美味しそうに見えるのかな?
色鉛筆・消しゴム・定規、ティッシュ箱。
その利用者さん前から遠ざける。
手の届く範囲を計算して、利用者さん目の前に何も置かないようにする。
椅子に座ったままで腰を浮かして立ち上がることはない。けれど万が一ということもある。どう考えても不自然な距離ではあるが、テーブルに乗っている小物という小物は全てその利用者さんから遠ざける。
申し訳ないが、ぼくは今、この方法しか方法がない。
同じ極どうしを近づけたときの磁石のような、その人が動けば同時にモノも一緒に動く。
口に入れてしまうからだ。
目の前にある口に入りそうなもの全てを味わってしまう。
もちろん食べものなら何も問題はない。しかし、消しゴムや鉛筆など、飲み込んでしまっても死にはしないかもしれないがきっと美味しくはない。
喉に詰まったら大変なことになる。
ティッシュなんか水分を吸うためのものなので、口の中に入れて飲み込もうものなら窒息してしまう。
その人は疎外感を感じているかもしれない。でも「消しゴムを食べて亡くなりました」っていうのは、ちょっと嫌でしょ。ちょっとどころじゃないな、だいぶ嫌だな。「寿司を食べて亡くなりました」なら、いいけど。いやよくないか。
ぼくがその人の隣にずっと居れるならそこまでしない。でもデイサービスには他の利用者さんもいて、多人数を見守らなくちゃいけないから。
そこはどうか、勘弁してください。
こっちも必死なのでございます。
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介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。