おじさんとの旅行 iii
前回はこちら。
小学校2年生まで、多少住み慣れた街を後にして。
それから父親とは一度しか会っていない。
その一度は、ぼくらが引っ越してきた先をどうにか見つけて、お金をせびりにきたとき。窓ガラス越し、母親と話している色のついた湯気のような父親が最後だ。
キレの悪いションベンみたいな声で「金貸してくれ」そう言い残して、ぼくらの前に二度と顔を見せることはなかった。
父は、どうしてるのか、生きているのか死んでいるのかもわからない。顔も声も空気も忘れた。
ぼくと兄も、会いたいと思うことは一度もない。悲しみを振り払い安堵を纏ったから。誰に包まれなくとも、暖かさを覚えるほど心が凍えていたから。
母が隣町へ逃げてきたのは、宛があったからだ。
母の姉が住む街だった。とにかく身内、身の内側に入って母自身も落ち着きたかったのだろう。姉の住む家に居候する形で、ぼくら3人家族はやり直すことになった。
まずは、家を探すこと。
家族を再構築できる家が必要だ。
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