「歩いて帰るから、大丈夫。」
どうも〜、40半ばにして介護職へ転職したものです。デイサービスで身体介助なんかをしております。頑張っていかなかんな〜言うとりますけども。
「おれ、もうそろそろ帰ろうかと思って。よっこいしょ」
いやいやどこいくねん。「まだ帰る時間ちゃうからゆっくりしてって〜」みたいなやり取りを、1日に4・5回繰り返したりするんですけどね。
いわゆる帰宅願望ってやつです。認知症の周辺症状のひとつなんですけどね。
正味な話、まともに説明してもダメなんですよね。
「今日はデイサービスで過ごしてもらう日で、夕方にはご自宅に送りするのでそれまでゆっくりして行ってくださいね。」
「歩いて帰るから、大丈夫。」
〜 fin 〜
いやいや、終われへん終われへん。
そうなんですよ、歩いて帰れない距離じゃないんですよ。
「歩いて帰るんですね!了解です!じゃあ!また明日〜!」つってお見送りしてあげたいんですけどね、そうはいかなくて。
ひとりで出て行って、家に辿り着けなかったり交通事故にあったりとか、したらアウトですからね。そうじゃなかったらいいってことでもないんですがね、デイサービスの入り口に向かって歩き出した利用者さんを制するがごとく、
「カバディカバディカバディカバディ…」ですよ。めっちゃ焦ります。
それからね「ちょっと散歩行きましょうか?」って、まず外へ連れ出すんです。
まずはね、外へ出たいんですよ。おそらくね、
利用者さんの心情として「ここはどこだ。勝手に知らんところへ連れてこられてる。まず外へ行きたい」だと思うんですよね。
なので、下手な説明して校長先生の長話になるくらいなら「駆け落ちしよううよ!」つって、まずは支配から卒業してもらった方がいいと思うんですね。
で、外へ。ショーシャンクの空へ。デイサービスの外へ。
不安を気分転換でかき消します。そう、不安なんですね。帰宅願望というよりも不安が根底にあるので、その不安の矛先を「クイッ!」っと別の方向へ向けて上げるんです。
ぼくはね、その「クイッ!」のタイミングを見逃さないんですよ。その瞬間「そういえば、ちょっと喉乾きましたね。コーヒー淹れましょうか!砂糖とミルクは入れますか?あ!ほっと?冷たいの?コーヒーお好きでしたっけ?」2倍速の音声で、その人の意識の隙間に情報をブチ込むわけですね。
この意識がどこに向いているかってことがとても重要だと思ってましてね。
「帰りたい!」っていう意識に対して「帰さない」ってことをぶつけても、余計に「帰りたくなる」んです。
痴話喧嘩もそうじゃないですか。朝方、若いカップルが、ファミレスの前で服の引っ張り合いしてて「帰る!」「待てって!」「お前勝手にネコ買ったりとかほんと好き勝手してるよな!」みたいな。あ、これこないだカップルの横を通りかかったときにそこだけ聞こえて「何してんねん」って思った話なんですけどね。
ラブホテルの前でアタフタしている男子って、そのことしか頭にないですよね。まぁいらんこと言うとりますけど。
なんでしたっけ?
そう、意識を別のことに向けさせる。
「あそこに座ってる方、〇〇さんのことが好きらしですよ。今日の3時にデイサービスの裏で待ってますって。コノぉコノぉ〜。隅に置けないなぁ〜」でもいいわけですね。
んで、時間になってデイサービスの裏にいってみると、誰もいなくてね。失恋して次からデイサービスこなくなる。つって、
あかんがな。
行きすぎた嘘をつくと信用問題に関わりますから。嘘も方便と言って時には効果的な嘘になることもありますけどね、行き過ぎは禁物。
帰宅願望だけじゃなくて、モノへの執着だったりとかも、否定しないで「安心までの最短ルートはどれか」を考えたほうがいいかもしれないですね。
いつも心に平穏を。