね。
認知症のある方でね、ワーっとこられたら。ぼくはもう逃げますね。逃げるが正解です。いや、ワーっとならないように接することが一番大事なんですけどね。
利用者さんに手を出されたことですか?
ありますよ、そりゃ。
うーん、過去に3回ぐらいあるかな。いちばん強烈だったのはですね、
車椅子のおばあちゃんで。要介護度でいうと要介護5。重度の認知症でね。一日中「殺せぇ!」「殺してやるぅ!」ってブツブツ口にしているような。睨みつけるような鋭い眼光でね。
その方の世界って、いったいどんな世界が見えているのだろうって、不思議になるんですけど。何か過去に強烈な出来事があって、脳にこびりついてるんですかね。レビー小体型の認知症ではなかったんですがね。
あ、ぼくもね、お笑い芸人してるとき、舞台で死ぬほどスベッたときのことは今でも覚えていますよ。脳にこびりついていますね。
人を笑わせようと思ってね、ネタを書いて漫才を練習して、大爆笑をイメージして舞台に飛び出していくじゃないですか。
それがね信じられないくらい反応がないんですよ。
漫才のツカミでね「こんにちわー!」って急に客席に話しかけてね、反応が全く返ってこなかったとき「え?集団無視ですか?」っていう返しで笑いをとったりする、ちょっと古いネタがあるんですが、
もうね、スベりすぎると劇場の空調機の音がめっちゃ聞こえるんですよね。
ウケなくてもネタをし続けなくちゃならない状況のとき。
人間ね、頭から魂が抜けていくというかね、呼吸もできなくなるんですね。
ぼくねスベりすぎて死ぬことってあると思うんです。「スベりショック死」みたいな。
瞬間的に自律神経が誤作動を起こして、ホメオスタシスが働かなくなるんですね。もうね、マスクせずに溶接したあとに出る涙ぐらい脇汗がとまらないですね。
んなこたぁどうでもよくて。
んでね、そのおばあちゃん。入浴介助をしてたんですけどね。
着脱の時、ズボンを下ろすためにそのおばあちゃんを正面から抱えなきゃいけないんですけどね、体を密着させるとぼくの胸の辺にその方の顔がきて、胸を噛まれるですよ。
くっそ痛い。まぁ、痛いですよね。なにせ加減なしで「ゴリっ!」「パリッと」シャウエッセン。手羽先の軟骨じゃぁないんだぜ。野良猫でも甘噛みで許してくれるもんですけどね。
噛みたくて噛んでるわけじゃないってのは、もちろんわかっちゃいるんですが、もう、体が引けて引けて。
思春期の中学生がエロい保健室の先生に診察を受けていて、椅子から立ち上がったときに腰がひけてるような感じですかね。ん〜わからん。腰が引けると余計に胸と顔が密着してね。「いらっしゃ〜い」つってるようなもんでさぁね。
でもね、湯船に浸かると。気持ちよさそうなんですよねぇ。
「たのむよ。噛まんとってよぉ〜」って言いながら抱えていましたね。結局、噛まれるから気をつけてじゃないく、噛ませないためにどうするかを考えてあげた方がいいですねぇ。噛みたくて噛んでるわけじゃない。
で、結局、後ろから抱えるようにしてたかなぁ。どうしてたっけなぁ。
他にも「あたまバーン!」とか「ほっぺたぎゅー!」とか「足でトーン」だとか、色々ありますけど、
噛まれた胸の傷はキスマーク、半年は消えないディープなやつ。
あのばあちゃん。元気してっかなぁ。元気にしててほしいなぁ。
急に微笑みだしてね。
「ありがとねぇ〜」「ごめんねぇ〜」ってときもあるんですよ。
その姿が本来のその方の性格でしょうね。きっと。